表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/109

スミちゃんの憂い。







 イグリスの町は中央にお城があって、それを囲むように家や商店が連なる王道の城下町。町中は人々で賑わっていて活気がある。



【武器の生成に必要な素材が欲しいのです】



 ……昨日買ったくまで用かな? 歩きながらお店があったら見てみようね。



 ルビー達と一緒に歩いていても全然視線が気にならないし、周りの人達もあまり怖がっている様子がない。これだけでイグリスの王様が町を安全に統治出来ている証になる。



『(イオリ、飯屋だ)』



 早い早い。もう少し町を歩こうよ。私、まだお腹も空いていないし。ほらほら、市が並んでるよ! 見て行こうよ!



 レンガ造りの軒並みに、白いテントをかぶせたように道沿いにまっすぐ並ぶ市。人が行き交って凄く賑やか。



「いらっしゃい! その子達にスーリの実はどうだい!? 甘くて美味しいよ!」



「今日もいい天気だね! 朝から仕入れてきたボンボ鳥の肉が新鮮でおすすめだよ!!」



 並ぶ露天の人達が、私達を奇異とも見ずに声を掛けてくれる。見たことのない物が沢山並んでいて、見ているだけでも楽しくなる。



「おねえちゃん、テイマーなの?」



 練り歩いていると、ふと足元の方で幼い声が聞こえた。視線を下げるとそこにはルビーを見上げる5歳くらいの女の子。金色と桃色で左右の目の色が違う、オッドアイだ。



「触ってもいい?」



 ルビーと私を交互に見上げて、手を伸ばしたそうににぎにぎさせている。



「いいよ。ルビーも触らせてあげてね」



『(仕方ないな)』



 フスッと溜め息をついて、ルビーがしゃがむ。背中に居たスミちゃんが驚いているのが見て取れたので、抱き上げた。



「ふわふわね! きれいな毛! おめめも赤くてきれいね!」



 女の子は臆すること無くルビーをなで上げる。動物が好きなのかな?



「こりゃ! ミズリー!」



 人混みをかき分け、僧衣みたいな薄いクリーム色の服を着たお爺さんが走って来た。



「申し訳ない、少し目を離した隙に見失ってしまって……」



「だいじなお話があるから離れていなさいって言ったの、じじ様じゃないー」



 ぶーたれてルビーから離れる、ミズリーと呼ばれた女の子。



「これほど離れろとは言っておらん」



 ペンと頭を叩かれて、更にぶーたれるミズリーちゃん。



「お話していただけなので、ミズリーちゃんが迷子にならずに済んで良かったです。動物が好きなのかな?」



 ミズリーちゃんに問いかけると、にんまりと笑って頷いた。



「あたしね、今しゅぎょうちゅう? なの! じじ様にね、テイマーになれるように教えてもらっているんだよ!」



 まだ就学もしていない齢の子が修行してるのに驚愕。日本じゃ考えられないな。



「ミズリー、まだ行かねばならぬ所がある。迷惑をかけてすまなかった、従伴にもそう伝えてくれ」



「可愛らしい子とお話出来て楽しかったですよ。お引き止めしてすみませんでした」



 そう返すと、お爺さんはにこりと笑って、ミズリーちゃんの手を引き歩き始めた。



「おねえちゃん、ありがとう!」



 振り返りながら手を振ってくれるミズリーちゃん。



【あの子、……】



 スミちゃん、どうかしたの?



【いえ、詮無い事です】



 静かな声でそう呟いて、スミちゃんはそれきり黙ってしまった。







―――――――――――――――――







 市を一通り歩いて、いっぱいお買い物をした。主に食べ物なんだけれど。空腹に嘆くルビー達のために、荷物を抱えたまま従伴OKのご飯屋さんへと入る。



『(腹が減って死んでしまいそうだ)』



 ごめんって。いっぱい食べていいから、ねっ!



『何食べようかなー!』



【……】



 やっぱり元気のないスミちゃん。ミズリーちゃんと会ってから後、一言も喋っていない。素材を買いたいって言っていたのに、それすらも。



「スミちゃん、何かあったのなら教えて欲しいな」



 お膝に乗せたスミちゃんを撫でながら声をかける。



 私を見つめるスミちゃんは、何かを伝えたそうにしているけれど、鈍い私にはそれが読み取れない。



 困った挙句、ルビーに視線を移すと、やれやれと言った表情で話してくれた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ