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閑話 女神サイド

書きたくなって書いてみた。

いろいろ違和感あるかもしれません。


ご指摘あればよろしくお願いします。

 女神サスティナは神域にある自分の社にある机に突っ伏していた。


 時は丁度楽太郎が召喚され、王城から逃げ出した辺りだろうか。


「あ、あの楽太郎(こぶた)めぇ・・・」


 女神の癖に怨嗟の声を吐き出しつつ、自分が可愛がっていた信者(こども)のタニアとレイラに与えていたサスティナの加護を消し去った楽太郎の姿を睨みつける。


 その表情は女神からは程遠く、悪鬼羅刹と言われても反論できそうにないものになっていた。


「その表情(かお)は流石に私でも引くぞ。サスティナ」


 そう声を掛けたのは少し顔を引き攣らせた戦いの女神であるナシスであった。


「うぅ・・・、でも、でもでもでもでも、ちょっと酷いと思いませんか? 私の信者(こども)2人から私の加護を消したんですよ?!」


「うーん。それなんだが、なんで加護が消えたんだ? 加護が消える条件は、『神が加護を消した場合』と、『信者自身がその神への信仰心を失った場合』だろ?」


 そう問い返すナシスにサスティナはもう一つの条件を加える。


「いえ、神が加護を消さず信仰を持ったままでも、その神の意向に反抗するか、それに近い行動をとった場合は加護が消えます。例えば、私が『○○は危険です。排除しなさい』と言って神託を与えたとして、信者が『嫌だ』と言って反抗した場合ですね。ただそれだと加護を失うものが続出しますので、私達神々は信者達へ命令するような物言いは禁じられています。なので神託は『近い内に○○辺りで××が発生します。気を付ける様に』等の信者に対応を任せる物言いが殆んどなのです。 今回、私が楽太郎(こぶた)さんを召喚するに至ったのは、信者達の強い請願に応えて勇者召喚の方法等を教えたのです」


 流石は知識の神。知恵は無いが知識だけならだれにも負けない様だ。それに今回の失態をしれっと自分の信者達の所為にしている。


「な、なぁ、流石に楽太郎をこぶた呼ばわりはちょっと不味いんじゃないか?」


 ナシスがサスティナを諌めようとするが、サスティナは憮然とした表情で「今は無理です」と言い、愚痴り始めた。


 ナシスは肩を竦めながらサスティナの愚痴を聞きく羽目になった。


 因みに時空間の女神ルシエントも一緒に居るのだが、彼女は楽太郎をじーっと観察しており、ナシスの救援信号の視線にも気づいていない様だ。


 ナシスは援軍を諦め、独力で話を本題に戻そうとタイミングを見計らい話題を変えた。


「それでもあいつが加護を消せる理由にはならないだろ?」


「そうなんですよねぇ。楽太郎(こぶた)さんと敵対した程度で加護がどうして消えたのか、さっぱりわからないんです・・・」


 楽太郎の呼称は「こぶた」のままだが、サスティナは少し冷静さを取り戻たのか、考え始める。


 話題が逸れた事に安堵したナシスも一緒になって考える。


「うーん。あ! でも敵対したと言えば、第3王女のリコリスだっけ? あの子は加護が消えてないんだよな?」


「え、えぇ」


「それなら楽太郎と敵対する事が必ずしも加護が消える原因とはならないんじゃないか?」


 ナシスがそう言うと、サスティナは更に困惑する。


「それならどうしてタニアとレイラの加護が消えたんです?」


「それは・・・」


 そう言って考えるが、やっぱり理由がわからず、答えることが出来ないナシスはそのまま言葉に詰まり、何とも言えない雰囲気が場を支配する。


 そんな息の詰まりそうな空気を打ち破ったのは、それまで一言も発する事なく楽太郎を観察していた時空間の女神ルシエントだった。


「原因はやっぱり楽太郎さんだと思う」


「その心は?」


 場の空気を壊してくれたルシエントに、これ幸いとナシスが訊く。


「楽太郎さんに与えられた私たちの力がそのまま残ってる。つまり、彼は私たちの神格を持っている」


「なんですって?! そ、それじゃぁ、今私の加護を持ってる信者があの仔豚の意向に逆らう行動をとったら・・・」


 そう言って青い顔をするサスティナに、ルシエントが答える。 楽太郎の呼称は仔豚で定着したようだ。もう隠す気もないのか?女神サスティナよ。


「加護の授け主であるあなたの意向に逆らった行動と取られ、加護が消える」


 はっきりと告げるルシエントにサスティナのみならず、ナシスも青い顔になる。


 つまり、3柱の女神の神格を持ったままの楽太郎と敵対もしくは対立した時点で、サスティナ・ナシス・ルシエントの何れかの加護を受けていた人物はその加護を失う事になるのだ。


 その言葉と共に暗い沈黙が場を支配する。


「だ、だが、リコリスだっけ? あの娘はなんで加護を失わなかったんだ?」


 青い顔をしたナシスは思い出したようにルシエントにその疑問をぶつける。


「加護を失わなかった理由は2つ。1つは彼女が楽太郎さんに敵対した言動をしていないから。もう1つは楽太郎さんが相手を敵と認識していなかったから。2つ目の理由は、恐らく相手が無力な子供だと判断したのだと思う。楽太郎さんは駄々をこねる子供相手に本気で敵意を向けるような人物ではない・・・と思う」


「だが、楽太郎はリコリスにも他の2人と同じように攻撃していたぞ? それでも加護を失っていないのは何故だ? 」


 確かに楽太郎は駄々をこねる子供の腹部を小突いている。 が、リコリスは加護を失っていない。


「楽太郎さんは別にリコリスに害を成そうと攻撃したのではないからだと思う。私は楽太郎さんじゃないから心の内までは分からないけど、他の2人との違いは敵意の有無だと思う」


「どういう事だ?」


「まず、タニア=サンティルス。彼女は言葉は丁寧だけど楽太郎さんに命令し、彼に敵意を向けられた。この時点でサスティナの敵対者と認識され加護を失った。次にレイラ=カストール。彼女は直接敵対している」


「その2人についてはわかってるよ」


「・・・」


 そう言ってナシスが先を急かす。 ルシエントはちょっとムッとした表情になるが、又すぐに説明を続ける。


「最後にリコリス=シーベルト=サスティリア。彼女は楽太郎さんに質問とお願いしかしていない。最後に立ち塞がったけど、『待ってください』とお願いしているだけで、楽太郎さんから直接的な敵意は向けられていない・・・と思う。なので楽太郎さんが彼女を小突いたのも『敵を倒す』と言う意味ではなく、『邪魔な障害物を退かす』程度の認識で、彼女そのものを敵視していなかったから、加護はそのまま残っていたと推測する」


 ルシエントの説明を聞いたナシスは納得する。サスティナの顔色は蒼白になっていた。


「そ、そんな・・・じゃ、じゃぁ、あの仔豚に関わると私の信者達の加護が消えるっていうの?!」


「正確に言うなら、楽太郎さんに悪感情を持たれると加護が消える」


「?! い、急いで私の信者達に神託を下さないと!」


 そう言って神託を下そうと逸るサスティナに待ったの声が掛かる。


「待てぃ、 女神サスティナ!」


 いつの間にか神域に裂け目が走っており、中から建御雷が現れる。


「貴様。ほんの数時間前に反省したと思ったが、楽太郎を仔豚呼ばわりとはどういう事だ?!」


 建御雷の表情は怒り面のそれであった。


 その表情を見てサスティナの表情が凍るが、何とか声を絞り出す。


「ど、どうしてこちらに居られるのですか?」


「仮釈放と言う言葉を知っているか?」


「?!」


「世界運営で神が3柱欠けると色々と問題が出ると思って取られた措置だが、女神サスティナ。貴殿は反省の色が足りん様だ。少し灸をすえる必要があるな」


「そ、そんな」


 サスティナは視線でナシスとルシエントに助けを求めるが、ナシスは目を閉じ、合掌しており、ルシエントは青い顔で首を左右に激しく振り、どちらも当てにはできない。


 咄嗟に逃げようとしたところで、建御雷に肩を掴まれる。


「それは得策ではないな。3日程度で許そうと思ったが、刑期は5日としよう」


 そう言うと、縄師もかくやと言った手付きでサスティナを亀甲縛りに縛り上げると、肩に担いで裂け目に向かう。


「い、いやぁ!! た、たすけてぇ~!!」


 そう言って泣きながらナシスとルシエントに助けを求めるが、彼女達は揃って答える。


「「ゴメン!無理!!」」


「薄情者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 そう言って裂け目の中に消えて行った。






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小説家になろう 勝手にランキング
ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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