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マグロみたいな、マグリル。





『(そんな顔をするな。仕方のない事だろう)』



 ご飯屋さんの女の子に従伴と泊まることの出来る宿屋を教えてもらい向かう途中、心配そうにルビーが覗く。



 そりゃ私の世界でも奴隷と名はつかずとも、似たような事は行われているわけだけどさ。目の当たりにするのとしないのとでは違うじゃない。



『(イオリが気に病んでもどうすることもできぬ。我が世界を飛び回っている頃からあるのだぞ)』



 わかってる。どうしようもないことくらい。そこまで子供じゃない。



『(……なら、いい)』



 女の子が教えてくれた通り、イカのような絵が描かれた宿屋の看板があった。ギィーッと音をたてて扉を開くと、いかにも宿屋のおかみさんといった感じのふくよかなおばさんが出迎えてくれた。



「いらっしゃい! ……っと、ずいぶんと大きな従伴だね」



「一緒に泊まることは出来ますか?」



「従伴も人数として数えて宿賃の支払いが出来るのなら、部屋で一緒に泊まっていいよ! じゃなきゃ従伴は獣舎で寝泊まりだ」



 チラッとルビーを見ると『(我も布団がいい)』と言ったので、ふたり分の宿賃を支払った。ルビーのおかげで懐はとってもあたたかいし。



 おかみさんに連れられて部屋へ案内された。部屋はじゅうぶんすぎる広さで、何と小さいながらもお風呂がついていた。



「何だか疲れちゃったよ」



『(色々考えすぎだ。イオリの言いたいこともわかるがな)』



「ん? 喋らないの?」



『(大きな町なのでな、念の為にだ)』



「そっか。周りから見たら私のひとりごとだね」



ボフッとベッドに身体を預けると、ルビーが横に来て丸まった。



『(風呂ははいらないのか)』



疲れたから明日入る。……。



『(……。泣くな)』







 ルビーのお腹にもぐりこんで、気づいたら眠りについていた。





………………



 翌朝、すっきり目が覚めて朝風呂に入った。もちろん、ルビーも一緒に。汚れも疲れもきれいサッパリ落として、今日は町を散策しようって事になった。



 宿屋の朝ご飯は、かたい黒パンとミネストローネみたいな、豆が入ったシチューだった。連泊しますとおかみさんに告げて、宿賃を前払いしてから町へ出た。



 町は朝が早いというのに、たくさんの人が行き交っていた。まずは港を見に行ってみる。



『(漁を終えた船が着いているようだな)』



 魚がとれるの?



『(とれるぞ。海のものはうまい、大好物だ)』



 港に着くと、船からコンテナのような箱が矢継ぎ早に降ろされている。船員も人間族だけでなく、色々な人種がいりまじっていた。



『(朝市をやっているぞ、行こう)』



 ルビーに引っ張られて、人だかりの中へ。

 テントが立ち並ぶ朝市には、とってきたばかりの魚……のようなものや、足が何十本もあるイカみたいなものが並んでいた。



『(イオリ、これが食べたい)』



 ルビーの目線の先には私の身長ほどもありそうな、見た目はマグロだけど、目が四つに尾ビレがフリルのようになっている魚……があった。



 欲しいの? でも、こんな大きなお魚さばけないよ。



『(店の者に頼んでみろ)』



 これください、とお店の人に声をかける。



「マグリル一匹全部かい?」



 いかにも漁師さんって感じの色黒の男の人がこたえる。これ、マグリルって言うんだ。



「はい、出来ればさばいてもらいたいんですが」



「あいよ! 頭はどうする?」



『(頭がうまいのだ!)』と、ルビーが私に頭をこすりつける。



「持って帰ります……」



「そのレオパルの餌かい? 大変だね! ちょっと待ってなよ。すぐさばくから!」



 十分ほど待っていると、箱に入れて背負えるように梱包したマグリルを持って来てくれた。生で食べる事もできるらしい。モロクでも刺身のようにしてタレで食べたりするんだって。本当にマグロみたい。



 荷物はルビーの背中に乗せたら丁度サイズだった。



 お店の人にお礼を言って、人がまばらな建物のかげに隠れて荷物をアイテムインベントリに放り込んだ。



『(今夜はマグリルを喰うのだ)』



 きれいな赤身だったなぁ。どうやって食べようかな。



 そのまま朝市を抜けて、町中へ出る。広い町だから一日じゃまわれないね。商店街のような、お店が立ち並ぶ通りが目に入ったので、次はそこへ行ってみることにした。






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