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第50話 宿屋にて

 さて、ギルドへの報告も終わったし、さっさと宿屋へ帰ろう。 少々徹夜が続いたせいか眠い。


 そう思い、ギルドを出ると一直線に宿屋へと向かう。 その間街並みをぼーっと眺めていると、妙に心が落ち着く。10日くらいしかここに居なかったので里心とは違うだろう。恐らく危険な野外から、人の生活圏である街に入ったことで心が安心して落ち着いたんだろう。 まぁ、窃盗とか強盗なんかは気をつけておかないとな。


 なんて益体のない事を考えている内に宿についた。


 そう言えばインディは元気かな。 最近かまってなかったから俺の事忘れてたりして・・・


 そう思いながら宿の扉を開け、宿の呼び鈴を鳴らすと、リンスさんの「はーい、少々お待ちくださーい」という声が聞こえてきた。


 リンスさんが奥から顔を出すと、笑顔で迎えてくれた。


「あら、ラクタローさん。お帰りなさい。ちょっと遅かったみたいですが、やっぱり大丈夫だったんですね」


 やっぱり大丈夫って、心配するだけ無駄って思ってません? ま、まぁ予想通り大丈夫だったけど・・・


「え、えぇ、少々寝不足ですが、特に問題なく帰ってこられましたよ。それで、今日の宿をお願いしたいんですが・・・というか、そろそろ追加で支払いが必要じゃないですか?」


 話しながら、そう言えば宿代ってあと何日だっけ?と不安に思ったのでそこも聞いてみる。


「そうですね。ラクタローさんは・・・と、ちょうど昨日で支払いが切れてますね。ただ、昨日までの6日間は泊まってないけど、インディ君の餌代と場所代はそのまま継続だから・・・」


 そう言って台帳とにらめっこを始めるリンスさん。 もう暫らくかかるかな? と思ったら意外と早く回答が来た。


「そうですねぇ、あと、3日ほどは大丈夫ですよ」


「そうですか、それなら良かった。ありがとうございます。 それでは早速休みたいので部屋を教えて貰えますか?」


「部屋ならラクタローさんが今まで使ってたところと同じで良いですよ」


 と言って鍵を渡してくれた。これってひょっとして取っておいてくれたのか?


「ひょっとして部屋を取っておいてくれたんですか?」


「いえ、うちはいつも満室ってわけじゃないですから、偶々ですよ」


 そう言っていい笑顔をするリンスさん。 なるほど、確かにそうかもしれないな。常に満室なんてそうそう無いだろう。


「なるほど、それならよかった。それじゃ、少し寝てきますね」


「あ、ラクタローさん。インディ君の顔も見てあげたらどうです? 寂しそうにしてましたよ」


「おっと、そうですね。それじゃ厩舎に行ってきます」


 そう言って宿の裏にある厩舎に移動した。








 ・・・そこには体を丸めてまったりしているインディの姿があった。


「な、なんか・・・前に見た時よりでかくなった気がするが、気のせいか?」


 インディを観察して出た俺の声に反応したのか、インディがこっちを向くと、匂いを確認するように鼻をクンクン鳴らし近寄ってくる。


 間近まで来ると、顔を近づけて来て、突然顔を舐めようとしてきたので、慌てて顔を背けて避ける。


「ちょっ?! なにすんだよ!」


 そう言って後ろに下がるが、インディはそのまま進んできて執拗に顔を舐めようと狙ってくる。 それを必死に避ける俺。


 既に厩舎の柵を超えて乗り出して来たインディ、これって厩舎の意味なくない?


 インディの吐く息が生臭い・・・


 そんな攻防を繰り返していると、リンスさんが声を掛けてきた。


「ラクタローさん。お客さんが見えてるんですけどーって、何やってるんです?」


 そう言って不用意に近づいてきたリンスさんを咄嗟に盾にして後ろに隠れてしまった俺。 あ、不味い。


「きゃぁー! な、何するんですかぁ?!」


 気付いた時には既にインディにベロベロと顔を舐められているリンスさん。・・・ごめんなさい。


「ご、ごめんね。リンスさん。つい咄嗟に・・・ね?」


 謝りつつも後ろに隠れる事をやめない俺を、顔をインディに思うさま舐められたリンスさんは顔をベトベトにして胡乱な視線で俺を睨んでくる。


 インディはリンスさんの顔を舐めて満足したのか、後の事は知らないとでも言わんばかりにさっさと厩舎の中に逃げて、いや、帰ってしまった。 なんて畜生だ。


 俺はリンスさんの怒りを治める方法もわからず、対応に困ってしまう。


「ラクタローさんは近くにいる人を咄嗟に盾にするんですね」


 ・・・参ったな。どうしよう。 ・・・物で釣ってみるか。


「ゴ、ゴメンね。今度ルッツさんの屋台の串焼き奢るから勘弁して」


「・・・何本ですか?」


 憮然としつつも具体的な数を要求してくるとは、手打ちする気満々だね。でも、何本がいいんだろ? 素直に聞くか。


「何本がいい?」


「100本で!」


「ちょ、ちょっと多くない?」


 思ったより多いな!? って思わず声に出してしまったら、妥協してきた。


「・・・それじゃぁ、50本に負けます」


 不服そうに言われたが、いきなり半分になった。謝罪の意味もあるので軽い突っ込みだったんだが、まぁ、これはこれで良しとしとこう。


「それなら何とかできますね。今度買ってきます」


「やったー!」


 顔をインディの唾液でベトベトにしながら満面の笑顔を浮かべるリンスさん。 ちょっと顔が生臭いですよ。


「あ、そうそう、ラクタローさん。お客さんが来てますよ。レジーさんって方なんですけど、会いますか?」


「レジー君? 何の用だろう?」


「知り合いなら、食堂で待ってるんでそちらに行ってください」


 そう言うと、エプロンで顔を拭くリンスさん。


「あ、すいません。これをインディにあげてください。あと、これチップです」


 そう言ってオーク肉の塊と銀貨2枚を取り出すと、リンスさんに渡し、そのまま食堂へ移動する。


 俺はレジー君に自分の宿は教えていなかったはずなんだがな。 街に戻ってすぐ来たって事は・・・仲間への説得に失敗でもしたんだろう。


 暫らく寝るのはお預けのようだ。 夕飯でも食いながらレジー君の話でも聞くか。






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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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