第4話 楽太郎、再び城下町へ
毎日投稿してる人ってすごいですね。
私にはできそうにありません。
林の中でうつらうつらと舟をこいでいると、朝日が昇ってきた。
薄っすらと辺りが明るくなっていく。
俺は伸びをし、柔軟体操を始める。
俺は柔軟体操だけは絶対に欠かさないと心に誓っているのだ。
2度と股裂きの刑なんて受けてたまるか!
そう言う思いを込めてせっせと体操をしていると、林の中から何やら物騒な気配が近付いてきた。
気配がする方をじーっと見つめると、10メートルほど先に犬のような生き物が何処かぎこちない動きでこっちに向かっていた。
とりあえず「鑑定」を使う。
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名前 :-
性別 :雄
年齢 :1
種族 :フォレストウルフ (魔獣)
称号 :-
レベル:3
ステータス
HP : 250/620
MP : 84/84
STR : 245
VIT : 195
INT : 40
AGI : 290
DEX : 75
MND : 165
LUK : 11
特記事項
やばい! これ、マジやばい、素早さが俺の倍以上って事は逃げれそうにない。
怪我してるのかHP削れてるけど、他のステータスも所々俺より上だ。
それでも逃げられそうにない以上、戦うしかないか。 俺は背中に冷たい汗をかきながら「無限収納」から十字槍を取り出すと、意を決して「狼」と対峙するように構えた。
この世界。本当に争いと言うか、戦わないといけない場面が多いんだな。
豆腐メンタルの俺にはキッツイ世界だ・・・
俺は槍を構えたまま「狼」が近づくのを待つ。 そうして構えていると、次第に大きくなる「狼」の姿。
歩く姿を観察していると、狼はどうやら後ろ足を引き摺っているようだ。 これなら本来の機動力は発揮出来ないだろう。何とか勝てるかもな。
そんなことを考えて待っていると、「狼」が俺の槍の範囲の数歩手前で立ち止まる。
んん? 目の錯覚か? 俺は何度か目を擦るが・・・ でかい。 体高は2メートル位か? 体長はおそらく5メートルはあるだろう。
たしか、地球では人間は素手だと犬・猫に勝てない。 ナイフ持ってもそれらと互角程度ってあったけど。
こんなでかいの無理無理。 何処の無理ゲーだよ・・・ちくしょぉ!
と、怒りを爆発させ、「狼」に襲い掛かろうと一歩踏み出した瞬間、「狼」が反転し吠えた。
ん? どゆこと?
と思った瞬間、バレーボール位の石が飛んできた。
慌てて避けると、後方で大きな破砕音が聞こえてきた。
が、後ろは無視して、慌てて飛んできた方を凝視する。
なんか、灰色っぽい人型生物が4匹こっちに向かって走って来てるな。俺はその内の一匹を凝視する。
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名前 :-
性別 :雄
年齢 :1
種族 :オーク
称号 :-
レベル:10
ステータス
HP : 350
MP : 27
STR : 300
VIT : 170
INT : 20
AGI : 60
DEX : 60
MND : 120
LUK : 12
特記事項
オーク・・・ テンプレモンスターと言えばそうだが、レベルが10倍かよ・・・
ガチで脳筋ステータスだが、まだこれなら勝てそうだな。
そう考えていると、また石が飛んできた。
しかし今度は余裕で躱す。
来るのが分かっていれば躱せる攻撃だ。
ふと目の前の「狼」を見ると、こっちを見てニヤッと笑ったように見えた。
こいつ! 俺の気配を察知して戦いに巻き込んだのか? モンスターにモンスタートレインされるって、どんだけだよ・・・
驚いてると、「狼」は俺からわずかに距離を取りながらオーク達の方を警戒する。
俺をオークと挟み撃ちにするのか? それは勘弁だ。そう思うや、俺は「狼」と更に距離を取り、俺・「狼」・「オーク達」は歪な三角形を形成して対峙した。
オーク達は後20メートル程の距離で足を止め、こちらの様子を伺っている。
俺と「狼」はお互いの10メートル程の距離を付かず離れずで、オーク達を警戒して動かない。
その間に俺はオーク達を観察する。
オークのサイズは大体2メートル位で、4匹中2匹が棍棒を持っている。残り2匹は両手に人の頭位の大きさの石を持っている。 因みに顔はやはり豚面だった。 お腹は俺と一緒ででっぷりしているが、剥き出しの腕ははち切れんばかりの筋肉をこれでもかと誇示していた。 なんか、豚の癖にムカつくな。 俺もピザだけど・・・
そんなことを考えていると、オークの一匹が指示を出し、2匹づつに分かれてそれぞれ俺と「狼」に襲いかかってきた。
良かった。オークが馬鹿で良かった。 4匹同時で来られたら死んでたかもな。
ここからは時間との勝負だ。「狼」より先にオーク2匹を倒さないと俺はオーク2匹と「狼」を同時に相手することになる。
俺は気合を入れてオーク2匹に集中する。
棍棒を持ったオークが俺目掛けて突進してくる。
石を持ったオークが棍棒オークを迂回するように回り込みながら俺に近づいてくる。
俺は棍棒オークを間に挟むようにして石オークと反対側になるよう回り込みながら棍棒オークに接近する。
棍棒オークは俺との間合いを一気に詰めるべく足を加速させるが、俺からすると早歩きの様にしか見えなかった。
棍棒オークが俺の槍の間合いに入った瞬間、棍棒オークの喉に一突き入れると、防がれる事もなく、すんなり。あっけなく棍棒オークの喉に槍が深々と突き刺さった。
「え?」
俺は一撃で仕留められるとは思っていなかったので間抜けな声を上げて驚いたのだが、それがいけなかった。
残っていた石オークが投石していたのだ。
一瞬硬直した俺には躱せない。
咄嗟に気功術「硬気功」で耐えるが、踏ん張りが利かず近くの木に叩き付けられた。
痛い。すんごく痛い。のた打ち回りたいのを必死に堪え、石オークを見ると、もう一つの石を投げるモーションに入っていた。
俺は慌てて転がって躱すが、石オークは落ちてた棍棒を拾ってそのまま襲ってくる。
俺は石を躱した勢いのまま数メートル転がり、距離を取ってから起き上がった。
起き上がったが、右腕が痺れて上がらない。槍も叩き付けられた衝撃で手放してしまった。
全く、油断大敵ってやつだ。
こんな状況に追い込まれた自分の間抜けさを呪いたい。
そんな葛藤と恨みを込めた視線を石オークに向けると、石オークは一瞬怖気るが、それを恥と思ったのか、怒りの咆哮を上げ、棍棒を振り上げて俺に突進してきた。
動きが単調で嬉しいねぇ。 俺は突進の勢いの乗った石オークの一撃を左に躱して足を引っ掛ける。
勢い余った石オークは俺の脚を躱せず俯せで転がった。 その隙を逃さず俺は石オークの股間を全力で蹴り上げた。 足に伝わる感触は、車のタイヤを蹴ったような感触だった。 股間超硬い。
石オークは「ぴぎぃぃぃぃぃぃぃ!」と何とも物悲しそうな悲鳴を上げたが、俺はそれに構わず、数回全力で蹴り上げる。
それでも石オークは意識を失っていなかった。時々痙攣しながらも立ち上がろうとする。
なんてしつこいんだ。
俺は石オークが必死で立ち上がろうとして四つん這いになったところで、奴の後頭部に踵を落とした。
その一撃でようやく気絶したようだ。
起き上がらないのを確認すると、俺は自分の槍を探し出し、石オークの首に目掛けて一突きして止めを刺した。
ここで一息付きたいが、先程の教訓を生かす為、「狼」とオーク2匹の方を見る。
「狼」は俺とほぼ同じ戦術のようだが、後ろ足を怪我している所為でスピードが出ず、棍棒オーク2号に攻撃を捌かれているようだ。時々反撃されている。
石オーク2号も時々石で牽制して「狼」の注意を上手く分散しているようだ。
これだと、「狼」殺られるんじゃね?
これも自然の掟だ。 俺をトレインするのは10年早かったな。「ワン公」、お前は「狼」ではない。
もはや「ワン公」だ。 そう心の中で奴をランクダウンさせていると、「ワン公」がこちらに気付いたのか、徐々に近寄ってくる。
このやろう。またしても擦り付ける気か?
俺は近付く「ワン公」から離れるように後ろに下がると、こっちを向いた「ワン公」の瞳が絶望を湛えた様に見開かれた。
そんな瞳を時々此方に向けつつ、必死でオーク2匹と対峙する「ワン公」・・・
・・・なんだろう。この罪悪感・・・
トレインして来たのは奴なのに。 ニヤッと笑ったのに・・・
くそぉ!理不尽だ!
そう思いながら、俺は右手を確認の為、軽く回してみる。
骨には異常無さそうだし、痺れは取れているようだ。
はぁ、仕方ない。「ワン公」め、1つ貸しだからな。
と心の中で呟いて「ワン公」を迂回して石オーク2号の後ろに回り込む。
その後は呆気なかった。
石オーク2号の後ろに回った俺が槍を一閃。 石オークの首を飛ばすと、棍棒オーク2号は「ワン公」の一噛みで敢え無く最期を迎えた。
はぁ、突かれた。いやいや、疲れた。
戦いが終わると、「ワン公」はその場に伏せてしまった。
どうやら後ろ足が限界だったらしい。
「おい、ワン公。これで終わったんだな」
そう質問すると、弱々しく鳴き声が返ってきた。
本当に限界そうだな。
「それじゃ、達者でな」
別れを告げるように声掛けし、背中を向けると悲しそうな鳴き声が聞こえる。
まるで見殺しにしないでと泣き付かれているようだ。
・・・
「はぁ、本当はあんまりやりたくないんだが、仕方ない。おいワン公。ちょっと足触るぞ」
そう言うとこっちの言葉が分かるかのように怪我をしている後ろ足を差し出してきた。
この野郎、調子がいいな。
そう思いながらも、状態を確認する。
骨は折れて無さそうだな。これならイケるか。
そう考え、俺はスキル「気功術」の「活法」を使い「ワン公」の足を治療した。
「活法」と言う術は外気功、つまり大気や動植物等の自分以外の気を取り込み、自分の気と合わせ昇華させることで対象の自己治癒力を極限に高める術なのだが。 俺はまだ未熟なのでこの術を使っている最中は無防備になるのだ。
暫らく治療に集中していると、「ワン公」の足がみるみる治ってしまった。
俺が手を放すと、ワン公も数回足を動かした後、嬉しそうに一声鳴いてオークの元に走って行ってしまった。
何をするのかな? と思ってみていると、オークの胸の辺りに噛み付いた・・・ お腹減ってたのかな?
そんなことを思っていると、残りの3体の胸にも同じ様に噛み付いていた。 あ、帰ってきた。
「ワン公」は戻ってくると、口の中をもごもご動かしてペッっと赤黒い宝石のような石を4つ吐き出した。 なにこれ?
ぼーっと見ていると「ワン公」が吠えて来たので、「鑑定」を使ってみると、赤黒い宝石のような石は「魔石 ランクD」と表示された。因みに価格は「サスティリア金貨1枚 日本円で約100,000円」と表示されている。 相場も分かるとは、「鑑定」ってホント便利だな。
そう考えつつ、「ワン公」が取ってきてくれた魔石を「無限収納」に仕舞う。
これで40万円ゲットか。死にそうな目に合った所為か、安く感じてしまうな。
この世界じゃ、やっぱり命って安いんだろうな・・・ はぁ、やっぱ後悔しか出てこねぇ。
コーラも満足に飲めねぇし。 泣きたいよ、ほんと。
そんなこと考えていると、「ワン公」が鼻先を俺に擦り付けてきた。やめろ、生臭いから。今オーク齧って来たばっかじゃねぇか。
クンクン擦り付けつつ、生臭い息を俺に向かって吐いてくる。
なんつう拷問・・・俺は手で鼻先を制しやめるよう言い聞かせた。
ったく、こいつも怪我が治ったしな、あ、確認してみるか。
俺は鑑定を使ってみた。
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名前 :-
性別 :雄
年齢 :1
種族 :フォレストウルフ (魔獣)
称号 :-
レベル:4
ステータス
HP : 660/660
MP : 95/95
STR : 260
VIT : 210
INT : 50
AGI : 320
DEX : 80
MND : 180
LUK : 14
特記事項
従属 (山並 楽太郎)
レベル上がってるよ。こいつ。 と言うか、特記事項。俺に従属って、手懐けちゃったのかな? 「ワン公」を・・・
「お前、俺が主で良いのか?」
「ワン公」に聞くと、一声嬉しそうに鳴いた。
「そうか、じゃぁ、名前を付けてやるか。名無しじゃ不便だからな」
そう言うとまたしても嬉しそうに鳴いた。 なんか、こう、懐いてくれると嬉しいもんだな。はは。
嬉しくなってくると、最初のニヤッと笑ったように見えたのも、本当は救い主を見つけてホッとしたのかもしれないな。
俺は「ワン公」の顎を撫でた。 ふかふかの柔らかい毛が手を押し返す弾力が何とも言えず、顔がにやける。
「ワン公」も嬉しそうに撫でられている。 正にWinWinの関係ってやつだ。
「ワン公」の見た目はシベリアンハスキーのような模様が白と黒で描かれている。後ろ足が出血で少し赤いが、まぁ後で洗い流そう。
うーん、犬の名前か、犬だしシンプルに「ポチ」かな、いや、なんか当たり前すぎるな。と30分程考えた結果、名前を「インディ」とした。「ワン公」も嬉しそうに受け入れてくれた。
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名前 :インディ
性別 :雄
年齢 :1
種族 :フォレストウルフ (魔獣)
職業 :従者
称号 :-
レベル:4
ステータス
HP : 660
MP : 95
STR : 260
VIT : 210
INT : 50
AGI : 320
DEX : 80
MND : 180
LUK : 14
特記事項
従属 (山並 楽太郎)
最初「ポチ」と付けたら、「ワン公」が悲しそうに鳴くのでやめたのは内緒だ。
さて、後は・・・と、あ、そか、俺もレベル上がってるかもな。
そう思って「コマンド メニュー」を呼び出すと、案の定、レベルが上がっていた。
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名前 :山並 楽太郎
性別 :男性
年齢 :16
種族 :人間(異世界人)
職業 :無職
称号 :-
レベル:7
ステータス
HP : 400
MP : 310
STR : 353
VIT : 334
INT : 471
AGI : 309
DEX : 429
MND : 274
LUK : 194
特記事項
猿田彦の加護
建御雷の加護
サスティナの加護
ナシスの加護
ルシエントの加護
・・・ レベル6上がっただけで段違いにステータス上がってる・・・
ちょっと、既に人間離れしすぎじゃないですか? 猿田彦様?!
暫らく呆然としていたが、起きたことは仕方ないと諦め、というか、俺いつも諦めてばっかな気がするな・・・ などと落ち込みそうになる心を叱咤して今度は素顔でサスティリアの城下町?王都?に戻る事を決意して歩き始めた・・・
誤字や読みにくい文章かもしれませんが、読んで頂けると幸いです。