ルビー、変身。
ダンジョンから出てシバの町へと帰り着いた頃には、もう陽が傾きかけていた。宿屋に戻り、まずお風呂に入った。ブロンドさんが言った通り、宿賃払ってもお金が減らない。これもルビー様のおかげですよ。
お風呂でルビーをわっしわっし洗う。意外とお風呂も好きみたいで洗うのも嫌がらないし、一緒に湯船に入ると気持ちよさそうに浮かんでいる。
「後で部屋に戻ったらステータスの確認してみよっと」
『コートが使えるようになったら、いったい我の姿をどんなものに変えるのだ?』
「悩む所だよねぇ〜どうしようかなあ」
そんな事を話しながらお風呂を済ませた。
ステータスを確認してみると、レベルは11に上がっていて、スキル一覧の中にコートもあった!
「ルビー! 使えるようになったよ!」
『おお! やったなイオリ!』
……でも、何の姿に変えよう? テイマーの思い描いた姿に変えられるんだったら、架空の生き物でも出来ちゃうんだよね。
「ルビーはなりたい姿ってあるの?」
『毛を持つ生き物になってみたいぞ』
「メロウみたいな姿にする?」
『あ奴に似るのは嫌だ』
ふわふわの毛に覆われた生き物ねぇ……。メロウみたいな犬の姿は嫌なんだったら……何にしよう。
「よし。試しにやってみるね」
『楽しみだ』
“コートを使用しますか?”
頭の中で姿を思い浮かべて、はい、と答える。
すると、ポフンと音をたててルビーの姿が変わった。
「犬は嫌だって言ってたから、白猫にしてみたよ。翼もちゃんとあるでしょ!」
『レオパルか、なかなかいいぞ。こいつは魔物しか喰わんからな』
なんだレオパルって。
『綺麗な毛並みだな! 我ながら惚れぼれするぞ』
「気に入った? レオパルっていうのに似てる姿なら町中歩いても大丈夫?」
『うむ、問題ないと思うぞ』
翼を動かしてみたり畳んでみたり自分の毛並みを確認したりで、気に入ってくれたみたいで良かった。レオパルっていう魔物にそっくりなんだって。猫なんだけどな。
「でもこれで問題解決だね!」
『そうだな。面倒をかけてすまぬ』
「いいんだよ! ルビーと色んな町に行って色んなことをしたいって言ったのは私だもん」
ルビーは照れくさそうに笑って、大型犬よりもひと回り大きな身体でベッドに腰かけている私にもたれかかった。
あったかくてふわふわしてて、疲れもあってそのままルビーの体温にのまれるように寝てしまった。