ミノオルグス、討伐。
『(イオリ)』
「んにゃ……どしたの……?」
『(朝だ、起きろ。ミノオルグスを倒しに行くぞ)』
もうそんな時間!? と、ガバッと起きてみたが窓の外はまだ暗かった。これ、まだ夜っていうんだよルビー……。
『(眠れぬ)』
楽しみすぎて眠れないって遠足前の小学生じゃないんだから。もう少し寝かせてよ〜。
『(我に咥えられて行くのと、自分で我の背にまたがって行くのと、どちらがいい?)』
……。選択肢ってそれだけしかないの?
『(うむ)』
もー! わかったよ! 起きればいいんでしょ! 起きますよ!
仕方なく起きて、眠気覚ましにサッとお風呂に入ってから身支度を整えて出発した。
依頼書に書いてある情報は、ニレ山の逆にあるピスラ山にミノオルグスはいるらしい。ピスラ山には山中に村があって、モロクの海産物と、村で採れた物を交換しに村人がやってくるのだが、その途中にミノオルグスが居座って、畑を荒らしたり時には村人を襲ったりしているという事らしい。
『(イオリも字を覚えたらどうだ?)』
そうだよね、いつもルビーに読んでもらうわけにもいかないし、少しは勉強しなくっちゃね。この歳で勉強かぁ〜……。
うだうだ言っていたら、大きな岩の陰でルビーが止まった。
『(居たぞ)』
私達から少し離れた場所で、ミノオルグスと思しき生き物がライオンに似た生き物を食べている所だった。うわぁ、ルビーと同じくらい大きいし、ムッキムキだね……。ライオン、生でそのまま食べちゃうんだ……ぐ、ぐろい……。
『(とどめはスパンダーの時のように、イオリがやるのだぞ)』
えっ!?
『(多少レベルも上げておかねば、イレイドの谷で進めなくなるからな)』
ちょ……待ってよ! 聞いてないよ!? イレイドの谷ってそんなに危ない所なの?
『(いくぞ)』
私の話を全く聞かず、ルビーは素早くミノオルグスの正面へ走った。ミノオルグスは瞬時に食べるのを止めて、巨大な斧を振り回す。周りにある岩壁に斧が当たると、大きな音をたてて削れていく。
おおぶりな攻撃だけれど、振り回すスピードが早くて中々ルビーも近づけない。作戦を変えたのか、機敏に攻撃を避けながら距離をとりはじめた。そして、
『(我の勝ちだ)』
と、ルビーの低い声が響いた。次の瞬間、ミノオルグスの頭上に赤く輝く槍のような形をした光が何十本も現れ、ミノオルグスの身体を貫いた。
耳をつんざくような雄叫びをあげて、ミノオルグスはゆっくりと地面に倒れこんだ。
『(イオリ、とどめだ)』
アイテムインベントリから長刃の包丁を取り出して握り、ルビーのそばへと近づく。倒れこんだミノオルグスはまだ荒く呼吸をしていて、こちらを睨みつける。
『(我の紅槍で四肢胴体を射抜いておる。動く事はかなわぬ)』
「う……」
『(イオリ、頑張るのだ。……強くなれ)』
「ごめんね、ミノオルグス……」
ゆっくりと長刃をミノオルグスの胸に沈めていくと、静かに呼吸が止まった。
『(すまぬ。だが、イレイドの谷へ入るためにはレベルアップが必要なのだ……)』
うん、わかってるよ。私の嫌がる事を無理にさせようとしないのも、嫌な事をさせる時には何か意味があるって事も、わかってるよ。
……でも、やっぱり命を奪うのは慣れないや。
依頼書に討伐完了の印が浮き上がる。息絶えたミノオルグスをアイテムインベントリに入れて、モロクへ帰る道に進み始めた頃には朝日が昇っていた。




