「特待生試験開始! 殺意と好意の視線が飛び交う会場で生き延びます」
王立アルクス学園・試験会場。
円形闘技場のような広大なフィールドに、受験者たち百名以上が並ぶ。
上段観客席には王侯貴族らしき大人達が陣取り、ギラギラした視線で子供らを観察している。
……いや、受験者全員十〜十五歳くらいの見た目なんですけど。
七歳児の俺だけ浮きすぎてるんですけど。
(マスター、皆さんの視線が痛いですね。物理的に痛いレベルです)
(分かってる!見たら即死の彫像みたいな視線ばっかりだよ!)
正面に立つ学園長――顔長ヒゲも長、白髪と白いマントの偉そうなおじいちゃんが手を掲げた。
「静寂!」
声が響くだけで、会場は一瞬で沈黙した。すごい権威。
「只今より――特待生選抜試験を開始する!」
巨大モニターに試験内容が表示された。
【第一試験:バトルロイヤル試験】
・参加者全員で戦闘
・降参or戦闘不能or落下で脱落
・最後まで残った者上位10名が合格
・殺害行為は禁止(※未遂はセーフ)
ザワァッッ!!!
一気に緊張が走る。
……バトルロイヤルって何?
俺、平和に突破したいんだが。
(マスター、素直にやると全員消滅しますよ)
(だよなぁ?! つまり俺は手加減しながら負けないようにする必要がある)
(最悪、全員を“戦闘不能(無傷)”にできます)
(発想がすでにバトル漫画のラスボスなんよ)
ローゼリアは不安げに俺の袖をぎゅっと握り、
イルミナは観客席から冷酷な目で全員を威圧し、
アルティナはなぜか挑発的な視線を向け続けてくる。
そして、試験開始の合図がいまにも下される――その寸前。
「ひとつ言っておく」
アルティナが静かに俺へ囁いた。
「――あなた、絶対勝ちなさい。その上で、私を見上げる立場のままでいればいい」
挑発とも、期待とも、嫉妬とも、全部混ざった感情。
言葉の意味はよく分からない。
ただ、言葉とは裏腹に耳が赤い。
……ツンデレの匂いがするぞ。
『魅了効果を受けています(無自覚)』
頭の中で、ゼロの通知が鳴った。
(いや、どこへの通知なんだよ!)
◇
学園長が高らかに手を振り上げた。
「始め!」
ドンッ!!!
開始の合図と同時に、あちこちから魔法や斬撃が飛ぶ!
火球、氷柱、鎌風、雷撃――凄まじい魔力の渦。
戦闘開始0.5秒でもう地獄絵図。
しかし、俺の周囲だけ奇妙に静かだった。
……いや、“静かにされた”。
周りの受験者20人ほどが、俺の周囲を囲みながら、互いに牽制して動かないのだ。
「……計画通り、ここで潰すぞ」
「奴は邪魔だ。聖女候補と氷の姫が目をつけたなら尚更だ」
「ハイボール家の息子?関係ない。ここで終わらせろ」
おおおおぉぉぉぉぉぉぉい!!!
なんで俺いきなり集中砲火イベントなんだよ!
ローゼリアが叫ぶ。
「だ、だめです! ブランデー様は――っ!」
しかし、敵は無視して魔法の詠唱を開始。
十人同時詠唱。
あれ、普通にまずい。
(マスター、回避します?反撃します?無力化します?)
(無傷で平和解決!)
(了解、“無血 三秒制圧”プロトコル起動)
ゼロの宣言と同時。
俺は一歩、前に出た。
次の瞬間――
* * * * * * * *
気付いたら、俺を囲んでいた全員が地面に突っ伏していた。
傷もなく、眠るように戦闘不能。
「…………」
「…………」
「い、今……何が起きたの……?」
観客席がざわつき、魔法審査員が全員目を見開く。
(マスター、魔力干渉と神威で全員の意識を三秒停止させました。安全です)
(え、それ俺やった感ゼロなんだけど)
(大丈夫です。“やったのはマスター”に見えるよう演出しています)
(マジで余計な気遣いやめろ?!)
そんな俺の混乱をよそに――
観客席の大人たちの評価コメントが聞こえてしまう。
「今のは……神性魔法か……?」
「七歳でこれは規格外だぞ……」
「ハイボール伯爵家……恐ろしい……!」
完全に目立った。
平和終了。
◇
だが、試験はまだ終わらない。
残りの受験者達は戦闘続行。
最後の10名に残れば勝ち。
――な、はずなのだが。
俺が立っている位置を中心に、周囲が避けていくのだ。
「おい、あそこ行くな!殺されるぞ!」
「攻撃禁止領域だ、あれはボス戦のエリアだ!」
「やめろ死ぬぞ! あいつはヤバい!!」
どんな扱いだよ。
俺はただの“平和を望む少年”だぞ(?)
戦場の中でローゼリアが駆け寄ってくる。
「ブランデー様! ケガしてませんか?! よかったです! よかったぁ……!」
胸に飛び込んできそうな勢いだったので、ギリ避けた。
……いや避けるのも心が痛いんだけど。
「や、やめてローゼリア。今抱きつかれたら、他の受験者が死ぬ」
「あ……そ、そうですね……///」
頬を赤くしながら引き下がるローゼリア。
それをじっと見ていた少女がひとり。
アルティナだ。
視線が鋭く、氷のよう。
「……“助けてもらう”だけで満足しているようでは、私には勝てない」
挑発というより、これは――宣言。
“同じ土俵で戦う”と。
「……発言の意味がわからない」
「わからなくていい。ただ――」
アルティナは俺の胸元にまた指を添え、小さく告げた。
「あなたには負けない」
その瞬間、観客席の女子達から黄色い悲鳴。
男子達から殺意のどす黒いオーラ。
(マスター、死亡フラグスコアが急上昇しています)
(なんで俺の人生にスコア制あるんだよ!)
そんな混乱と殺意と恋愛の渦中。
学園長が声を響かせた。
「第一試験終了! 合格者を発表する!――」
巨大モニターに名前が映し出される。
《1位:ブランデー・ハイボール》
やっぱりだよォォォ!!!
首位で目立つやつだよォォォ!!!
《2位:アルティナ・エルフェリア》
《3位:ローゼリア・セレスティア》
《4位:???》
《5位:???》
(以下略)
ローゼリアとアルティナが並んで俺の両隣に立つ。
そして――
「次の第二試験は“二人一組のペア試験”とする!」
会場がどよめく。
「ペアの相性・連携・シナジー・心理的相性など全てを鑑みて評価する!」
心理的相性って言ったよね?
完全に恋愛フラグの評価項目だよね?!
学園長がドヤ顔で続ける。
「なお、ペアは相互に選んでもらう! 相手を指名し、指名された側が了承すれば成立!」
ざわっ!!!
どよめきと殺気が同時に膨れ上がった。
そして――
「ブランデー様と組みたいです!」
「彼は私と組むのよ」
「その子は危険です。私の隊が保護します」
ローゼリア、アルティナ、レイラ副団長、
そしてその他、複数の女生徒までもが一斉に名乗りを上げる。
試験前に修羅場。
てかこの展開、何話で二人殺し合い始める?
俺は静かに宣言した。
「俺は――」
ローゼリアの期待、
アルティナの挑戦、
イルミナの威圧(観客席からガン見)、
レイラの忠誠、
その他多くの視線を浴びながら。
「平和に生き延びたいだけなんだ!!!」
叫んだ。
――伝説の受験者、爆誕の瞬間である。
新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!
愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に
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