第58話 洞窟の中 3
大変遅れました。
申し訳ありません。
次話もまだまだ掛かります。
が、まだ終わらんよ。
とだけ言わせて下さい。
失礼しました。m(_ _)m
レジー君達と別れてから暫く先に進み、辺りに誰もいない事を確認すると、俺は「無限収納」から久しぶりに武者鎧を取り出し、着替えようとして自身がどうしようもない位汚れていることに気付いた。
閉塞された洞窟内で鼻が馬鹿になってしまったことを差し引いても今まで気付かなかったとは、地味にショックだ。レジーくんも教えてくれればいいのに。
まぁ、自分のゲロやその他の汚物にも塗れているのに気付かないというか、気にかける余裕が精神的に無かったのだから仕方ないとも思うけど、気付いてしまうとこれはこれで非常にきつい状況だ。今までゲロくっつけて真面目な顔で話してたなんて、そう考えると恥ずかしくなってくる・・・
羞恥心で身悶えするが、よく考えたらある意味極限状態の人達ばっかりだったので俺の状態なんて気にする人なんて居ないよな? レジー君は・・・ 口封・・いや、口止めは必要だな。 うん。
そんな事を考えていると心が少し落ち着いて来た。
この調子でもう少し気分を落ち着かせようと考え、今の状況が前々から試してみたかった回復魔法を使うのに絶好の機会であることに気付いた。
試してみたかった魔法は以下の説明があったものだ。
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魔法名:汚物は消毒だ!
効果 :浄化の炎で病気・毒・穢れを回復。
:但し、症状の強さによって焼かれるような痛みを伴う。
・・・『穢れ』ってのは『汚れ』って事でもいいよな? 副作用みたいな追加効果も気になっていたところだが、回復魔法なんだし命に係わるような事は無いだろう。
そんな軽い気持ちで魔法を唱えると、自分の体が青白く光り始める。
「お? おぉ?! あ! あっつい!! 熱い! 痛い! くっそ痛い! うあぁぁぁぁぁぁ!」
唱えた3秒後にはこの魔法を使ったことを後悔しながら叫び声を上げ床を転げ回る事になったが、青白い光は体に纏わり付いたまま消える事なく浄化が終わるまで俺を包み込んでいた。
俺を焼く魔法の光が収まると、荒い息を吐きながら体を起こして座り込んだ。
この魔法は使ってはいけない。自分にだけは直接使ってはいけない。そして魔法実験は例え回復魔法でも自分で実験するのは止めよう。そう心に刻んでおいた。
それから使ってみて確認できた魔法効果についてだが、服の汚れはもちろん、体に付いていた汚れもきれいに取れている。更に俺が転げまわったであろう地面も浄化されたようで土がサラサラの乾いた土に変わっている。それから俺の服も乾いてサッパリとした着心地になっていたんだが、それ以上に驚きなのが、あれだけの苦痛であるにも拘らず全く外傷が無かった。それにステータスでも確認したんだが、HPも全く減っていない。 一体どういう仕組みなんだ。
この魔法、拷問に使ったらかなりやばいんじゃないだろうか? 効果時間についてはどれ位続いたのかは痛熱くてわからなかったが、体感時間はかなりのモノだった。 汚物を塗りたくったり、遅行性の毒を盛って苦しんでいる所に回復と称して汚物は消毒だ!を掛ける。 どの工程においても苦痛を与えられるし、何よりも拷問を受ける側が死なない。 これって結構凄いんじゃないか?
そう思い、誰かに試したくなったが、残念な事に拷問を掛ける必要のある人物に心当たりが無かった。
まぁ、その内試すとしよう。 別に人である必要もないだろうしな。
・・・
・・・人である必要は無い?・・・
・・・
何か思い付きそうで思い付かない。
そんな感じがして暫らく考えたが、特にいいアイデアも中々出てこなかったので、取り敢えず当面の目的であるオークキングを殺す事に頭を切り替えて武者鎧を着込み始めた。
はぁ、一人になった途端、なんでこんな間抜けな事をしてしまったんだろう。
間抜けな自分の行いを振り返り嘆息すると、武者鎧を装備し始めた。
さて、改めて完全武装した俺は、依然として暗い洞窟内にいるが、「暗視1」スキルを取得する事もなく視界は松明の明かりが届く数メートル先位までしかない。まぁ大体10メートル先位まではなんとか見えている。と言った状態だ。
これでも洞窟に入る前と比べれば大分ましになったんだが、それでも見る事にかなりの集中力を持って行かれるので目は疲れるし、視界が限られるのは戦闘時に不利だ。それにオークキングを殺すと決めた今では「暗視1」スキルの自力取得は間に合いそうにない。今必要とするスキルを貧乏根性で蔑ろにして死んだんじゃ意味が無い。そう考え、俺はスキルポイントで「暗視1」スキルを取得した。
「暗視1」スキルを取得した途端、一気に辺りが明るくなった。
レジー君が言っていた真昼のようにとはいかないが薄いサングラスを掛けた位の明るさは保たれているようだ。
これなら問題なく戦えるだろう。
軽く気合を入れて分岐点まで戻り、その先へと進んだ。