故郷と、唐揚げ。
翌朝、クランに行ってブロンドさんに地図はあるのか尋ねてみたら、一応はあるみたいなんだけど、大まかな町の位置をしるした地図に自分で書き込んでいくのが普通なんだって。うぇーめんどい。
ルビー様から『(それも旅の楽しみであろう)』っていう前向きなお言葉をいただいたので、町の位置がわかる程度の地図を買って、一旦宿屋に戻った。
意外とエラリア大陸が広いのにびっくりした。しかも、角の丸い逆三角形のようなエラリア大陸から、羽が生えてるみたいに、大小様々な島? が対称的に放物線を描くようにある。鳥が翼を広げているようにも見える。
「まだまだ世界は広いなぁ」
『我が生まれたのはこのあたりだ』と、地図の遥か上の部分を指すけど地図には何も描かれていない。
「なんにもないよ?」
『とても寒い所でな、普通の生き物では辿り着けないのだ。我ら紅竜は火の神に守られているからな、寒さにも熱さにも割と耐えうる。他の生き物よりは頑強に出来ておるのだ』
「故郷に戻りたいとは思わないの?」
『紅竜は群れを作らぬ。その地に戻り、子を生み、子が火の魔導が使えるようになると親はまた外の地へと出て行くのだ』
「なるほど。夫婦で、つがいにはなるの?」
『我ら紅竜は、自分の寿命と引き換えに体内で子を作る事が出来るからな。雄も雌も無いのだ。ゆえに、つがいにもならぬ』
「錬金術……」
紅竜の生態って、誰も知らないんじゃないの。本を書けば飛ぶように売れそう。
「地図に向かって左端にある町へ行って、そこから縁取るようにエラリア大陸をまわってみようか」
『楽しみだな』
明日出発として、今日は武器や防具を揃えないとね。ルビーがいてくれるから、心配はないだろうけど一応、格好だけでも。
武器屋で、テイマーが使うおすすめの武器をくださいって言ったらウイップを渡された。なるほど、鞭でしばけということか……と心の中で呟いたら、すごい顔でルビーがこっち見てた。
手頃な値段のレザーウイップを買って、長いから丸めて束ねて腰に下げるといいよって教えてもらった。
防具屋では、軽くて動きやすいプロテクターみたいな鎧を買った。見た目は超絶ダサいけど。なんだろう、はじまりの冒険者みたいな……あながち間違いでもないんたけど。
買い物だけで一日潰れて、宿屋に帰ってさっさとお風呂を済ませた。早めに休まないと、明日からは冒険の日々だ!
『腹が減った』
「お腹空いたね、何か作ろうか!」
『エレクバードの肉が食いたい』
「そういえばアイテムインベントリに入れたままなんだけど、腐ってないかな?」
『アイテムインベントリに入れたものは、入れた時のままの状態で保管される。腐ることもないぞ』
便利なんだね。じゃあ今日はエレクバードを食べてみよう。
取り出してみると、見た感じは鶏肉に似てるから唐揚げにしてみようかな〜。白ご飯とサラダと、ニンニクとしょうがに、マヨネーズと片栗粉をショッピングで買い足して、エレクバードを一口大より少し大きめに切って、しょうがとニンニクはすりおろして、マヨと片栗粉とおしょうゆを全部混ぜておく。
その間に油を熱しておいて、揚げていく。うへー熱いっ。
『熱いか?』
横から覗くルビー。近い近い。あなた今レオパルなんだから燃えちゃうよ。そういえば今のルビーって、自分のスキルで燃えたりはしないのかな?
今度やってみてもらおう。水辺で。燃えたら困るからね。
「できたー!」
『おお! 香ばしい肉のいい匂いだな!』
「『いただきます!』」
『これは……これはうまいぞ!! エレクバードのうま味を何とも言えぬ風味が引き立てている!! 肉の汁もたっぷりで、うまい!』
あら。ルビーさん大絶賛じゃないですか。気に入ったみたいで良かった。私も食べよっと。
「うわぁ! さくさくじゅわっとしておーいしー! エレクバードの肉って思ったより柔らかくてジューシー!」
揚げたての唐揚げに、チョッとだけマヨをつけて食べる。あぁぁ太る……でもそれが美味しいー!
『我のにもそれを付けてくれ』とルビーの唐揚げにもマヨを乗せてあげると、かなり気に入ったみたいで全部に付けてくれって。マヨラールビー誕生。
山盛りの唐揚げをふたりで食べきって、明日に備えて早めに寝ることにした。ルビーは口のまわりの毛がべったべたになってたから、洗ってから私の隣に丸くなっていた。




