ここはどこ、あなたは誰。
私の名前は橋本伊織。26歳のしがないOLで、今日は日曜日で遅めに起きて、洗濯や買い物をする予定……だった。
『して、貴様は何者だ?』
大きな真っ赤なトカゲは私を見下ろして言う。
「橋本伊織と言います……人間です」
俯きながらボソリと呟く。
いやぁ、直視出来ないもん。それにここどこ?! 洞窟みたいな、岩肌がでこぼこしてて鍾乳洞のような雰囲気。とにかく、日本では無さそうだ。
『人間族か。しかし、匂いが違う』
でっかいトカゲがスンスンと鼻を鳴らしながら、私の身体に触れる。
「私を……食べるんですか……?」と震えながら言うと、
『人間族など喰わん』
フンと鼻を鳴らし鼻先が離れた。
離れていく鼻先を追いかけるように目線を上げると、でっかいトカゲだと思っていたのは真っ赤なドラゴンのような生き物だった。
「ドラゴン……?」
『ほう、博識だな。我が種族を知っているのか』
「あの、あなたは誰ですか?そして、ここは一体どこなのでしょうか……?」
真っ赤なドラゴンは、自分には名前が無いこと、私を食べる気は無いこと、ここはエラリア大陸の中部に位置する洞窟の最奥部だと説明してくれた。
だけど、ここがどこなのかはちっとも理解出来なかった。
振り返るとゴテゴテのドアは、何もない空間にぽっかりと居座っていた。開けてみると、私の部屋だ。
「どうなってるんだろう」
『おそらく、召喚術であろう。先日高名な魔道士様とやらがこの近くで召喚術を行っていた。その残りの魔気が扉を形成して、イオリの巣に繋がってしまったのだろうな』
ドラゴンはそう言って、ごろりと横たわった。