#3 可能性の卵
『【死之狂乱Lv1】:
スキル使用者は死んで塵と化す。
その塵に触れた生物は強制的に”死之狂乱”をスキル取得し発動させる』
なんでこんなスキルがあるんだ?
これって世界を滅ぼしかねないぐらい凶悪だよな。
「あー、そのスキルは勇者に追い詰められたバカ魔王が発動したやつね。勇者一行も塵になったし、最悪なことに風下方向の近くに大きな国があったからそのまま連鎖して世界から生物が消えたのよ」
こんなスキルまで候補に入ってるのかよ。
持っているだけでテロ扱いされそうだから取らないけど。
*****
俺たちは長時間かけてスキルのほぼ全部に目を通した。
途中から女神にお気に入り機能をタブレットに付けてもらい、欲しいスキルをかなり絞り込んだ。
その中には定番チートっぽいものもいくつかある。
『【スキル強奪ⅠLv1】:
身体接触をしている対象者から小さい確率でスキルを奪うことができる。
対象者にはスキル使用時に強い不快感を与える』
みんな大好きスキル強奪くん。
なぜ名前に数字が付いてるかというと、別のスキル強奪と被っているためだそうだ。
PCで新規ファイルつくるときの『新しいファイル(2)』みたいなやつだ。
実際、数字だけしか違わないがスキル能力はそれなりに変わる。
『【スキル強奪ⅡLv1】:
使用者に対して強い信頼を持っている対象者からスキルを奪うことができる』
正直条件のせいでいまいち魅力的でない。
【スキル強奪Ⅰ】は小さい確率で確実性に乏しい。さらに、敵に不快感を与えるのでこっそり奪うことも出来ない。敵を毎回気絶させたり、魔物のみ使用とかにすれば使えなくもないが。
【スキル強奪Ⅱ】は良心が死ぬ。魅了状態にすれば敵対者からでも奪えそうだが、確しかな情報がない。女神に聞いても“分からん”という返事しか返ってこない
もしかしたら見ただけでスキルを奪えるようなものもあるのだろうが、願いの範囲を超えてしまうんだろう。さすがにそれは強すぎるしな。
ちなみに、貰えるスキルを1個にしていいから強力なものをくれと女神に打診してみたが拒否されてしまった。魂の移動と同様に神様界のルールでもあるんだろう。
ただ、注意深く見ていくと強力なスキルをいくつか見つけた。
例えばこれとかだ。
『【万象適性Lv1】:
あらゆることに対して、適性をもつ』
短い説明だが、地味に良い。
このスキルを持って練習すれば剣術や魔法や料理を覚えることができるはずだ。
異世界スローライフにぴったりなスキルだと思う。
特に、魔法使いにとって適性というのは大事だ。
まぁネット小説からの知識だが。
しかし、俺はさらに強力なスキルを見つけた。というか、このスキルのすぐ下にあった。
『【万象天性Lv1】:
あらゆることに対して、天性の才能を発揮することが出来る』
明らかに【万象適性】の完全上位互換だ。
水泳に例えるなら、【万象適性】が一般人より早く泳げるレベルの才能だとすると、【万象天性】はオリンピック選手のトップレベルとかだろう。
つまり、世界を変えうる才能を得ることが出来る。
しかも、すべてのことがらに関して。
このスキルをリーフィアに見せたら驚嘆の声をあげながら『取りましょう! 取りましょう! 絶対取りましょう!』と騒いできた。
おう、もちろん取るさ。
なんでこれが望みの範囲外じゃないのか気になるが、ありがたく貰おう。
女神に色々と質問したり、リーフィアと話し合ったりして欲しいスキルを5つまで絞り込んだ。
「じゃあ、欲しいスキルを買い物かごに入れて、お会計ボタンを押して」
なんでネットショッピング風なんだ。
お会計ボタンを押すとシステム音声が流れた。
《【固有スキル:万象天性Lv1】を取得しました》
《【固有スキル:強者降臨の贄Lv1】を取得しました》
《【固有スキル:マギレロベンの肉体Lv1】を取得しました》
《【固有スキル:天上界Mリリス通信鍵Lv1】を取得しました》
《【固有スキル:佐門のサモンLv1】を取得しました》
どうやらあの世界では全てのスキルを10段階のレベルで表記されるそうだ。
なんで”Lv1”ばっかりかというと安全のためらしい。
このスキルレベルはスキルの熟練度のようなものである。
実際のスキル熟練度0の俺がいきなり”Lv10”のスキルを使うと、予期しない不具合が起きるかもしれないとのこと。
わざわざ危険な賭けをするほどでもないし、【万象天性】がスキルレベルを早めてくれると思っているから気にしないことにした。
とりあえず上からスキルの説明をするか。
1番目はチートオブチートの【万象天性】だ。
このスキルを持っていると様々なスキルが取得しやすく、さらにスキルレベルの上昇が早くなる。
ちなみに、このスキルが目覚めた者はその世界で英雄となったそうだ。そりゃあそうだよな。
歴史上の偉人であるレオナルド・ダ・ヴィンチさんもこのスキルを持っていたんじゃないだろうか。
芸術だけでなく科学にも精通しているうえに身体能力も高かったそうだしな。
2番めは【強者降臨の贄】だ。
『【強者降臨の贄Lv1】:
1日に1回だけ死体から一定度の能力を奪うことができる』
一定度とあるが、スキルレベルに応じて上がっていきLv10にもなると全て奪えるそうだ。
ちなみに説明にある能力とはスキルだけでなくステータス値も含まれる。
元々、このスキルは別の世界の邪教が使用していたもので、死体からすべての能力を奪えるうえに1日に1回などの制限はなかった。
さらに、奪った能力を他人に与えることもできたそうだ。
この世界用に変換されたときにだいぶ内容が変わってしまったんだろう。
ただ本来は複数人で長い儀式を行う必要があるらしく、その部分が不要になったのは僥倖だ。
これと似たようなスキルに【虚奪の魔眼】というものがあった。
『【虚奪の魔眼Lv1】:
見ている対象者から徐々に能力を奪っていく』
最後まで【強者降臨の贄】か【虚奪の魔眼】で悩んでいたが、結局は前者にした。
次に選んだのは【マギレロベンの肉体】だ。
『【マギレロベンの肉体Lv1】:
優秀な身体能力と強靭な生命力と精神力、強い耐性をもつマギレロベンの肉体を得る』
このスキルはまずステータス値の大きな底上げが望める。
単身で猛獣と張り合えたり、生身で武装した兵士2,3人を相手にしたりできるそうだ。
【強者降臨の贄】が軌道に乗るまでは弱い人間のままだからな。
序盤の弱いステータス値をこれで補ってもらう。
しかもそれだけじゃない。このスキルはHP高速回復とMP高速回復の恩恵も得られるうえに、各種状態異常に対する耐性もある程度貰えるそうだ。
さらに、疲労を感じにくくなり不屈の精神も得られる。
まぁこれらのおかげで訓練の量を増やすことが出来るというわけだ。
というか、スキル詳細にそのことを書いて欲しいと思った。
ちなみにマギレロベンというのは、とある世界の貧民街で暮らしていたある青年の名だ。
マギレロベンは病気の妹がおり、万病に効く薬を探すために秘境、魔境、深山幽谷と様々なところで探しまわった。
時には、酸が天井から垂れてくる洞窟や、毒沼が存在する森林を身ひとつで踏破し、その過程で肉体は環境に適応するために変異した。
最終的には盗賊に剣で斬られても血が一滴も出ないほど強化されたようだ。
その話を聞いた貴族はいたく感心したらしく、偉業……というか化物っぷりを本にして広く知らしめた。
それ以降、その世界の兵士の訓練時では「マギレロベンの肉体を手に入れろ!」という言葉が飛び交っているという。
この話を女神から聞いたリーフィアはとても感激してた。いい子だなぁ。
次は【天上界Mリリス通信鍵】というファンタジー感が薄れるスキルを選んだ。
『【天上界Mリリス通信鍵Lv1】:
天上界にアクセスし、管理系魔生物リリスとの通信権限を得る』
最初は意味が分からすぎて無視していたが、女神の説明を聞いて取ることにした。
能力の詳細がSFチックだが、実際にSFっぽい存在である。
なんでも、このMリリスというのは世界1個分のスペースを使って魔法で創られた知能生物らしい。
スケールがでかすぎてまるで意味がわからない。
Mリリスは自分で他の世界から様々な情報を集め学習し、真の理を見つけることが最終目標とのこと。
そして【天上界Mリリス通信鍵】を使うと、その集められた情報を知ることができる。
情報を一方的に得られる手段というのは大切だ。貴族の弱みを握るとかな。
『【佐門のサモンLv1】:
印をつけた物、あるいは生物をどこからでも召喚することができる』
ただの駄洒落じゃねーか。……だけど能力はそこそこいい。
そもそも俺とリーフィアは一緒にいないと戦力がかなり低下するうえに、正直に言って俺の精神に支障をきたす。
つまり、リーフィアをいつでも呼び出せるようになりたいという思いで選んだ。
ストーカー的な思考っぽいがリーフィアは喜んでくれているので問題ない。ないったらない。
過去には【佐門のサモン】を使用した異世界間の召喚も確認されているらしい。
説明文に”どこからでも”と書くだけの信頼性はある。
結界などで妨害されても無事に作用してくれるはずだ。たぶん。
ちなみに、この佐門が何かというのは謎だ。
単純に考えるとこの能力を開眼した者の名前だと思うが、そうではないらしい。
なお女神に聞いても佐門さんの正体は不明だという。
女神の世界でも七不思議の一つとして数えられていて、しきりに研究が行われているそうだ。
女神界も相当暇なんだな。
「う~ん、いい感じにチートだねぇ」
「チートですねぇ」
女神とリーフィアが感嘆とした表情で俺のスキルを見る。
「今は強い人間程度って感じだけどな。最初は出来るだけ目立たないようにしたい」
マギレロベンさんの肉体と俺・リーフィアとのペア補正値がどれだけ仕事してくれるかが重要だな。
「じゃあ、もうそろそろあそこに戻る?あぁ、ちなみにまた私の祝福はまだ残ってるからまたゲームに参加できるよ」
「誰がするか」
「ふふっ……どうだろうね。私の勘だとまた来る気がするけどね」
俺かリーフィアがどう足掻いても死にそうになったら来るかもしれないな。
「今ならあの魔物も倒せるだろうし、期待して見守っているよ」
「あぁ、女神を恨んだときもあったが結果的にリーフィアに出会えた。感謝しているよ」
「それは良かった。じゃあね~」
部屋中に光が溢れ、手を振ってる女神の姿が消えていく。