スタミナ切れ。
『トマトが食べたいのだが』
歩き疲れてへとへとな私に、ルビーは言う。
何となく、スキル使ってから身体がだるいというか、重いというか……。
『イオリ自身のレベルが低いのに固有スキルを使ったからではないか?』
「レベルまであるの、この世界」
『無論。レベルが無ければ一体どうやって敵や味方の戦力等を把握するのだ? イオリの世界には、レベルはなかったのか?』
レベルはなかったかなぁ。こいつレベル高ぇ! って人は居たけれど、そういう意味じゃあないんだろうし。
『イオリの世界は難しいのだな』
「そうだね、簡単ではなかったね」
遥か昔の事のようだけど、実際は数時間前だけどね。
あたりは日も暮れてとっぷりと夜の闇に包まれてきた。ずっと歩いていたけど、もう限界だ。お腹も空いたし。ラビークの片耳だけじゃ足りないよ。
「ねえルビー、何か食べる物取ってきてよー果実とかー」
『イオリのしょっぴんぐで買えばいいではないか』
やだよー目立つもんあれ。そりゃ真っ暗だけどさ、どこで誰が見てるのかも解らないじゃない。さっきは迂闊に使いすぎたし、何より身体がだるくて使えそうにもない。
『ならば、何か狩ってこよう』
「きゃー! ルビーさん素敵!」
草原に寝転びながら、ひらひらと手を振ってルビーを見送る。見上げた空は、地球と同じように星が輝いている。同じ物かどうかはさておいて。
カサ、カサカサ、と草の擦れる音が聞こえた。
ルビー……じゃない。魔物……? 呑気に寝転んでいたけれど、ここは私の知ってる世界じゃないんだと思い出した。
音のする方を見ると、蒼い光がふたつ並んでいた。