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練習あるのみ。





『(そうではない! こう! こう羽を動かすのだ!!)』



 モロクに帰るにも少し時間が早いし、私ももう少し休んでから帰りたいなって言ったら、その間にエンリルに飛ぶ事を教えるとルビーが言うので、岩陰に座って見ているけれど……何というか……とってもスパルタなルビーさん。



 レオパルの姿でも飛び方って紅竜と同じなのかな?



『(基本は同じだ。魔導で飛ぶわけではないからな、自分の力で羽ばたくのだ)』



『るびー! こう!?』



 バサバサバサッと、不格好ながらもエンリルの身体が浮かんでいる。足をじたばたさせて、ここが海ならさながら溺れているかの様。



『(そうだ! バタバタせずに足を折りたたむのだ!)』



 ―――ドスン!



『う……ふ、ふぇぇ……』



『(泣くな! 力を分けてくれたイオリのために強くなるのだろう? そう決めたのはエンリル、お前自身だ。泣くと弱くなる、泣くな)』



『……はいっ』



 ぶるぶるっと身体を揺すって、気合を入れ直すエンリル。尻尾でエンリルの身体についたほこりを払ってあげるルビー。見てるぶんにはとっても微笑ましいシーンなんだけれど、ふたりの言葉を聴きながらだと昔の熱血スポーツ漫画って感じ。



 時間にして約二時間ほどの練習をして、エンリルは浮かぶ事は出来るようになったみたいだ。まだカーブしたり、ルビーみたいにグンと上に飛び上がる事は出来ないみたいで、要練習だってさ。



「お疲れ様、ルビー、エンリル」



『あるじ! とべたよ! ぼく頑張るからね!』



 よしよしと頭を撫でると、エンリルの頭のてっぺんの辺りが少しボコッとふくらんでいる。



「ん? 何これ。どこかにぶつけた?」



『(大人のライグルになるにつれ、角が生えるとリュートが言っていたであろう)』



「角! そういえばそんな事言ってたなぁ。ここから角が生えるのね」



『りっぱなつのがはえたらいいなー』



「じゃあ、モロクに戻ろっか。エンリル、今からひとが沢山いる町に行くけれど、私とルビーのそばから離れない事。ひとを引っ掻いたり突いたりしちゃだめだよ」



『わかったー』



『(よし、行くぞ。イオリは乗れ。エンリルは大きくなりすぎだ。走れ)』



『るびー、きょうそう!』



「えっ」



『(望むところだ!)』



「こ、こらっ! 私が! 落ち……!!!」







……………………







『まけたー。るびーはやーい!』



『(エンリルに負けるほど老いぼれてはおらぬぞ)』



 モロクの入口に着いて、ふたりはじゃれあっている。



『あるじ? どうしたの?』



 ルビーの背中にへばりついている私の頭を、くちばしでツンツン小突くエンリル。



 どうしたのじゃない! 私が乗っている時に競争しちゃだめ!!



『(乗るのも上手になったものだ)』



 笑い事じゃない! もう! 本当に落ちるかと思ったんだからね!



 『ごめんなさい』と、しょんぼりしているのはエンリルだけで、ルビーは震えながら笑いを噛み殺している。



 入口で立ち止まっていると、見慣れた門番さんが駆け寄ってきた。



「ライグルも従伴にしたのですか?!」



「あ……いえ、このライグルは育成を頼まれて……」



「そうですか。ライグルは珍しいので、盗まれないように気をつけてくださいね」



 やめてよ、そのフラグみたいなの立てるの……。



 門番さんにペコッとお礼をして、クランに向かう。

 道行きのひと達がみんなエンリルを見て、指を差す。確かに村でしかそばで見る事が出来ないし、野生化しているライグルも遭遇率はかなり低いって言ってたもんな。



 クランに入り、カウンターの女の人にリグルドさんがいるか尋ねてみると、倉庫の方にいらっしゃいますよとのことだったので倉庫へ。クランの中でも、エンリルは注目の的だった。



 リグルドさんは倉庫で解体の真っ最中で、こちらに気づくと「もうすぐ終わるから待ってな」と三番の部屋へと促してくれた。



 私のうしろをルビーとエンリルが続いて歩いているのを見て、何やら叫んでいた気がしたけれど、スルーしておいた。






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