閑話 女神サイド2
大変急ですが、書きたくなったので書いてしまいました。
前回の閑話の続きです。
本筋も微妙なところですが、申し訳ありません。
読まなくても本編には影響ないよ?・・・多分ね。
「・・・大変ご迷惑をおかけしました」
そう素直に反省の言葉を紡ぐサスティナの頬は少し頬がこけている様にも見える。
「お前にも待っていてくれる信者が居るんだ。二度と戻って来るんじゃないぞ、サスティナ。もう下らん犯罪とはするんじゃないぞ」
そう言って諭すように話す建御雷。
「はい・・・って! 私女神ですよ?! どこぞの受刑者じゃないんですから!」
そう言うサスティナの格好は赤と白の縞模様の囚人帽に同じ柄の囚人服で何故か背中に『雌豚』と書かれている。左足の足首には鎖で繋がれた黒光りする重りが付けられていた。 うむ、どこからどう見ても囚人ないし受刑者のようだ。
「見たまんま受刑者だろうが?」
無表情に事実を答える建御雷。
「た、確かにお仕置きはされましたが違いますって! 」
「女神の癖に異世界滅ぼしかけた挙句、お前の尻拭いをしてくれた人間に感謝するどころか悪態ついて侮辱する屑だろうが。しかもそれが元で刑罰を受ける羽目になったんだ。立派な受刑者じゃないか」
呆れた顔で淡々と事実を突き付ける建御雷。
「そ、それはそうですが・・・」
不服そうな声で反論しようとするサスティナに建御雷がドスの効いた低い声で聞き返す。
「まだ反省していないのか?」
「い、いえ! 反省は十分しました!」
その言葉に建御雷が疑いの眼差しを向け、 その表情を見てサスティナの顔色が蒼白に変わる。
「本当か?」
「Yes,sir!」
サスティナは右手を額の前に翳し、敬礼の姿勢で即答する。
「・・・まぁいい。だが、今後も反省の色が見えないと判断した場合は・・・わかっているよな?」
「Yes,sir! ネジ〇ンボウとパ〇シュート部隊で可愛がられます!」
言い切った後で顔色を蒼白にするサスティナ。 それを見て建御雷は呆れた様な声を出す。
「どこで仕入れたんだそんなネタ・・・ ったく。まぁいい。 お前さんは自覚が足りない様だな」
そう言うと、姿勢を正し、口調を整えると、抑えていた神格を解き放ち、サスティナへ警告する。
「女神サスティナ。貴様は我ら地球の神に対して戦争の引き金を既に引いている。その事は理解しているか?」
その言葉にサスティナの顔色は青くなる。
「我らが貴様の世界を滅ぼさない理由は偏に『山並 楽太郎』の存在だ。地球を救った彼奴に我らは恩がある。故に彼奴が暮らす貴様の世界を滅ぼさずにいる。 それだけが理由だ。 なのに彼奴に対する貴様の態度はなんだ? 我らの中には憤りを持つ者も多い、かく言う俺もその内の一人だ。 もし今後、楽太郎が子供を作らず人生を終えた場合、我らは何の躊躇もなく貴様の世界を滅ぼすだろう」
「異世界の神が他の世界に干渉することは規則で禁じられているはずです!」
青い顔でそう反論するサスティナだが、それを建御雷が否定する。
「今回の件について、我ら地球の神が貴様の世界に干渉することは問題ないと判断された。また、我らが貴様の世界を滅ぼす事も数多ある神々に承認されている」
「うそ?!」
サスティナの顔色は青を通り越して限りなく白に近付いていた。
「嘘じゃない。 不可抗力での異世界転移ならまだしも、神が裏で手引きした異世界転移でうっかり我らの世界を滅ぼしかけたんだ。被害者である我らに報復の権利が与えられるのは当然の帰結だ」
「・・・」
何も言い返せないサスティナに神格を抑え直した建御雷は軽い口調で話しかける。
「まぁ、楽太郎やその子孫が生き続けている限りは我ら地球の神が手を出すことはないだろう。ただ、お前らが楽太郎にチョッカイかけた場合はどうなるかわからんがな」
そう言って笑う建御雷に、戦慄を覚えるサスティナであった。
「それじゃ、さっさと帰れ」
そう言って建御雷が指をパチンと鳴らすと、サスティナの足元に穴が開きサスティナが落ちて行く。
「え?! って、と、飛べない?! きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咄嗟に飛ぼうとしたサスティナだが、足の重りで飛べなかったようだ。 そんな彼女の悲鳴が聞こえなくなった頃、もう1柱の神が建御雷に声を掛ける。
「やれやれ、ようやく行ったようじゃな」
「ああ、あれだけ脅しとけばそうそう楽太郎にチョッカイかけないだろう」
「だと良いんじゃがのぉ、彼奴は儂らの想像の斜め上を行くからのぉ」
「それもそうか。舌の根も乾かない内に手を出そうとするとは思わんかったしな」
「その通りじゃ、それに儂らが異世界に干渉できるのは神にのみじゃからのぉ。例外は楽太郎君のみじゃて」
「しかし、本当に彼奴は女神なのかのぉ?」
「俺もそう思うが、俺達もあそこまで酷くはないが、若い頃は無茶をしただろう?」
「儂、昔からジジイだったしのぉ、それより昔は覚えておらんよ」
「・・・そうか」
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「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
場所は神域にある女神サスティナの社。その中で本来この社の主であるサスティナがしなければならない仕事を戦いの女神ナシスと時空間の女神ルシエントが肩代わりして熟している最中に悲鳴は木霊した。
彼女達は何事かと思わず外に出て見上げると、赤白の囚人服に鉄球を付けたサスティナが墜ちてくるところだった。
「ナ、ナシス! ルシエント! 助けて頂戴! おーーねーーがーーいーー!」
墜ちている最中でも目敏く親友たちを見付けたサスティナは必死に声を上げ助けを求める。
「おっ? 戻って来たのか、ったく! 仕方ないな、おい、ルシエント! 助けるぞ」
そう言ってナシスは墜ちてくるサスティナをキャッチする為に飛び上がる。
「・・・わかった」
そう答えたルシエントはサスティナ達が墜ちて来るだろう地面の上10メートル位の所に蜘蛛の巣のような力場を作り出す。
その姿を見てサスティナが「ありがとうございますーーー!」と喜色満面の笑みを浮かべ、ナシスに抱き付いたのだが、その時、異変が起こった。
「え? あれ? ち、力が出せない?!」
そう言って驚きの表情をするナシス。 その間にも落下は続いており、サスティナ共々神域の地表は近付いて来ている。
サスティナに抱き付かれるまでは飛べていたはずなのに、抱き付かれた瞬間に力が出せなくなったのだ。 原因は明らかにサスティナだろう。そう結論を出すと、ナシスは良い笑顔でサスティナに一言告げる。
「サスティナ。離してくれないか」
「え?」
一瞬キョトンとしたサスティナだが、言葉の意味を理解すると、ナシスにより一層しがみつく。
「いーやー!」
「おい!コラ! 離せ!」
「私を見捨てる気なの?! ねぇ!」
「いいから離せ!」
空中で醜く争う女神2柱。 それを眺めつつルシエントが一言。
「結界張ったよ」
「でかしたルシエント!」
「ありがとうルシエント!」
「と言う事で離してくれサスティナ」
「ルシエントさんを信用してないんですか?」
「信用はしてるさ。だが、2人だと結界が耐えられないかもしれないだろ? だから俺が離れて少しでも軽くしないと! な?!」
そう言ってサスティナを振り解こうとするナシス。
「大丈夫ですよ。ナシスは軽いから」
そう笑顔で答えるサスティナだが、両手両足をナシスの体に絡め絶対に逃がさないと言った意思がひしひしと伝わってくる。
「「・・・」」
「はーなーせー!」
「いーやーだー!」
そんな事を繰り返し続けている内にルシエントの結界に飛び込み、結界が撓むが、サスティナの足に嵌った鉄球が結界に触れると、何の前触れもなく結界が崩壊し、2柱の女神はそのまま落下した。
轟音と共に出来た小さなクレーターをルシエントが覗き込み、2柱の女神に声を掛ける。
「大丈夫?」
「「な、なんとか、生きて(ます)(るよ)」」
「良かった」
そう言うとルシエントは社に戻って行った。
サスティナとナシスは暫らく身動きが取れなかったが、暫らくするとゾンビのように無言でクレーターから這い出して行った。
更にその後、サスティナの加護持ちがもう一人減ったことで、サスティナが悲鳴を上げたとか上げないとかがあった・・・らしい。