燃える不死鳥。
――――――ォリ……イ……!!
誰か呼んでる……。でも、身体が動かない。
眠い。泥の中に沈んでいくみたい……。
『イオリ!!!!』
バチーンと響く音、遅れてくる頬の痛み。
「いったーい!! 何するのよ!!」
がばっと起き上がると、くらくらした。
『(良かった、覚醒したな。昏倒していたのでな、意識を戻さねばと思って、叩いた。まだ起き上がるな)』
ルビー……。叩いたって、一体どれで叩いたの?
『(これだ)』
すらりとした尻尾を私の方へ向ける。そんなふわふわしたもので?
『(気にするな。それよりも気がついたのならポーションを飲んでおけ。まだ回復していないだろう)』
あっ、エンリル! エンリルは?
『(エンリルもまだ目覚めないが、進化は完了したようだ)』
よかったぁ……。アイテムインベントリから買いだめしておいたがぶ○みメロンソーダを取り出して、一気に飲み干した。ペットボトルを握ると、エンリルに触れて焼けた手が熱をはらんで痛んだ。
「ぷはあっ、あー! 美味しいっ」
『(我にも飲ませてくれ)』
ルビーの赤皿にメロンソーダを注ぐと、しゃぶしゃぶと飲んでしまった。
エンリルのそばに行くと、熱はおさまったようで触れても熱くはなかった。穏やかな呼吸をしていて、寝ているみたい。
進化したのは見てとれた。姿がすっかり変わってしまっていて、前述した通り、額には魔導石のようなものがあって身体はふわふわの羽毛に覆われ、尻尾は6本にわかれている。体毛も紅に染まっていて、翼も前よりも長く伸びている。
大きさは尻尾の先まで合わせても、私よりも少し大きいくらいで、ライグルの姿よりもちょっとだけ縮んでいるような気がする。
『(我が千年ほど昔に見たものよりも小柄だが、フェニクスに似ている)』
ふ、不死鳥? 不死鳥のフェニクス?
『(姿を見るに、フェニクスが一番近い。鑑定してみたら判るのではないか?)』
ルビーの言う通り、鑑定すると種族がフェニクス(レア種)になっていた。他のステータスも軒並み上がっていてスキルも沢山増えていた。レベル以外は完全に抜かれているな、私。
「エンリル、すごいね、フェニクスだよ」
撫でていると、エンリルがパチッと目を開けた。
まだ動けないようで、ピキュー……と声を上げて私の方へ頭をもたげ、私の手のひらに“ごっちん”をしてくれると、痛みも傷もスーッと消えた。
「しんどいのにありがとう、優しい子だね。大丈夫だよ。私もルビーも、ここにいるからね」
『(イオリ、エンリルにもポーションを飲ませてやれ)』
青皿にメロンソーダを入れて、エンリルの口元まで持っていくとあっという間に飲み干してしまった。
『……主、ありがとー』
起き上がったエンリルは、ぶるぶるっと身体をふるって翼を動かした。
「大丈夫?」
『うん、もう大丈夫だよ。主とルビーの魔力を貰えたから、あんまり苦しくなかったよ!』
あ!と声を上げて、少し離れた場所に落ちていた首輪を咥えて戻って来た。つけ直してあげると、チリンチリンと鈴を鳴らして満足そうにしている。
『本当はね、ライグルの姿のままで居ようかと思ったんだけどね、ルビーの魔力が混ざっちゃったからフェニクスにしたんだよー』
『(すまぬな。どうしても属性が偏ってしまうからな)』
『いいんだよー! 主のために使いたい魔導も覚えられたし、ルビーから貰った魔力のおかげで色んなスキルも覚えられたんだよ!』
魔力が混ざるなんて……おそるべし。
『主ー、おなかすいたー!』
無事? にエンリルの進化も終わったし、お祝いに美味しいの作ろうか! エンリルの好きな物たっくさん作ってあげるよ!
『わーい!! ぼく、ふらいが食べたい!』
『(イオリ、あまり無理をするなよ。エンリルも、まだ動きまわるな)』
「ルビーってば、お父さんみたいだよ」
茶化す私とじたじたするルビー、それと真っ赤なエンリル。
遥か後方から見つめる視線に、喜んでいる私達は、まだ気づいていなかった。




