初めての魔導。
ひとまず洞窟から出ようと試みたが、かなり奥深くに居たようで出口に行き着かない。
「ねえ、どこから入ってきたのか覚えてないの?」
歩き疲れてうんざりしながらルビーに問う。
『覚えているが、何百年も奥深くに居たせいか記憶の中の道とは違っているようだ』
そりゃまあ、崩落したりもあるよね。ルビーも大きな身体を器用に動かしながら狭い道(道と呼べるかどうかも怪しいが)をのしのし歩いている。
「ルビーって小さくなれないの?」
小さくなれたら便利なのに色々と、と心の中で呟きながら独り言のように問いかける。
“魔導︙ミニマムを使用します”
ステータス確認をした時の不思議な声が響いた。
「えっ?えぇっ?!ルビー!?」
さっきまで後ろにいた大きな身体のルビーが見当たらない。見渡してみると、足元に中型犬サイズの紅いドラゴンがポカーンとして座っていた。
「ル、ルビー……?」
『おぉっ! イオリ! どうしたのだ大きくなっているぞ!? 魔導か?!』
何この子、実は天然なのかしら。
「いや、あの、ルビーが、小さくなったんだよ……?」
真っ赤な瞳をまんまるくさせながら、ぱたぱたと小さな翼をはためかせて私の顔の前にゆっくり翔び上がってくる。か、可愛い……!
『我が小さくなっているのか! イオリが小さくしたのか!? 凄いなイオリは!』
はしゃいでいるのか、そこらじゅうをぱたぱたと飛び回り、時折口からポッポッと火が出ている。火も吹けるのね、ルビー。
『凄いな! 自由に羽ばたけるぞ! 久し振りだ!』
ひとしきり飛び回り、私の目の前に戻ってくる。
『イオリの魔導なのか? 我はあの大きな体躯が疎ましくてならなかった。これはいい! どこへでも行けそうだ、礼を言う!』
「大きなルビーも格好いいけど、小さなルビーも可愛いよ。元に戻せるのかは解らないけど」
“魔導︙ミニマムエンドを使用します”
え、ちょっと待って!!!!!!
羽ばたいてたルビーが、元の大きさに戻ればそれは言わずもがな洞窟の天井を突き破る事になるわけで……そういうわけで…………。