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閑話 女神サイド3-2

今回短いです。

 そして3柱の女神はウェイガンとキュルケの元へと辿り着いた。


 目の前には2柱の神の愛の巣・・・と言うには少々無骨な建物がある。


 扉に付いた少しゴツいノッカーを強く叩くと、サスティナは声を上げる。


「ウェイガン! キュルケ! サスティナよ! ナシスとルシエントと共に会いに来たわ!」


 そうして暫らくすると扉が開かれウェイガンが出迎える。


「やぁ、サスティナ。直接会うのはいつ振りくらいだろう? 何か用かい? 申し訳ないんだが今取り込んでいるんだ。大した用が無いならまた今度にして貰えないか?」


 出迎え早々、さっさと帰れとせわしなく話すウェイガンにサスティナも一瞬呆気に取られるが、気を取り直して話をする。


「いつ振りだったかは覚えていませんが、それにしても会って早々慇懃無礼にも程がありません?」


「すまない。本当に逼迫しているんだ。下手をすると一地方が不毛の大地になってしまうかもしれない程の緊急事態だ」


「なんですって?!」


「それを詳しく教えて」


 驚くサスティナに事態を詳しく知ろうとルシエントが口を挟むと、ウェイガンも諦めたのかサスティナ達を家に招き入れた。


「さて、それでは何から説明するべきか、そうだな。まずは事の始まりから説明するとしよう・・・」


 そう前置きしてウェイガンは楽太郎がダンジョンで行った事の説明とそれが齎すであろう事態を説明した。


「そ、そんな事になっていたなんて・・・」


 サスティナは驚愕するが、ルシエントは冷静に状況を分析し判断する。


「・・・でも、楽太郎さんが行ったことは違反ではない。違う?」


「そ、それはそうなんだが、そのまま続けられても困るのだよ。だから彼にお願いをしたいのだ。もしくは私達が用意できるものであればそれらを提供する事を交換条件にする等して色々と交渉してみようと思っている」


 ルシエントの的確な突込みに対しウェイガンは言葉を詰まらせるが、それを踏まえた上での今後の行動方針を説明する。


「それで神託を行ったけど相手は神託を受け取る事すら拒否している。と、そう言う事か?」


 ナシスが的確に突っ込みを入れ、ウェイガン達の思惑が外れた事を指摘する。


「そ、その通りだ。恥ずかしい話だが、神託そのものを拒否された事が今までなかったのでね、早急に繋ぎを付けようと今神託を受けられる素質を持つキュルケの信者(こども)に山並 楽太郎に我々の神託を受けるように伝えて貰おうとキュルケが神託を下している所なんだ」


 そう言うウェイガンの言葉にサスティナ達の表情が一瞬固まるが、サスティナは主導権を掴むために言葉を紡ぐ。


「それについてなんだけど、先日彼に干渉する事は異世界の神から禁止されたという知らせは届いていたわよね。ウェイガン?」


 その言葉に更に顔を引き攣らせたウェイガンが答える。


「あ、あぁ、確かに受け取っているが、今回の事は直接干渉する訳ではない。あくまでも対話を通しての交渉(・・)を望んでいるだけだ」


「一方的な呼びかけは直接的な干渉では?」


「うぐっ・・・た、確かにそうかもしれないが、これは想定外の非常事態なんだ。正直、相手が彼でなければ下界に顕現して即座に止めに入る事案なんだ。対話をする位は許されると考えている」


 ルシエントに端的に指摘されるが、ウェイガンも自分が管理する領域の問題なので引けない。


 サスティナは考える。

 確かにウェイガンの言い分は尤もであり、この場合、対話程度であれば問題ないと見過ごされる可能性は十分に高いと言える。

 しかし、この件を切っ掛けにウェイガン達と楽太郎が手を結ぶなんて事になったら自分たちが動き難くなる。


 そう考えるが、この世界の安定を考えるとウェイガンの主張は尤もだ。

 ウェイガン達の動きを止める方法は無いかと考えるが正当な方法では何も出てこない。


「確かに貴方の論理に矛盾はなく、世界運営に於いても必要な事だと思います」


 サスティナは反論する事は諦め、一旦引くことにする。


「理解して貰えてうれしいよ」


「ウェイガン。直接的な干渉をすることには変わりない。楽太郎さんも今はダンジョンから引き揚げている。対話をすることは一旦中止して異世界の神に伺いを立ててからでも遅くないのでは?」


 ルシエントがウェイガンに更に突っ込みを入れる。


「た、確かにそうだが、直接対話するまでの行程(プロセス)に時間が掛かる。だから異世界の神に伺いを立てる事を並行して行えば問題ないと考えている。どうだろうか?」


「・・・ウェイガン。貴方は異世界の神に面識は?」


「ない」


「どうやって伺いを立てるつもり?」


「それは・・・! 君達にお願いしたい。君達は面識があるだろう?」


「「「嫌!」」」


 ウェイガンからの返事に3柱の女神は即座に拒否する。

 その勢いに気圧されるウェイガンだが、切羽詰った状況なので理由を尋ねずにはいられない。


「すまないが、どうして断るのだ?」


 暫し沈黙した後、サスティナが答える。


「私達は彼らに負い目があるからよ」


「負い目?」


 負い目とは何かを考えた時、ウェイガンはサスティナ達が異世界の勇者召喚を行って悪神堕ちしかけた話を思い出す。


「例の件か・・・」


 その言葉にサスティナ達の表情が強張るが、ウェイガンはさして気にしない。


「それならば仕方ない。異世界の神に伺いを立てる事は出来ないが私はこのまま対話する方向で動かざるを得ない」


 サスティナ達は一様に「どうする?」と視線でお互いが訴えるが、どうにもできない。


 ウェイガンはあくまで世界運営上の問題に対応しようとしているだけだ。異世界の神への対応については同じ立場である自分達が断ってしまった。

 これではウェイガンに否と言う事ができそうにない。


「そうね、貴方の動機は尤もだし、今回は問題ないと思うわ」


 そう答えてサスティナはナシスとルシエントに視線を合わせると肯定するように頷きが返ってくる。


「貴方達の動機もわかったことだし、私達はお暇させて頂くわ。キュルケに会えないのは残念だけどお互い忙しい身だから仕方ないわね」


 サスティナがそう言うと、ウェイガンが誰にも見られないようにホッと一息吐くが、すぐに言葉を紡ぐ。


「そうか、キュルケは今手が離せないからな。確かに残念だ」


 そう言うと立ち上がったサスティナ達に続き見送る為にウェイガンが玄関先まで後に続く。


「それではお邪魔したわねウェイガン。また逢う日を楽しみにしているわ」


「あぁ、こちらこそ待っている。サスティナにルシエント、ナシス。君達の未来に幸有らん事を祈っている」


 そう言って笑顔で別れの挨拶をするウェイガン。


「また・・ね」


「あぁ、またな」


 それに対し残りの2柱の女神が言葉を返すとサスティナ達はウェイガンとキュルケの家から離れて行く。


 それを見送り、ウェイガンは一人ごちた。


「ふぅ、何とか誤魔化せたな。楽太郎と対話するのはそれだけが理由じゃないんだよ。

 私も男だ。望みが叶うチャンスが目の前に来ているんだ。そんな機会(チャンス)は逃せない」


 そう言って何かを決意した表情になるウェイガンだが、いつの間にかこちらを振り返っているルシエントに気が付きギクリとする。

 そして慌てて作り笑いを浮かべ直す。


 何かを気付かれたかもしれない。

 やはり事は急を要するようだ。


 ウェイガンは早急に事を運ぶ事を決意した。


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小説家になろう 勝手にランキング
ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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