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第3話 鬼武者 人に戻る

何とか、1日2回投稿できました。

 城門を抜け、城下の町に辿り着いた。

 既に夜更けのようで、どこにも明かりがない。

 辺りを見回すと、日本じゃ考えられない位大きな屋敷があちこちに連なっている。

 建物を見ていると西洋の中世あたりに来たような錯覚を覚える。

 地面には石畳が敷き詰められ、綺麗に区画整理がされている。

 この辺はお金持ちの住処が多いみたいだな。住宅街に用はないので城とは反対方向に向かってずんずん歩いていく。 不思議なことにここまで走ったり歩いたりしているが、全然疲れない。

 ステータスが高いのってこういう効果もあるんだな。


 それから暫らく歩くと、次第に屋敷の大きさが小さくなっていく。

 そろそろ住宅街も途切れるかな?と思ったころ、後ろから数人の集団に声を掛けられる。


「そこの貴様、何奴だ! こっちを向け」


 振り返ると、簡素な皮の鎧と腰に剣を下げた兵士っぽい恰好をした5人の集団がいた。

「俺の事か?」


「そうだが、怪しい恰好だな?貴様人間か?(オーガ)ではあるまいな?」

 なんて失礼な奴だ! と思ったが、よく考えたら、そう見えてもおかしくないか・・・

「俺は人間だ。失礼な奴だな、それで何か用か?」


「用はないが、貴様、ここで何をしているのだ?」

 この人、お巡りさんみたいな人なのかな? ま、適当に誤魔化すか。

「・・・実は、言い難いことなのだが、うーん、どうしたものか」


「むぅ? 人様に言えないようなことなのか?」

 こちらをにらみ、腰の剣に手を掛けようとする。おいおい、何を勘違いしてるんだ。

「いやいや、実は、お恥ずかしながら、道に迷ってしまったもので・・・」


「なんだ迷子か、って、えぇ?ふ、ふはは!」

 その反応がくると思ったから、どうしようかと思ったんだよ・・・俺だって鎧武者に住宅街で「迷子になりました」なんて言われたら笑っちまうだろう。

「・・・恥ずかしいから言い難かったんだよ」

悪態を吐くと更に笑われた・・・


「はは、悪い悪い、久しぶりに笑わせてもらった。俺はハンスという。一応サスティリア城下街の警備隊第7班の班長をしている。そちらは?」

 と問われて、そう言えば、名前どうしよう。この格好なら偽名がいいよね。と適当に名乗る。

「ラーク=エンジョイだ」


「ラークか、良い名前だな、それで、ラークはどこに行くつもりだったんだ?」

 この武者鎧を脱ぎたいんだが、脱ぐとこ見られても困るからな、一旦町の外に出てからにするか。

「街を出ようと思っていたんだが、街門がどこにあるのかわからなくなってな、教えてもらえると助かるんだが?」


「こんな夜遅くにか?」


「出ようと思った時は夕方だったんだよ」


「どんな迷い方してるんだよ。まぁ、街門ならこの道を突き当りまで真っ直ぐ歩いて左に曲がれば着くぞ。だが、今は夜中だから街門は開いていない。どこかの酒場か宿で時間を潰すんだな」


「それをするとまた道に迷ってしまう」


「ははは、それじゃ街門の前で朝まで待つんだな。それと、その鎧は街中で着ない方が良いぞ、警戒されるだけだ」


 そう言ってハンスは他の兵士を伴って去って行った。

 勇者召喚や城の騒動はまだ伝わっていないようだな。

 俺は礼を告げると、足早に言われた通りに道を進んだ。


 暫く道を進むと、大通りに出たようで、道幅が広がりお店っぽい建物が増えてくる。店の連なる通りを横切り、更に進んでいくと、チラホラと明かりが灯り、肉の焼ける良い匂いやアルコールの匂い。それに伴う人の話し声が漏れ聞こえてくる。居酒屋があるのだろうか。 そう思うとついつい足がそっちに向いてしまうが、先立つものがないので肩を落とし諦める。

 よくよく考えると、体感では5年以上ご飯食べてないよ。

 居酒屋付近を恨めし気に眺めつつ先を急ぐことにする。


 そこから更に歩き続けていると、漸く突き当りにでた。というより、外壁に辿り着いたようだ。あとは外壁に沿って左に歩けばいいのかな? と考えていると、路地の奥から悲鳴が聞こえた。

・・・トラブルの予感だが、行かないのも寝覚めが悪そうだ。

 仕方なく声のした方へ向かう。 進むに連れて声が次第に大きくなる。

 数回路地を曲がると、1人の女性を組み敷く2人の男の姿があった。テンプレ臭いねこれ・・・心の中で溜め息をつきつつ、誰何する。


「貴様等、何をしておるのだ!」


「何だてめぇは!って、えぇ?! オーガ?!」


「誰がオーガだ!」

 問答無用で男の顎を蹴り上げる。・・・つもりが、男は蹴られた衝撃で宙を舞っていた。

 もう一人の男が間の抜けた声を上げるが、気にせず槍の石突で蟀谷を叩いて意識を奪う。


 後に残ったのは、襲われていた女性だったのだが、呆然とした表情でこちらを見ると悲鳴を上げる。

 俺は慌てて女性の口を塞ぐ。よく見ると彼女の胸元やスカートがはだけて、扇情的な格好になっている。

 俺は視線を自重するように逸らしてから、落ち着くよう促す。

「静かにしろ。騒ぐな」

 そう言うと、抵抗が一層激しくなった・・・あれ?なんか間違えたっけ?

「落ち着け。何か勘違いしていないか?俺は何もしない。ただ助けただけだ。見た目は怖いかもしれんが、一応人間だ」

 何度か言葉を変えて落ち着くよう語りかけると、少しづつ落ち着いて来たようだ。

「よし、今から手を放すから、大人しくしててくれよ?わかったか?」

 そういうと彼女は縦に頷き、了解する。 俺は彼女の口を塞いでいた手をゆっくりと離す。

 手を離された彼女は涙を流しつつ、こちらを呆然と見詰めてくる。

「そうだ、それでいい。よし、それじゃぁな、お嬢さん」


 そう言って立ち去ろうとしたが、そういえば男二人は・・・と辺りを見るとまだ気絶して伸びていた。

 こいつ等金持ってるかな?

 そう考えると、俺は徐に男達のズボンのポケットに手を入れた。

 暫くゴソゴソやっていると、ナイフや皮袋に入った宝石?みたいなものや皮袋に入った貨幣かな?が出てきた。


 うーん、500円玉みたいな硬貨が3枚と100円玉みたいな硬貨が5枚、10円玉みたいな硬貨が10枚あるが、どんだけの価値があるんだろ?と思ったら「鑑定」が発動した。

 10円玉の方は「サスティリア銅貨、日本円で約100円」

 100円玉の方は「サスティリア銀貨 日本円で約1,000円」

 500円玉の方は「サスティリア大銀貨 日本円で約10,000円」

 と表示された。 なるほど、「鑑定」って便利だ。

 となると、約36,000円ゲットってことか。

 これで飯が食えるな。とホクホク顔で移動しようとすると、彼女と目が合った。

 ・・・

 彼女は、俺の顔を見る ・・・ ゆっくりと俺の手元を見る ・・・ また俺の顔を見る ・・・


 ・・・


 ・・・ 負けた・・・そんな目で見ないでくれ。 俺は大銀貨を1枚指で弾いて彼女に放る。

「それ受け取って帰りなさい」


そう言って俺は元来た道を帰ろうとするが、彼女に呼び止められる。

「待って」


「うん?」


「私、服が、その、やぶれちゃったんで・・動けないんです・・・」

 顔を赤らめながらそう言ってきた。

 あー、そっかそっか。はだけてたんじゃなく破れてたんだね。


「ふむ、そういうことか」

 そういうと、俺はまたしても男共の方へ行き、今度は服を剥ぎ取った。

 もちろんズボンも下したが、パンツだけは勘弁してやった。武士の情けってやつだ。


「お嬢さん。多少汚いかもしれないが、これで勘弁してくれ」

 そう言って男から剥ぎ取った服を投げ渡し、着替えるよう促す。

 彼女が着替えている間に俺は男共を向かい合わせにして縛り上げる。

 結構屈辱的な縛り方をしておいた。因果応報だ。

 彼女の方も着替えが終わったようだ。


「それでは今度こそお別れだ。さらば」

 一方的に手を振って、元来た道を足早に戻る。 付いて来られたら面倒だ。


 それから暫らく歩き続け、突き当りの外壁へ戻ると、左手に曲がり、外壁沿いに歩き始める。

 カシャカシャと鎧を鳴らしながら歩いていると、こちらのペースに合わせるように歩く人の気配を後ろから感じることが出来た。

 誰だ?と思い立ち止まると、サッと隠れる足音がした。

 ・・・


「お嬢さん。何の用だ」

 果して、暫らくすると、返事があった。

「ばれてたんですね」


「人の後を付けるとは、悪趣味だな」

 俺は面倒くさそうに悪態を吐くが、

「ごめんなさい」

 と素直に謝ってきた。

「それで何の用だ?」


「お礼を言おうと思って」


「そんな訳ないだろう? お礼を言うだけなら態々付け回さなくても一声かけて終わりだろうが」


「・・・」

 うーん。どうしたんだ?下向いて黙っちゃったよ・・・ と彼女をよく観察すると、震えていた。

 ん?あ、ひょっとして家まで一人で帰るのが怖いのかな? あんな事があった直後だし、当たり前か。


「お嬢さん。良かったら、家まで送ろうか?」

 俺の提案に彼女は驚いたように顔を上げ、首を縦に振った。


 結論から言うと、俺は彼女を家に送り届けることに成功したんだが・・・

 本当に迷子になってしまった・・・


 入り組んだ路地裏を何本か通ったんだが、あちこち曲がっていて、彼女の家までは案内がいたので良かったが、帰りとなると、一人だ。当然道は分からず、迷子になった。


 仕方ないので俺はとにかく大通りに出るよう道を直進したのだが、道そのものが曲がりくねっていて、どこを歩いているのかわからなくなった。


 少々不安になってきた頃、漸く大通りに出ると、また誰何される羽目になった。


「そこの貴様、何奴だ! こっちを向け」


 振り返ると、簡素な皮の鎧と腰に剣を下げた兵士っぽい恰好をした5人の集団がいた。

「ハンスさん?」


「誰だ、お前のような(オーガ)に見覚えは・・・ ? ラークか」


「そうです」


「お前何やってるんだ。街門はもっと南だぞ?」


「・・・いや、そのぉ~、また迷子に・・・」


「なに?また迷子だって? ふ、ふはははは!」

 遠慮なく笑われたが、今度は憤ることもできんな・・・まじで。


 一頻り笑い終わると、ハンスさんは事情を聴いて来た。

 俺が話し終わると、真剣な顔でハンスさんは仲間の3人を女性が襲われた辺りに行かせ、強姦魔2人を連行させた。


「ラーク、助かったよ。犯人も捕まえられたし、ありがとう」

 そう言って嬉しそうに笑うハンスさんと仲間たち。それに向かって俺は1つお願いをする。

「それじゃ、また街門までの道を教えてくれませんかね?」


「ああ、良いとも。今度は迷子になるなよ」

 そう言って笑いながら、快く街門までの道を再び教えてもらった。


 教えてもらった通りに道を進むと、漸く街門へと辿り着く。

 門は閉まっており、外壁にも見張りの歩哨が立っている。

 ふむ、どうやって出るかな。どっかから梯子でも調達するか?とか考えるが、ふと、今の俺なら外壁まで跳べるんじゃね?と思いつく。

 ものは試しで、街門からかなり離れた場所でまずは軽く跳躍すると、街門の半分。3メートル位跳び上がった。

 これなら行けるかも?と思って今度は外壁に向かって跳ぶと、あっさり外壁の上に着地した。

 思わず周りを見回すが、誰も気づいた様子はなかったので、そのまま外壁の外へ飛び降り全速で街から離れた。


 適当に走ったところで、辺りを見回し、人の気配がないのを確認してから街道の脇にある林の中に入り武者鎧を脱いだ。

 因みに着た時もそうだが、脱ぐのには30分以上かかった。


 これで(オーガ)扱いはされないだろう。

 そう思いつつ、夜が明けるまでここでしばらく休むことにした。


拙い文章ですが、読んで貰えるとありがたいです。

コーラはしばらく出てこないと思います。

タイトル詐欺のようで申し訳ありません。

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小説家になろう 勝手にランキング
ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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