初めてのダンジョン。
翌朝、ステータスを確認するとレベルが6になっていたがコートはまだ使えなかった。朝ご飯を食べながら、ルビーは『今日も行くか』とうきうきしている。
私は、パンをかじりながら昨日のスパンダーを思い出して、ちょっとげんなり。
朝ご飯を終えて、クランの依頼ボードを見に行くとユトさんがいた。
「おはようございますイオリさん、ルビーさん」
「おはようございます!」
『おはよう』
「依頼を引き受けてくださるのですか?」
「コートを使えるようになるまでは、出来るだけ外で戦わなきゃ次の町へ行けないので」
「あ、あぁ……ルビーさんがそのままだと町の皆さんが驚いてしまうからですか」
そのとおりです。
「イオリさん、お時間があるならダンジョンに行ってみたらいかがですか? シバの町から東に出て少し進んだ所に小高い丘があるのですが、そこにダンジョンがありますよ」
『それはいい! 今日はそこに行こうイオリ!』
尻尾をぶんぶん振りながらこちらを向くルビー。
「初級から中級者向けのダンジョンなので、ルビーさんが居たら簡単だと思いますよ」
「行ってみます…………」
余計な事を言ってしまったみたいですみませんとユトさんがこそっと耳打ちしてくれた。私が肩を落としているのがわかったらしい。
ユトさんと別れ、町の外へ。
『東に行くんだったな! さあいこうイオリ』
「私、包丁しか持ってないよ」
『かまわぬ! 我が戦う!』
ルビー、口からチョロチョロ火が出てます……。いつからそんな戦闘狂になっちゃったの!
『紅竜は元来戦闘を好むのだ。大きな体躯のせいで、あまり他のものとは戦いにならなかったが今はどうだ! 我の方が小さい!』
「……頼りにしてます」
任せておけ! と飛び回るルビーの後について、東へ歩いて行く。半時間ほど歩くと丘が見えて、そのふもとにぽっかりと口を開けたダンジョンの入口があった。
『入口に誰かいるぞ』
入口にたどり着くと登録証の提示を求められた。どうやらクランの人みたいで、ダンジョンに入る者を把握しておくためだとのこと。こっそりアイテムインベントリから登録証を出して見せると、すんなり通してくれた。
「門番さんみたいにひと悶着あるかと身構えたけど、何にもなかったね」
『エドがクラン内の者には通達してくれているのだろう』
そんなことより、とルビーは尻尾をふりふりしながら進んでいく。壁や天井は石がゴツゴツしていて所々に光る苔のようなものがくっついているおかげで明るく、足もとはさらっとした砂地で歩きやすい。
進んでいく中で、魔物は出て来るけどルビーが全部倒してくれて私の出番はなかった。ない方が嬉しいからいいけど、ルビーさん、とっても楽しそう。
奥まで行き着くと下りるための階段があった。かわらず尻尾を振りながらルビーは進む。
虫やコウモリみたいな多分魔物をルビーが一瞬で倒すものだから、さくさく進んで、また奥まで行き着いて下り階段があった。わかれ道もなくて迷わないから、私はルビーについていくだけ。
『ここが最下層のようだ。奥に何かがいるな』
気配探知をしてくれたらしい。
そういえばルビーってレベルいくつなのかな?二千年も生きてるんだから、かなり高そう。
『そうだな。……たぶんイオリが驚くほどのレベルだ』
普段の姿からは想像もつかないや。ちょっと天然でトマト大好きルビーさん。
『着いたぞ』の言葉で顔を上げると、簡素な、木で出来た大きなドアがあった。
「何でこんな所にドアがあるの?」
『ダンジョンボスと呼ばれる主がいる目印のようなものだ。どこのダンジョンにも主の手前にはこのような扉があるのだ』
「中にボスがいるの?」
『ああ。この気配は多分ワーウルフだな。我の敵ではない。いくぞ』
足取り重く、ルビーの後ろをついていく……。