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肉だらけの宴会。







『(まっ、まだ喰わぬのか?)』



 テーブルにずらりと並んだご飯を前に、待ちきれない様子のルビーさん。もう少し待ってね、カナンさんが来てからね。



 そうこうしていると、バタバタバタッと大きな足音をたてながらカナンさんがやってきた。



「お待たせしました! ですの!」



 汗だくのカナンさんが飛び込んで来てテーブルを見た瞬間、大きな目がクワッと開いたのを私は見た。



『やっと来たのか。さ、早く喰うぞ』



「お疲れ様です、カナンさん。これ、飲めますか?」



 キンキンに冷やしておいたビールグラスに、これまたキンキンに冷えたK社のラガービールを注ぐ。



「冷たいですのね。エールですの?」



 グラスを手に、恐る恐る口をつけるカナンさん。一口飲み込むと、声を掛ける間もなくのどを鳴らして美味しそうに飲み干してしまった。



「……ぷはあっ!! あー美味しいっ!!」



 ふるふると身体を震わせ、泡ヒゲをつけて叫んでいる。お口に合ったようで何より。お替わりどうぞ、と注ぐとカナンさんの顔がふにゃっとほころぶ。



「お料理にも合うと思うので、食べながら飲んでくださいね。でも早く食べないと無くなっちゃいますよ」



 テーブルの上の料理を、一心不乱に食べるルビー達。



「ああっ! 私も食べますの!!」



 大家族で食卓を囲むとこんな風なんだろうなあ。



『イオリ! このとまとと白い物を挟んでいる、これが美味いぞ!!』



『主! 僕の選んだ緑色のこれ! ぴりっとして美味しいね!!』



【……!! ……!!】



 ルビーは口の周りべったべただし、エンリルはくちばしいっぱいにししとう詰め込んでるし、スミちゃんに至っては言葉もなく、小さなおててにカプレーゼとエビフライとミルフィーユカツに唐揚げを一個ずつ持って食べているし……。



「この薄い肉、少し生でジューシーなのにしっかり肉の味がしますのね」



 ローストビーフをしげしげと眺めるカナンさん。美味しそうに頬張ると、またふにゃっと顔をほころばせる。



『娘、これも喰ってみろ。何とも芳しいオイルがかかっていて肉の味が引き締まるぞ』



 唐揚げのネギソースがけね。珍しくルビーがカナンさんにおすすめしている。おネギとごま油がいい味出してくれているんだよね。



 トンテキも市販のトンテキソース使ったけれど少し甘めで美味しい。白菜とキャベツと人参のサラダもラペっぽくしておいたからルビーも嫌がらずに食べてくれているし。今日の肉フェスは大成功かな。



「どれもこれも美味しいですの! 冷えたエールも肉にぴったりで止まりませんの!!」



 ビールも6缶パックを買っておいたのに、もう飲み干している。追加でこっそりワンクルーに頼まなきゃかもなあ。



【私もあれを飲んでみたいのです】



 スミちゃんが、カナンさんを見て呟く。じゃあ追加で買っちゃおうか。私も少し飲みたいし。あんまりにもカナンさんの飲みっぷりがいいものだからつられちゃう。



 エールの方が飲みやすいかな、と思って同じK社のエールも一緒に購入した。



【香りがとっても良いですね。こちらの世界のエールとは違った香りがします。甘い良い匂いです】



「本当ですの」



 女3人、グラスを手にエールを飲む。この絵面である。



「まろやかですの! さっきのものは苦味もキレもあってゴクゴクいける喉越しが最高だったのに比べて、こちらはじっくり飲めそうな味ですのー!!」



【初めて飲みました……美味しいものなのですね……!!】



 日本でエールが流通しはじめてまだ日が浅いせいもあって、私はどちらかと言えばビールの方が好きだなぁ。



「ラガーはこちらでは使用していないのですか?」



「主にエールが好まれますの。ラガーは作るのに時間がかかりますの。そのぶん高価なもので、貴族や上流階級のヒト達は好んで飲むと聞いていますの」



 エールは短時間で作る事が出来るんだっけ。ラガービールも、無くは無いんだね。ちょっと飲んでみたいな。



【イオリ様?】



 カナンさんと酒談義していると、エールを飲んでいたスミちゃんが問いかける。なあに? ……って、スミちゃん!?



【目がまわります~】



 緑色のはずのスミちゃんの身体が、うっすらピンク色になってる!! よ、酔ってる!?



「あら~、ネームドですのね。生命に危険はないですの」



 千里眼ですか。カナンさんが危険がないというなら大丈夫でしょう。スミちゃんをお膝に乗せて、濡らしたタオルを頭に置いてみた。



 結局、お料理が全て無くなってしまうまで、宴会は続いたのでした。







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