現世と異世界はドア一枚。
ある朝、目が覚めると部屋のドアがギンギラギンに光り輝いていた。
いうなればベルサイユ宮殿あたりに在りそうな、装飾がたっぷりついたドアだ。
だがしかし、ここは私の部屋だ。寝起きのぼけた頭でぐるりと周りを見渡してみる。うん、変わりない。じゃあ……夢?
ドアに近づき触ってみるもゴテゴテとした装飾は手に確かな感触がある。私は一人暮らしだし、部屋のドアを替えるなんて連絡は大家からも来ていない。
「開けてみるか」
キィー……
『何だ貴様は』
バタン!!!!!
何か居た! 何か居た!! 何か居たーーー!!!
でっかいトカゲみたいな……! 真っ赤な鱗に真っ赤な瞳のでっかいトカゲ!!!!
『貴様は何者だ』
ドアを背にしている私を押しのけるように、向こう側から開かれ、真っ赤な鱗に覆われた鼻先が覗く。
どうしようどうしよう、爬虫類だよ、でも真っ赤だよ! 見た事ないし、そもそも喋ってるし!
何も応えずドアを全力で閉めようとしてみるも、びくともしない。女の全力なんて、たかが知れている。
真っ赤な鼻先は、しいて気にもとめずに続ける。
『まあいい、こっちへ来い』
大きな口にパクッとくわえられて、いとも簡単に私はそのドアをくぐってしまった……。