ピグモール入り豚汁。
宿屋に戻って、ちょっと早かったけどお風呂を貸し切ってルビーと入った。レオパルの姿で初めてのお風呂。
『なんだこれは! 毛が湯を吸って重いぞ!』
「そりゃ紅竜の鱗のようにはいかないよ。暴れてないでほら、洗ってあげるからおいで」
わしわし洗って、私のトリートメントまでしてみた。洗い流すと艶々になった。私はお風呂ついでに着ていたもの全部洗って、買ったばかりの服に着替えた。下着の替えが無かったから、ショッピング使ってまとめて買った。
部屋に戻ると、ルビーは自分のスキルで火の玉みたいなのを出して乾かしていた。便利ですねルビーさん。乾くと見違えるほどホワホワになって、ますますご満悦になられていました……。
「さーてと、明日からどうしようか。魔導士様探しもしなくちゃいけないし、そろそろ次の町へ行ってみる?」
『そうだな、もっと大きな町へ行かねば高名な魔導士はおらぬからな。本都の街を目指しながら、道々町へ寄って行きたいぞ』
「本都って、県庁所在地みたいなものね」
『?』
「気にしないで」
明日、クランの人に地図があるかきいてみよう。大まかな町の位置も知りたいしね。あ! それに武器と防具も買わなきゃだ。
明日の予定もたったことだし晩ご飯にしよっか、とショッピングを使ってふたりで買い物。
『トマトとリンゴを買うのだ』
ルビーさん、手が使えなくなったもんだから、品物を咥えては私の持ってるカゴの中にポイポイ入れてる。
「何食べようかなあ。時間も早いことだし、ちょっと手のこんだもの作ろうかな」
♬シャリーン♬
沢山買っちゃった。よーし!作るぞ!
まずは、お大根を薄めのイチョウ切りにして、ごぼうはささがきして水にさらしておく。人参も薄めに切って、しめじは石づきをのける。油揚げは油抜きをして小さく千切りしておいて、蓮根も薄く輪切りに。玉ねぎもスライスして、薄い豚バラ肉も一口大に切る。
あ、ピグモールも残ってたから薄く切って入れちゃえ。
油をひかずに豚バラとピグモールを炒めたら、野菜たちをどばっと入れて更に炒める。焦げつかないように、しっかり炒めたら、水を加えてしばらく煮る。買っておいただし昆布とだしパックを一緒に入れて、沸騰したらだし昆布は取り出して、だしパックはそのまま煮ちゃう。
イオリさんの手抜きクッキング。出汁をとる手間を省いちゃった。
火が通って野菜が柔らかくなったらお味噌をといて、少量のおしょうゆとめんつゆを入れる。万能だよねえ〜めんつゆ。
沸騰しないように少しだけ煮詰めたら完成!
イオリ特製豚汁。具沢山にして、他におかずがいらないくらいの豚汁が好きなんだよね。
『いい匂いだな』
葱を散らして七味をかけてルビーに渡すと『熱いな……』ってぼやきながらも食べてた。私もお椀に山盛り入れて、いただきます。
「お野菜に味がしみて美味しい! ピグモールもボタン鍋みたいな風味が出てていい感じー!」
『これはうまいな。見たことのないものばかり入っているが、特にこの黄色いものがうまいぞ』
え、黄色? そんなものあったっけ。どれ? とルビーにきくと、『これだ』とくわえて見せてくれたものは、油揚げでした。確かに味がしみてて、じゅわーっとして美味しいよね。
けっこう沢山作ったと思ったんだけど、ふたりでお鍋いっぱいの豚汁を全部食べちゃった。うーん、満足ー!
『イオリのおかげで、食べた事のないものが食べられて楽しいぞ』
「ふふふ、おだてたって何も出ないよ」
ホワホワのルビーにもたれかかって、うとうとしてたら『今日は布団で寝ろ』って追い払われた。どうやら昨夜は重くてしんどかったみたい。もたれないから一緒に寝ようとお布団に誘うと、私の隣に丸くなってゴロンしてくれた。
自分以外の寝息があるのって、とっても落ち着く。ルビーを撫でながら、眠りについた。