草原のホットケーキ。
ダンジョンを脱出してから、少し進んだ所にピクニックにもってこいな草原があったから、そこで料理をすることにした。人通りもなくて、魔物も見当たらない。ワンクルーに頼んだ買物も、誰に見られることもなく。
『(このあたりは皆、船で移動する事が多いからな。魔物も襲う相手がおらねば余所へ流れるものだ)』
なるほどね。
『なに作るのー? 美味しいものー?』
ふっふっふ、今日はホットケーキを作ります!!
ベーキングパウダーとか使うのは面倒だから、使うのはもちろんホットケーキミックス。
『ほっとけーき?』
『(楽しみだな)』
買ったバターを常温に戻して、ドロップしたクイーンハニー(ハチミツ)をたっぷり入れて、混ぜる。きれいに混ざったら、ハニーコームバターの出来上がり。
ふんわり甘い、ハチミツの独特の香りが漂う。
スプーンに残ったクイーンハニーを味見してみると、濃厚なコクとすっきりした甘さが舌に広がって、のどを滑り落ちていく。
うわぁ、美味しい……! こんな美味しいハチミツ、初めてかもしれない。
ルビーとエンリルのジト目が気になるけれど、目をそらしてホットケーキミックスに卵と牛乳を入れて混ぜ合わせる。ここにもこっそりクイーンハニー投入。
で、電動の泡立て機が欲しい……。シャカシャカ疲れた。
フライパンで、たっぷりとホットケーキを焼き上げていく。
待ち切れないふたりに、焼きたてのホットケーキにこれまたたっぷりとハニーコームバターを乗せて、さらにクイーンハニーをかけて出してあげると、目がキラキラしている。
あたたかい方が美味しいから、先に食べていいよ。いつも待ってくれているけれど、これは早く食べないと美味しさが半減するよ!
ルビーとエンリルは顔を見合わせて、あわてて食べ始めた。
『(これは……甘いのとしょっぱいのが混ざり合って、ふわふわのパンによく合うな!)』
『おいしーい! 主、おいしいよ!!』
す、すごい勢いでホットケーキが無くなっていってるから、もう少し焼かなきゃ私の分が残らない気がする。
ルビーとエンリルがたらふく食べて、やっと私が食べる番。
ふわっふわのホットケーキに、ハニーコームバターもクイーンハニーもたっぷり乗せて、いただきまーす!
んんー!! バターがしみたホットケーキに、じゅわっと広がる甘じょっぱさがたまらない!
甘さがしつこくなくって、バターたっぷりなのにいくらでも食べられそう。
私が三枚たいらげて、後の山のようなホットケーキはルビーとエンリルがきれいに食べてくれた。
『(ウッ……喰いすぎた……腹が裂けそうだ)』
『ぼくも、もう食べられない……ウプッ』
草原に転がる、お腹がポンポコリンなレオパルとライグル。
魔物が居たら君たち、いい獲物だよ。
反論する余裕もないのか、ルビーはころころと草原を転がってる。
エンリルも翼を広げて転がってる。
空は青いし、いい天気だし、気持ちいいなぁ。
私もふたりと一緒に、転がる事にした。




