異世界の初食事。
『イオリ、空が見えたぞ』
「うん、そうだろうね」
ルビーが突き破った洞窟の天井から空が見えた。
もう一度ルビーにミニマムとやらをかけて、私を抱えて外まで飛んで洞窟を脱出してもらった。
洞窟の外は木漏れ日さしこむ森の中で、ルビー曰くハイラの森というのだそうだ。食べられる木の実や魔物も沢山いる、豊かな森なのだと。
木の実の他に居ちゃいけないものが居た気がするけど、聞かなかった事にしようかな。
ガサッと草の音がし、そちらへ目線をやると長いうさぎのような耳が覗いていた。もしかしたら、うさぎがいるのかな!
「ルビー! うさぎがいる……よ…………」
ガサガサと草の根をわけて出てきたのは、コブラのような顔と身体に、ふさふさの耳がついた、うさぎ……だった。うん!うさぎだった!!
『イオリの言うウサギがどのような生き物かは解らぬが、これはラビークと言う魔物だ。うまいぞ、特に耳がうまいのだ』
あぁ、そう。そうだよね、見た目コブラだし。って捕まえてるけどルビーさん、それ、食べるの?
『久々に外に出たら腹が減ったのでな』
「待って! 生で食べちゃう感じ?」
『そのまま喰うのだが』
「いや! 嫌だよ!! 私もお腹空いたけど、生は嫌っ!」
何とか説き伏せ、コブラ部分と耳部分を裂き分けてもらった。ルビーに火をつけてもらって焚き火を作り、木の枝に羽をむしった耳とコブラを刺してこんがり焼いて出来上がり。
見た目はとても食べられそうにないけれど、めっちゃいい匂いする〜!!!
『ラビークを焼いて食べるのは初めてだ』
ルビーが焚き火の前で、尻尾をぱたぱたさせながら待っている。
「もういいかな」
料理は得意だけど、さすがに初めて見た生き物を調理するのは無理だった。精神的に。なので、焼くだけ。
『!! うまい! うまいぞイオリ! 喰ってみろ!』
「えぇー……見た目がぁぁ…………」
震えながら意を決して耳をかじってみた。
「うわっ! おいしい! 何これっ!」
焼いただけなんだけど、鶏肉みたいなむっちりした身とコリコリした軟骨のような部分が合わさってすごくおいしい!
ルビーはコブラ部分をおいしそうに食べている。
『どうした? 欲しいのか?』
じーっと見ていると、ほれ、と眼前に差し出されるコブラ。
「…………いらない」
ふたりでラビークをひとしきり味わった。