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第62話 事後処理?

ちょっと半端かも・・・

 ズルズルと何かを引き摺る音と共に俺は洞窟の外へと出た。


 辺りは丁度夕焼けに染まっており、西日が眩しい。


「眩しいな・・・」


「出て来て最初の第一声がそれですか?!」


 出てきていきなり突込みが入った。


「おぉ?! レジー君じゃないか、どうしたんだい?」


「ラクタローさんこそ何だかスッキリした顔してますけど、中で何があったんですか?」


「オークキングをサンドバッグにしてストレス発散と、魔法の試し撃ちしてたんだけど、詳しく聞きたい?」


 そう答えると、レジー君は俺が引き摺っているモノを一瞥すると、首を横に振った。


「いえ、聞きたくないです。 恐ろしい事しか語られない予感がヒシヒシとしますから」


「聞きたいんじゃしょうがないなぁ。 最初にサンドバッグにする為に両腕を切り落とそうと思ったんだけど、ふと、自分の腕力がどれくらい強くなったのかな? って思ってね、オークキングの腕くらいなら引き千切れないかな?と試しにやってみたんだよ。そうしたらなんと・・・」


「ラクタローさんの残虐ファイトなんて聞きたくなーい!」


 そう言って耳を塞ぐレジー君。 少しからかい過ぎたか。

 レジー君が落ち着くのを待って本題を告げる。


「まぁ、冗談はこれ位にしておいて、一応これがオークキングね。それで洞窟内のオークはほぼ一掃できたと思うよ」


「本当ですか?! 流石ラクタローさんですね」


「まぁ、なんとかね、そう言えば洞窟内でラーク、だったかな?そんな名前の人と会ったんだが、その人はもう出て来たかい?」


「あ、ラクタローさんもあったんですか? あの人酷いんですよ! 中で助けた人達を俺に押し付けて逃げちゃったんです」


 ふむ、レジー君の認識はそう言う感じか、まぁ、誤魔化す為にも同調しておこう。


「それはひどいな。 それで助けられた人達は無事なのかい?」


「えぇ、でも人数が一気に増えたんで食料が持ちそうにないんですよ。それと、彼女達、全員裸だったんで、服や布も足りなくて・・・ラクタローさん、どうにかなります?」


「何人くらい増えたんだ?」


「21人増えました。総勢で48人ですね」


「・・・かなり多いな。食料に関してはオークがあるから大丈夫だが、服はない。が、生地の状態の布が幾つかあるから、あれを切れば体を隠す位は出来るだろう。簡素な貫頭衣位なら人数分出来ると思うぞ」


 そう言うが早いか、俺は『無限収納』から生地の束をレジー君に渡す。 もしかしたらと思って『サンチョの冒険』で買った布が役に立ったようだ。


「用意がいいですね、ラクタローさん。 やっぱり収納スキルがあると便利なんですね。俺も欲しいですよ」


「まぁ、予定外で救助した事もあったからね。服はやっぱり高いけど、布ならそこそこの値段で済むから一応買っておいたんだよ」


 そう言い訳をして王都へと戻ろうと考えたが、時間的に今日中の移動はちょっと無理そうだったので、今晩はここで野宿して明日から移動する事になった。


 因みにインディは最初、怖がられていた様だが、俺とのやり取りを見て近付かなければ問題ない事が分かったようで、大した騒ぎにはならなかった。































 と言う事で、5日掛けて何とか王都の近くまで辿り着いた俺達一行であったが、このまま王都へ入るのは憚られる。


 何故かって? 一応布を切って貫頭衣ではあるが、着ている。だが、やはりちょっとTPO的に如何なものかと・・・

 それ以外にも48人もいる中で、約半数の者が身分証がない事も判明している。


 こうなると、このまま進むと街門で一騒動起きる可能性が高い。


 と言う事で、王都に近付いたところでレジー君に先に冒険者ギルドに行って貰いジェラルド氏に報告とお願いをしてもらう手筈になっていた。


 報告とお願いは3つだ。


 1つ目はオークキングの塒で要救助者を48名救助し、保護している事。また、王都に入るに際してトラブルが無いよう手配して欲しい事。

 2つ目はオークキングの捕獲成功と、オークキングに何某かの神の加護がついている事が判明しているので調べて欲しい事。

 3つ目は救助した者達が自立できるまで面倒を見て欲しい事。


 と言う事で現在レジー君待ちをしているんだが、場の空気は微妙だ。


 救助した人達とは極力話しかけないようにしているので、相手方もそれを察知したのか話し掛けて来ない。


 結果、静寂だけが辺りを支配していた・・・ と言えば聞こえはいいが、単に居心地の悪い時間が続いているのだ。



 べ、別にコミュ力が無いわけじゃないよ? 意図的にコミュ取らないだけだよ?



 まぁ、暇なんで手頃な小石を拾って小型爆弾(リルボム)を付与して「無限収納」へと黙々と仕舞って行く。


 作業に没頭すれば時間なんてあっと言う間に過ぎて行くはずだ。


 そうして作業に没頭していると、突然声を掛けられ、振り向くとジェラルド氏がいた。


「おや、ギルマスじゃないですか?」


「おや、ギルマスじゃないですか? ではないよ、ラクタロー君。

 君、何してくれてるんだね?」


「レジー君のオークキング捕獲に同行しただけですけど?

 この通り、オークキングは生け捕りにしてますよ?」


 そう言って縛り上げたオークキングを指差すと、ジェラルド氏は額に手を当てて溜め息を吐く。


「こんな事なら最初から君に討伐依頼を出しておくんだったよ。

 お蔭で討伐準備が全部無駄になってしまった・・・」


 ふむ、なにやら問題があったようだな、何か聞くの怖いけど聞かないと話が進まないか。


「聞きたくないんですが、一応聞きますね。 何か問題でもあるんですか?」


 そう聞くと、ジェラルド氏は恨めしそうな顔で答える。


「問題はない・・・ ないんだが・・・ こちらとしてはオークキング討伐の為に彼方此方(あちこち)奔走した挙句、私も出陣する予定で必死にスケジュールを組んでいたんだ。それが君の報告1つで全てご破算になってしまったんだよ!」


 ふむ、略すと、「討伐準備に忙殺された挙句、それが必要なくなって徒労に終わったのがやるせない」と、そう言う事か?

 いや、準備万端整ったところで出端を挫かれ、集めた面子(めんつ)への説明が非常に困難だってことか?


 まぁ、集められた人達からすれば決死の覚悟なり暴れる算段なりがあったんだろうが、それが肩透かしで終わって感情のやり場に困る。 そんなところか。


 まぁ、矛先はジェラルド氏に向かうだろうが、そんなのはギルマスの仕事だろう。

 俺に当たるのは筋違いだ! ・・・と言う事にしておこう。

 俺がやられたら絶対八つ当たりするだろうけど、今まで散々いいようにされたんだ。 これ位やっても罰は当たるまい。


 そんな感じでジェラルド氏の苛立ちを理解しつつも敢えてそれを無視して話を進める。


「まぁ、そんな事より、この人達の服とか入都手続きとか、そう言ったことについて手を打って頂けましたか?」


「そんな事? そんな事と言ったのかね?! 今!」


「えぇ、ギルマスが苛立っているのは分かりましたが、それは敢えて置いておくと言う事で、話を進めましょう。

 レジー君も私もオーク達を殲滅して帰還したばかりなんですから、疲れているんですよ。

 むしろ冒険者ギルドとして損失無しでオークキングを捕獲できた事を喜べないんですか?」


「ぐぅ・・・」


 そう言うとグゥの音も出ないと言った表情で固まるジェラルド氏。 あぁ、今までいいようにされていた分、溜飲が下がる思いだ。


「ギルマス。黙ってないで話を進めてくださいよ。 服や入都手続きは手を打って頂けましたか?」


「あ、あぁ、今、服の方はアロマ君に手配を頼んである。もうすぐこちらに届くだろう。 入都手続きについてはクレオ君に警備隊宛てに手紙を持たせたので、もう暫らくかかるが、こちらも問題なく入れることになるだろう。

 それよりもラクタロー君。オークキングについてなのだが、レジー君からの報告は事実なのかね? 正直信じられん。 と言うよりよくわからないんだが・・・」


 どうやら手配は済ませて来たようだ。 とりあえず一安心だ。

 だが、最後のオークキングが持っている加護についてだが、ジェラルド氏にも信じられない話だったようだ。


「残念ながら事実です。ただ、誰の加護かはわからないんでその調査をお願いしたいんですが、調べることは可能なんですか?」


「ふむ、神が隠蔽しているのであればほぼ不可能だ。

 なぁ、ラクタロー君。 その加護は邪神の加護と言う事は無いかね?」


「邪神であれば名前を隠す必要性が無いでしょう? 寧ろ堂々と付けますよ!」


 俺は少し語気を荒げて即座に否定する。


「た、確かにそうだが・・・」


 歯切れが悪いな・・・ やはり神が存在することが当たり前の世界じゃ神を疑うのは禁忌(タブー)なのだろうか?


「ギルマス。少し聞きたいんですが、神様を人類の味方なのかと疑ったりすることはありませんか?」


「ふむ、それは一概には言えないのだよ。

 一言で神様と言っても、色々な神がいるのだ。

 例えば戦神が戦闘狂の殺人鬼に加護を与えたとしよう。

 殺人鬼ではあるが、戦いに対する向上心が戦神に気に入られた理由だ。

 この場合、対象は殺人鬼ではあるが戦神として加護を与える行為は正しいと言えるだろう?

 それと同じように戦いへの向上心がある魔物であれば戦神が加護を与える可能性はある・・・と言うか、実際にいる」


「いるんですか?!」


「あぁ、二つ名持ちの魔獣は大抵持ってるよ」


 知らなかった・・・ どんな名前なんだろう? とも思ったが、話が逸れそうなのでぐっと我慢した。


「ふむ、となると、それらの戦神は与えた加護を隠しているんですか?」


「いや、普通は与えた加護がわからないように隠蔽する事は無い」


「人類と敵対している者に与えているのに?」


「魔物もこの世界の生き物だからだよ。至極単純な事なんだが、神の御心に沿う行いの出来たモノにのみ加護は与えられるのだよ。変わった生き物にも加護を与えると言う事は、それだけ懐が深い神として崇められる傾向が強いのだ。むしろ加護を与えた神が名前を隠蔽する必要性がどこにあるのかわからないのだよ」


 ジェラルド氏も困惑の表情で答える。 ふむ、つまり神様の権能に沿った行動。戦神なら「戦う行為」だろ? じゃぁ、炎とかの神様だったら・・・どんなことだ? 炎を使う行為? 料理とか魔法か? 魔物ならドラゴンとかに付いてそうだな。 しかし、オークってどう考えても知識を持ってたり、欲したりはしないんじゃないか?


「それなら、権能に値しないものに加護を与えたりした場合はどうなんです? 例えば知識の神が知能の低い魔物に加護を与えたりする場合は隠したりしないんですか?」


「その場合は知能の低さを哀れんだのだろう? それこそ隠蔽する必要がないだろう」


「その結果、俺達が被害を受けたとしてもですか?」


「それは腹立たしいが仕方ない。 神の加護とは個人に与えられるものであって、種族全体に与えられるものではないのだよ。 神からすれば与えたものが人でも魔物でも違いは無いのだろう。 まぁ、聖職者に言わせれば精進が足りないって事なんだろうがね」


 そう説明されると、隠されているのは不可解だが、別に魔物に加護が付いていても神への信仰心が人から離れる事は無さそうだ。


 うーむ、思ったより神に対する依存度は低いようだな。 これじゃネガキャンしても意味無さそうだな・・・ 報復手段が1つ潰れたようだ。

 あのクソ女神への報復方法をもう少し考える必要があるな。

 なんてことを考えていると、ジェラルド氏が話を締め括って来た。


「誰の加護かわからないように隠蔽されているってことは、その神にとって不都合な事があるのかもしれないが、我々は神に比べれば矮小な存在だ。その意図は杳として知れない。正に神のみぞ知るってやつだ」


 まぁ、どう考えてもクソ女神の権能から考えてもオークになんぞ興味を持つわけがないが、加護を与えても名前を隠す必要がない。


 そうなると、なんで名前を隠す必要があったんだ?


 この世界の人間に対しては隠す必要が無いのに態々(わざわざ)名前を隠した・・・ うん? ひょっとして異世界から来た俺にバレないように隠したのか?


 俺を勇者に出来なかったから、代案としてオークにゴブリンキング討伐をやらせようとしたが、俺が近くにいたから、万が一、オークキングが俺と接触した時の事を考えて隠しておいたのか?


 そう考えると辻褄が合うが、知識の神を名乗っているくせに何とも杜撰(ずさん)な隠し方だ。

 呆れると共に、何かどっと疲れた。


 何となく核心に辿り着いた感じがする。

 こうなるとオークキングを生かしておく必要はないよな?


 レジー君にでも止めを刺して貰って、オークキング殺しの英雄にでもなって貰うかな?


 そんな事を考えたり、ジェラルド氏と適当な雑談をしていると、ようやくアロマ氏一行が到着したので同行者たちに着替えて貰った。



 着替えが終わってしばらくすると、今度は王都から警備隊だろうか? 10人くらいこっちに向かって歩いてくる。


「ギルマス、あれって警備隊ですかね?」


「うん? あぁ、多分そうだろう。 これでようやく王都に戻れるよ」


 そう言って胸を撫で下ろすジェラルド氏に、俺も同じ思いを抱くが、この後の面倒臭い手続きとか考えたら、長引きそうでげんなりする。


 この場はジェラルド氏に一任して先に王都に帰ってもいいかな?

 そう考え、はたと気付く。 ジェラルド氏がいれば俺、要らないじゃないか!


「ギルマス」


「なんだい?」


「俺、帰ります」


「なんだって?!」


 俺は言うが早いか、「隠密1」を発動し、その場を離れた。




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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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