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第75話 堀りの稼ぎはおいくら?

 とりあえずダンジョンから戻り、宿屋で死んだように眠った後、新たに手に入れた金属ゴーレムを街の外で解体して適当な大きさに切り分けてボコポの工房に持って行った。


「ラク! お前ぇこの魔銀(ミスリル)をどこで手に入れた?」


 俺が渡した魔銀ミスリルを調べていたボコポが、眉を(ひそ)めながらこちらに問いかける。

 何か不味かったか?


「一応ダンジョンで手に入れたんですけど、どれくらいの価値があるかわからなかったんで本職に聞いてみようと思い持って来たんですけど?」


 ちょっと特殊な入手方法だが俺の言葉に嘘はない。


「ふむ、この量の魔銀が手に入るなんて聞いた事も無ぇんだがな・・・」


 そう言って腕を組んで考え始めるボコポ。

 いやいやいや、俺はこれがどれくらいの値段になるか知りたいだけなんだけど?!

 出所を推測しているのかもしれんが、素直には答えられんよ。


「何を考えているのかわかりませんが、どれ位の価値になるんです?」


 そう聞くと、思い出したように表情を変える。


「おっと、すまねぇな。そうだな、これだけの代物だ。ちょっと待ってろ!」


 そう言ってボコポは工房の奥へと姿を消し、次に現れた時には大きな秤を持っていた。


「こいつで重さを量るぜ!」


 そう言って秤を床に置き、水平になる様に調整するとその片方に俺が渡した魔銀の塊を載せる。

 次に秤のもう片方に重りを載せて重さを量る。



「ふむ・・・こいつは凄いな。75kgもあるとは・・・」


 ボコポはそう独り(ごち)る。が、俺としては金額が気になる。

 ボコポは量が数字で明らかになると、うっとりした表情で魔銀の塊を見詰め続けている。

 正直むさ苦しいオッサンのうっとり顔なんて見たくないので早々に俺は金額を尋ねる。


「あのぉ、金額が知りたいんですけど?」


「手前ぇ、ちっとはわかれや。こんなお宝滅多に見られねぇんだぞ?」


「いや、俺としては幾らになるかの方が気になるんですけど?

 足りなきゃまた稼がないといけないんですよ?」


「チッ、これだから素人は・・・ まぁ良い、計算してやっから待ってろ!」


 そう言うと渋い顔をしつつも金額を計算して答えを口にする。


「魔銀は今の相場だと1gで金貨2枚程の価値がある。つまり1kgで大金貨200枚だな。

 それでお前ぇが持ってきたこいつなんだが、今量ったところ、なんと75.243kgもあった。

 こいつを計算すると、なんとこの魔銀の塊は大金貨15048枚と金貨6枚になる。

 魔銀は武器の素材としてはもちろんの事、魔術師の杖の素材としても一級品だし、魔導具の素材としても一級品だ。その上、この光沢ある神秘の輝き。装飾品の素材としても重宝されている。

 これを売ればよっぽど馬鹿なことしなきゃ一生遊んで暮らせるぜ?

 お前ぇ、家を買う金が欲しいって言ってたよな? たった数日でその10倍近く稼いだことになるんだ。規格外にも程があるだろ?!」


 ・・・やり過ぎたらしい。正直、俺も何と答えて良いかわからない。


「・・・これ買い取れます?」


「無理に決まってんだろ!

 職人ギルドでも纏めて買い取るのは無理だ!

 こいつを幾つかに分けてそれぞれで売るしかねぇよ」


 ふむ、分けてしまえば売れるのか。


「一応言っとくが、分けたって全部売るには時間かかるぞ?」


 おっと、表情に出ていたらしい。ふむ、そうなると家を買う軍資金が集まらない可能性があるのか?


「まぁ、俺の工房で何とか2kgは買おう。

 職人ギルドでもなんとか10kgは抑えて貰えるように頼んでみるか。

 後は他の工房にも打診してやるよ。

 それと、あんまりお勧めできねぇが商人ギルドにも依頼は出来るぜ。ただ新参だと足元見られがちだから買い叩かれる可能性がある。

 どうする?」


 ふむ、ボコポの提案で一応大金貨2400枚で24億円は手に入りそうだ。

 これなら家を買う資金として十分だろう。あとはボコポの伝手を頼りに必要な所に売れれば良いか。

 商人ギルドはボコポが何か嫌そうにしているから止めておこう。買い叩かれるのも癪だしな。


「商人ギルドは止めておきます。それ以外への販売はお任せしてもいいですか?」


「あぁ、構わねぇぜ」


「じゃぁ、後はボコポさんの手数料(マージン)ですね。どれ位になります?」


「いらねぇよ」


 そう言って断られた。何故だ?


「どうしてですか?」


「どうしてって、お前ぇもう忘れてるのか? 俺は黒鉄(ブラックアイアン)を既に貰ってるだろうが?!

 お前ぇからの借りを返そうにもこれ位の事じゃ全然返せてねぇ」


 なるほど、そう言えばそうだったな。ボコポの意見に納得したのでこれ以上あれこれ言うのは止めた。


「しかし、ラクと関わると面白い事が次々起きやがる」


 そう言って楽しそうにボコポが言う。


「そうですか?」


「あぁ、少なくとも俺は楽しいぜ! 何せ自分の工房で黒鉄製の鍛冶道具を揃えるなんて言う夢みてぇな事が叶うし、入手困難な素材も手に入る。

 それに乱闘場での楽しい闘い(バトル)も出来るしな!」


 そう言って愉しそうな眼つきでこちらを見てくる。


戦闘狂(バトルジャンキー)め!」


「ふははははは! また今度やろうぜ」


「考えときます」


「よし!っと、まぁそれは良いとして、あとは魔銀(これ)を分けねぇとな。

 まぁ、金属としてもかなり硬いから一度溶かして分けるか?」


「あ、それなら幾つかに切りましょうか?」


「そんな事出来るのか?」


「えぇ、まぁ・・・ただ、ちょっとした技を使うのでできれば切り分ける現場は見せたくないんですが、良いですか?」


「こっちの手間が省ける分には問題ねぇ。この部屋で出来るのか?」


「まぁ、大丈夫だと思います」


「なら頼む。終わったら教えてくれ」


 そう言ってボコポは部屋から出て行った。

 大分信頼されてるな。

 そう感じながらも俺は「無限収納」から十文字槍を取り出し、魔銀の加工を行う。

 あまり精密な作業は出来ないが1~2kgの塊に切り分ける事には成功した。


「終わりましたよ」


 十文字槍を片付け、閉まっていた扉に向かって声を掛けるとボコポが入ってくる。


「おう、ありがとよ」


「大雑把ですけどこれで良いですか?」


 切り分けられた魔銀を眺めてボコポが答える。


「あぁ、それ位のサイズなら問題ない。

 重さに合わせて金額を変えれば良いだけだからな」


 そう言うとボコポは魔銀を1つずつ秤で重さを量るといつの間にか持って来ていた小袋に入れて重さを記入していく。


「それじゃ、これで帰ります」


「ちょっと待て、明日なんだが時間空いてるか?」


「え?えぇ、空けられますよ」


「それじゃ明日ラクが買う予定の貴族屋敷を見に行かねぇか?」


「本当ですか?是非ともお願いします」


「それじゃ明日の朝ここに来てくれ、魔銀の方はこっちで進めるから期待しとけよ」


「ありがとうございます。それじゃよろしくお願いします」


 そう言ってボコポの工房を後にした。








 資金稼ぎは思いの外早く終わったのでやることが無くなってしまった。

 本来ならトローナ石を掘る為にダンジョンに潜りたいのだが、昨日あったウェイガンとキュルケの2柱の神からの着信が少し気になった。


 昨日は咄嗟の出来事でゴーレムの死体を持ち帰る事が厳禁なのでは?と考えてしまったが、それだと着信のタイミングがおかしい。

 死体の持ち帰りが厳禁ならばもっと早い段階で着信があるはずだ。

 戦闘中は遠慮したと考えても、ゴーレムを倒した後で次のゴーレムが湧くまで俺は採掘する時間があったんだ。

 俺の行動に問題があるならそのインターバルのような時間に掛けてくる筈で、俺が帰り支度を終えるまで態々(わざわざ)待つ必要はない。


 そう考えると何か他の理由がありそうな気がする。

 こっちの神様については嫌な思いしかしていないからな・・・


 それに普通、神様が交信(チャネリング)するのは自分の信者達に神託と言うかお告げ?をするのが普通なんじゃないか?

 なのに何の関わりも無いその2柱からどうして俺に電話(チャネリング)が来たんだ?


 そこで俺は少し考え、2柱の神が俺に電話で接触を図る理由を考えてみた。


1.俺がサスティナに召喚された事を知って2柱の神から悪魔のダンジョンを攻略しろと言うおはなし(・・・・)


2.サスティナ達からは直接連絡取れないから仲介役になって何やら怪しげな厄介事のおはなし(・・・・)

 ※ 3女神(さんばか)は既に着拒済み。


 俺が思いついたのは主にこの2つ。そして更にそれぞれについて考察してみる。



 1つ目だが、サスティナ達との事を知られてなくてもゴーレム湧きを利用した俺の荒稼ぎの現場を偶々(たまたま)見て俺の強さに目を付けた。

 そして悪魔のダンジョン攻略に俺を駆り出そうと電話してきた。

 うーん。十分あり得そうだ。

 まぁ、俺としては正直、自分の命を掛けてまで知らない神様の言う事を聞く気はないけどね。


 2つ目だが、正直異世界(こっち)の神様の友好関係なんて知らないので何とも言えないが、可能性としては十分あり得る。逆に無いとは言い切れないので警戒は必要だ。

 まぁ、その場合は速攻猿田彦様に通報してサスティナ達には邪神落ちして貰おう。


 あまりにもザックリした考察だが、こうして考えてみると、咄嗟に着拒したけど、その判断は正解だった気がする。

 2番目の場合は邪神落ちしてくれそうなので少し惜しい気もするけど1番目の理由だった場合、嫌な思いしかしない気がするのでやっぱり着拒がベストだろう。


 異世界の神様関係には関わらないのが1番だ。そう結論付けると、俺は溜め息を1つ吐き、『神様からの着信なんてなかった』美味しい御飯を食べて忘れよう。


 そう思い、『山の女将』亭を目指して街中を歩き出した。










 そうして『山の女将』亭の昼食に舌鼓を打っていると、入口から入ってきた女性に声を掛けられた。



「申し訳ありません。貴方様は山並 楽太郎様でしょうか?」


 そう問われて振り向くと、神官服に身を包んだ10代の女の子とその子を警護するように武装した女性が立っていた。

 そして俺は咄嗟に真顔で嘘を吐く。


「いいえ、違います」


「え?!」





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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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