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屍術師、渡辺公平の幸福  作者: 小佐原 藤秋
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渡辺公平と襲撃者たち #2


 後のことは話が重くなるので、かいつまんで説明する。

 狙われたのは、私だけではなかった。家族全員が同時に襲われていた。行雄が言う“別件”はこのことだった。

 父、母、兄は実家にいて、生存者は兄だけ。兄は敵全員を殺害し、行方をくらませた。行雄が到着したのはその後だ。

 弟の元にはチンピラが二人きたが、あっさり撃退したらしい。こちらも、もう関わりたくない、と一方的に言い捨てられ、音信不通になった。


 捕まえた柳澤という木刀使いから聞き出した襲撃の計画は、"毎週金曜日の夜、ショッピングモールで夕食を済ませ、本屋に行く"という私の行動パターンを把握した上でのものだった。つまり、私はしばらく誰かに尾行されていたことになる。


 あとは、

 ・本屋を中心に後藤が人払いをする。

 ・本屋前に集合する。

 ・妻を人質にとって、四人がかりで私を殺す。

 というシンプルなものだった。行雄から電話がなければ成功していただろう。


 運が良かったのは、リーダーで銃を持った“茶髪”こと後藤が最初に本屋前に一人で到着したことだ。数十秒の差だったが、これが一番大きい。二番目は、行雄が“でかぶつ”こと大河と、柳澤のペアを捕捉していたことだ。肉体的暴力が一番強いのはこの二人らしい。

 で、私はほとんど素人の、あばた面こと内藤を相手にするだけで済んだ。

 ちなみに、情報を引き出したのは前原さんだ。私は柳澤に会わせてもらえなかった。妥当な判断だと思う。

 脅し方は想像がついた。屍術ができれば、拷問して情報を引き出す必要はない。殺して操れば、どんな情報でも引き出せる。

 要は、生きて話すか、死んで話すかの違いだけだ。


 そのほかの状況や業界内での噂話を総合すると、屍術が使える家系を絶やす、というのが目的と見て、ほぼ間違いない。

 屍術が使えるのは、父、兄、私だけだ。弟は才能に恵まれなかったから、足止め程度で済んだ。母はたぶん、とばっちりだ。無茶をする性格だったから、想像がついた。

 しかし、なぜ屍術を使う家系を狙ったのかは不明のままだ。柳澤は金で雇われていただけで、目的は知らないらしい。


 ただ、私の家系は、何百年も前は呪いを生業としていたから、本格的に忌み嫌われていたのは事実だ。そういったことへの迫害に、筋の通った理由なんてないようにも思える。

 柳澤から得られた情報はもうひとつある。ショッピングモールから人払いができたのは、後藤の能力らしい。具体的にどんな能力なのかは柳澤も知らされていなかった。居場所については、柳澤以外の面々はみんな雲隠れしてしまい、前原さんですらまだ見つけられていない。


 この件で警察が動くことはない。父母は自分たちが誰かに殺される可能性があることをよく分かっていた。既に動かないようにお願いしてあったのだ。下手をすると、警察に小さくない被害が出てしまい、もっと面倒なことになる。


 しかし、いつ命を狙われるか分からず、警察にも守ってもらえないというのは精神的にかなりキツい。価値観が大幅に変わる。しかしその不安があったのは、ほんの少しの間だった。

 前原さんが私の庇護を申し出てくれたからだ。前職に復帰するという条件付きだった。それはすぐに業界に知れ渡った。これで当面、誰も手を出せなくなる。前原さんは若くして(といっても四十だが)相当の有力者で、父に恩があった。私も子供のころから付き合いがある。


 それから、妻と別れた。

 私とのつながりで妻が危険に晒されるのは耐えられない。人質に取られたら、私はなんでもするだろう。死ねと言われれば、死ぬ。

 だから妻は出て行き、私は居場所も知らない。今どこで何をしているかを知っているのは、妻の身元を隠してくれた前原さんだけだ。


 絶対に今回の件の原因をつぶして、また妻と一緒に暮らす。諦めるつもりはない。


1話辺りの量が少ない気がする…。

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