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グルメな蛇の女王。







「作業のお手はそのままで」



 アイテムインベントリから続々とドロップ品を出しているとリーグレッジさんが声を掛けた。



「あの……あの……大変申し上げにくいのですが……」



 遠慮せず作業の手を止める事なく聴いていると、ぼそぼそと呟くように何かを言った。が、さすがに聞き取れずにリーグレッジさんの顔を見やると何と真っ赤っ赤。



「聞き取れなかったのですが、何でしょう? すみませんがもう一度お願い出来ますか?」



 真っ白い頬をほんのり赤く染めながら俯きがちに、白金に近い髪の裾を両手できゅっと握って再度呟く。



「あのっ!! 私にもっ!! 異世界の、お料理を、食べさせては……いただけない……でしょう……か」



 初めだけ大きな声で頑張っていたのに、尻すぼみに小さくなっちゃって、更に俯いちゃってる。



『主のご飯は美味しいからねー! 大人気だね!』



 ご機嫌さんでばさばさと翼をはためかせているエンリル。羽根が舞うからばさばさしないの。



「えっと、カナンさんからは一体私の事を何と……?」



『(異世界の物で美味い飯を作る異世界人)』



「異世界から来て紅竜と共に旅をしている、美味しいご飯を作る方だと……」



【あながち外れてもいませんね】



 私達以外の3人は、思念通話でくすくすと笑いあっている。



「不躾なお願いで恐縮なのですが、私、美味しい物に目がなくて。カナンが食べさせていただいたお料理のお話を聞いているだけで、もう……あああっ!!」



「わっ!! リーグレッジさん、蛇が!!」



 感極まったリーグレッジさんの腰の辺りから、にょきにょきと蛇の頭が生えてきた。総勢7匹。



「ああぁぁ……あらあらごめんなさいね。私、ナーガの血を引いているもので……」



 この7匹の蛇はリーグレッジさんの従属なんだそう。それぞれに持つ能力が違うんだって。リーグレッジさんの感情に驚いて出て来ちゃったみたい。



「私の世界のご飯を作ればいいんですか? こちらの物を使用して作る事も出来ますよ?」



「私、このイグリスのクランマスターになる前は世界中を放浪していて、様々な料理を食べ歩いていたのです。しばらく旅もしていませんし、新しい味に出会いたいのです!!」



 グルメなひとを唸らせる程のお料理は出来ないんだけどな。至って普通の、おうちご飯しか作れないし。



「私の世界の、一般家庭のご飯程度の物しか作る事は出来ないのですが、それでも構わないのなら」



「ええ! 構いません!! それでは今すぐ――」



 リーグレッジさんがそう言って立ち上がった瞬間、すごい勢いで部屋の扉を開けてカナンさんが飛び込んできた。



「マスター!? 先にお仕事ですのよ! ラブリュス商会から急ぎの仕事を頼まれていますのよ!」



 カナンさんの目が赤い。見ていたのかな?



「うぐぐ……。ラブリュスの仕事は後でも……」



「ダメ! ですの!! いつもそうやってお仕事を放って私事を優先するから、私が後始末しなくちゃいけなくなりますのよ!!」



 小さなカナンさんが、リーグレッジさんよりも大きく見えちゃうくらいの剣幕で怒っている。



「わ、私は声をかけて下さればいつでもお料理を作りますから」



「本当ですか!? それでは先に有事を済ませて参ります!!」



 ばたばたばたっと部屋から走り出して行くリーグレッジさん。あの、買い取り……。



「マスターは思いついたら行動してしまいますの。昨日の夜も、トラクスの街のモルドブルの煮込みが食べたいって言い始めて、飛び出して行ったせいで不在でしたのよ」



 なるほど、いつもの事なんですね。カナンさんのお怒りも解った気がする。



「仕事自体は半日もあれば終わると思いますの。お急ぎでなければ待っていただけますの?」



「はい。その間に町中を散策してきます。後、連泊したいのでお部屋をそのまま置いてもらえますか?」



「了解しましたの。毎度! ですのよ。マスターには夕刻には皆様お戻りになると伝えておきますの」



 とってもいい笑顔で部屋を出て行くカナンさん。リーグレッジさんが仕事しているのが嬉しいんだろうなぁ。管理職って大変だ。



『(話はついたようだな。飯を食いに行こう)』



【この町のお食事はどんなものが食べられるのでしょうか】



『ごっはんー! ごっはんー!!』



 さっき朝ご飯食べたばっかりじゃないの。町中を歩いてみて、美味しそうなご飯屋さんがあったら入ってみようか。



 賛成!! と一同よりお返事がもらえたので、とりあえずはクランを出て町へ出てみる事にした。







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