祭りの後。
泣き止んで落ち着いたカナンさんに、私達の旅の理由を説明した。もちろん、モーリーさん達の事も。
『確実に、と言えるわけではないのだが、可能性は高いと思うぞ』
「村を出て、色んなヒトが集まるクランに入れば色々な情報も手に入れられると思ったんですの。でも、ここ数年はさっぱり情報が無かったんですのよ」
モーリーさんのお話では、お父様達が居なくなった時期をはっきりと聞けなかったけれど、最近の様子な語り方では無かった気がする。うう、ちゃんと聞いておかなかった自分に腹が立つ。
『モーリーにホワイビーを貰っていたであろう』
ほわいびー? ……あ! 別れる時に緊急連絡用にいただいたあの透明な石!
『そもそもモロクの近くのダンジョンでドロップしたものを、イオリがせっせと拾っていたではないか』
モロクのダンジョン? ああああ!! あれだ! 蜂のやつ!
『それがホワイビーだ。群れで襲ってくるから中々ドロップしても回収しづらいゆえに高価なのだ』
そうとも知らずに高価なのに受け取っちゃってたよ。解ってたんなら教えてくれたっていいじゃないの。
これさえあればモーリーさんに連絡が取ることが出来る。
「共に行方不明になったという方の風貌も、訊いてもらって構いませんの?」
「そうですね。モーリーさんのお父様より、召喚術を使っていたひとの情報が欲しいですよね」
ルビーが一番最初にエンカウントしているんだから、ルビーが見ていたら話は早かったんだけどね。仕方ないよね、引きこもりさんだものね。
『……』
ひとまず、モーリーさんにお父様達が行方不明になったのは何年前か、一緒に居なくなった人の風貌を教えてもらうようにホタルを飛ばした。
『焦ってもすぐには返事は来ないだろう。今夜は休むぞ』
「だめですのよ! 私の肴はどこですの!?」
おおっと、まだ飲む気ですかカナンさんっ。
「買って来てますよ。ほら、ビーフジャーキーとミックスナッツ、それと乾き物ばかりもあれなので、ちくきゅうをしようと思って鱧ちくわときゅうり!後は燻玉」
『ちくきゅうとは何だ』
別のが食いついた……!!
「ちくきゅうって言うのはね、このちくわっていう食べ物に、この緑のきゅうりって野菜を丸ごと差し込んで、輪切りにして食べるんだよ」
「この干し肉、味が濃くて美味しいですの!」
夜中なのに賑やかすぎる。それでも起きないエンリルとスミちゃんを心から尊敬するよ。
きゅうりの皮をしましまに剥いで、薄く塩をすり込んだものを鱧ちくわにぶっ刺す。昔、四国に住んでいた友達から教えてもらったちくきゅうの作り方。関東の方はきゅうりを細く切ってから差し込むからね。
鱧ちくわがはち切れそうなほどにきゅうりが詰まって、輪切りにしても歯ごたえも食べごたえもある一品に仕上がるって寸法ですよ。マヨと七味を添えて出来上がり。
『む、これは瑞々しいな。色んな歯ごたえがあって楽しいぞ。そして美味い。まよねーずも合う』
「本当ですの。海の物の匂いがしますのに、姿もない不思議な食べ物ですの。この赤い粉が辛くて美味しいですの」
辛い物がお好きですか。イメージ的に鬼といえば辛い物好きな感じだもんね。
燻玉は市販品。半分に切って、これまたマヨと七味を振って出来上がりのお手軽おつまみ。
さて、これだけあったらお酒が無くなるまで保つでしょう!
「カナンさん、ゆっくり飲んで食べてくださいね。私は汗を流してきます」
「ありがとう、ですの。久しぶりに楽しいですの。感謝しますの」
少しでもカナンさんが楽しいと思えて良かった。ルビーに晩酌のお供を頼んで、ゆっくりとお風呂に入った。
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……お風呂から出てきたら、とんでもない格好で二人とも床で転がっていたのは言うまでもなく。
ルビーはいいとして、カナンさんをベッドまで運んで(見た目も小さいんだけれど、物凄く軽くて驚いた)、宴会の後片付けをしてから私も眠りについた。
酒臭いルビーのお腹を枕にして。