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ほうれん草のバター炒め。





 トリシャ様の選んだほうれん草をざく切りにしておいて、熱したフライパンにバターを入れたら手早く馴染ませて、細めのたんざくに切ったベーコンを炒める。ベーコンのいい香りがし始めたら、ほうれん草をどばっと入れて、しんなりするまで炒めたら出来上がり。



『イオリ、いい匂いだな! 葉がそれほどまでに薫るとは!』



 トマトを口いっぱいに頬張ってルビーが言う。



《本当ね! わたしも葉や果実は口にするけれど、焼いて食べるなんて初めてよ!》



『…………』



 トリシャ様も楽しみに待ってくれている、横で、解せぬ! みたいな顔して座っているメロウ。



「出来ましたよ、どうぞ」



 紙皿に取り分け、皆に渡す。ルビーやメロウはそのままで構わないけど、トリシャ様には箸を付けて渡した。案の定使い方が解らないと言われ、教えてみたらすんなり使い始めた。



『これは美味いな!』と、もしゃもしゃ食べているルビーさんだけど、トマトの魅力には及ばなかったみたい。



 トリシャ様もメロウも気に入ったようで、黙々とたいらげてくれた。



《葉がこんなにも美味しくなるなんて……!》



『お身体にご不調はございませんか、トリシャ様』



メロウ、失礼ね。あなたもペロリと食べてしまったくせに。



『そう言うな、イオリ。彼奴もトリシャに従っている身だ。我も、彼奴らと立場が同じならばイオリの事を心配するぞ。違うか?』



「……そうだね、わかってるよ」



 ルビーが、ぶーたれてた私を諌めてくれた。凄く良い事言ってくれたけどね、口の周りべたべただよ。



《イオリ、美味しくいただいたわ。ありがとう》



 これで、私の存在が害をなさない事をわかってくれたのなら、お安い御用だ。



《貴方の人となりも、固有スキルも、仇なすものではないと把握しました。西の町、シバを目指しているのでしたね。シバのクランマスターに貴方の事を声かけておきましょう。きっと、忙しくなりますよ。また会いましょうイオリ。その時はまた、ほうれん草を食べさせて下さいね》



 ふふっと微笑み、トリシャ様は姿を消した。



『ほうれん草、美味しかったわ。礼を言います』



 ぶっきらぼうに、メロウが付け加えた。



「あっ! メロウ! これっ!」



 つい呼び捨てにしちゃってメロウの顔に青筋がたった気がしたけど、毛並みのせいで気づかないふりをした。



「気が向いたら食べてみて」



 P社のドッグフードを手渡した。『何だこの生き物は』とパッケージの犬の写真を見てぼやいていたけれど、受け取ってくれて、そして消えた。



『騒々しい彼奴らだったな』



「そうね、疲れちゃった。今日はもうこのまま寝ちゃおう! もう動きたくなーい!」



 そうだな、イオリが休んでいる間は我が守るからゆっくり寝ろ、と言うルビーの声を聞きながら、眠りに落ちた。





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