マグリルづくし。
商店街も賑わっていて、ルビーと一緒にもみくちゃにされながら進んだ。下町の商店街みたいで、親しみやすい雰囲気を楽しんだ。本当は情報収集の予定だったけれど、へこんでた私をはげますためなのか、ルビーが気をつかって賑やかな場所へ連れて行ってくれたみたい。
お礼に、今夜は大好物だっていうマグリルを使ってなにか美味しいものを作ってあげようかな。
「明日は魔導師様探ししなくちゃね」
『(気は晴れたか?)』
「うん! ありがとう、優しいね」
なでなですると、フスッと鼻を鳴らして尻尾を揺らしていた。
日が暮れるまで町を楽しんで宿屋に戻った。
「おかえり!」とおかみさんが出迎えてくれた。おかえり、なんてちょっと照れるけれど嬉しいな。ただいまと返して部屋へ。
まずはお風呂だ!歩きまわったせいで汗だく!
ゆっくり入って、ルビーも私もぴかぴかになった。
『(マグリルを喰わせてくれるのか?)』
もちろん! その前に買物しなきゃ。ショッピングを使って、ルビーとお買い物。
「今日はちょっとゆっくりまわろうよ」
振り向くとすでにルビーはトマトとリンゴを咥えてこちらに走ってくる所だった。かごの中に入れると満足そうにしている。
『(何か買うものがあるのか?)』
「そうだね、ワンピ○スが読みたいから雑誌の所を見たいな。後は、甘いものが食べたいな」
『(わんぴ○すとは何だ)』
漫画とか本ってあるのかな、この世界……。
『(まんがはわからないが、本ならあるぞ。商店街の中に本屋があっただろう)』
「そうなんだ。ちょっと気になるな」
雑誌があるはずのコーナーに行くと、そこには何もなかった。いや、棚はあるんだけど何も置いてなくて貼り紙がしてあった。
“入荷予定無し”
「嘘……。続き楽しみにしてたのに……」
『(異世界だからな、イオリの世界の情報がこちらで巡ると何かと不都合なのではないか?)』
「がっかりだよ……」
雑誌くらいいいじゃない!もう!
『(あまいものは我も食べたい)』
デザートコーナーに行くと、大好きなショートケーキの二個入りがあったからルビーと半分こね、と言って買うことにした。
後はマグリルのフライをするために必要なものを買って、支払いをした。
『(ふらいとはうまいのか?)』
マグロに似ているから美味しいと思うんだけどな。それとマグリルのカマの部分の身をこそげとってネギトロにしようかなと。カマを煮付けてもいいんだけれど、そんなに大きなお鍋は売ってなかったし、持ってる鍋にも入りきらず、残念。
マグリルのサクを大きめの一口大に切って、塩コショウ。小麦粉、たまご、パン粉の順につけていく間に油を熱しておく。お箸を油の底に沈めて、シュワシュワ泡が出ていたらカツを入れて揚げていく。
その間に、マグリルのカマから身をこそげとっていく。ボウルいっぱいの身に、おネギとわさびともみのりをふって惣菜で買った白ご飯の上にドーン!
『(……うまそうだな)』
もうちょっとでマグリルカツも揚がるから待っててね。お風呂入った意味がないくらい汗かいちゃったけど、山盛りのマグリルカツも完成〜!
それでは、『(「いただきまーす!」)』
『(マグリルの身が穀物に混ざってうまいぞ! シャキシャキした歯ごたえも、海のような香りも合わさってとても美味い!!)』
「マグロよりは脂が多いかな? カツオのお刺身に近い血のにおいが少しあるけど、うまみも強くて美味しい! のりもわさびも合うね」
『(ふぐっ……!)』
どしたの、ルビー。涙目になってるけど。
『(鼻の奥が痛い……!)』
あ、自分が好きだから多めに入れたわさびがきいたのね。ごめんね、毒じゃないからね。
涙を流しながら食べてる……。
「マグリルカツもおいしー! サックサクでマグリルの身がむっちむちだね。はっ! これは……マヨマヨ! 絶対マヨが合うって!」
アイテムインベントリからマヨを取り出してかけていると、我のにも乗せろとせがまれて、たっぷり乗せてあげた。
『(「うまいっ!!!!」)』
お腹いっぱいマグリルを堪能した後は、甘いものターイム! ルビーと一個ずつ分けて、食べる。久しぶりだなぁ。安定のおいしさ。
ルビーは口の周りに生クリームいっぱいつけて頬張っている。お気に召したみたい。赤い果実が……! って力説してるもの。おいしいよねぇショートケーキ。あっという間に食べ終わり、明日の予定をたてつつ、夜は更けていった。




