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第38話 前準備

短いですが、書きました。


読んで頂けると幸いです。

 魔法の実験を終え、王都に戻った俺はインディを宿屋に一旦預け、マークさんの肉屋に足を運んでいた。


「こんばんわ、マークさんいますか?」


「ええ、居るわよ。裏の解体所に居るから、そっちに回ってくれる?」


 お客の相手をしていた奥さんが口早に答えてくれた。


 うん、やっぱり店番は奥さんがやるべきだよね。マークさんがやったらお客が逃げて行きそうだよ。


 そんな事を改めて思いながら、勝手知ったる解体所へと向かった。


 解体所へ入ると、一際濃い血の匂いが漂ってきた。俺は顔を顰めながら中に居るだろマークさんに一声かける。


「こんばんわ、マークさんいますか?」


「おう!いるぜ! その声はラクタローか? 用があるならこっちまで来な!」


 大声が返って来たので、声の方へ向かうと、マークさんは牛かな?を解体中のようで、右手でナイフを操り、左手で切り取った内臓をバケツに放り込んでいた。ぬらぬらとした艶のある内臓が時折跳ねてマークさんの顔に血を付けるが、マークさんは表情を変えず、口元を嬉しそうに綻ばせている。


 ・・・なんつう猟奇的な場面だ。 快楽殺人者が獲物を弄ぶ時の表情って、こんな感じなのかな・・・


 俺は失礼とは思いつつも、そんな感想を抱き、気付けば数歩後ずさっていた。


「ま、マークさん。こんばんわ」


「おう!よく来たな! またオーク肉でも手に入ったか?」


 俺の声を間近に聞いたマークさんは手を休め、顔を拭きながら俺の方に向き直ってくれる。 乱暴に拭われた血はマークさんの顔に薄く引き伸ばされ、まるで赤い(オーガ)が笑っている様だ。


「・・・え、えぇ、新鮮なのが手に入ったので持ってきたんです。今回は4体なんですが、買い取って貰えます?」


「おぉ、良いタイミングじゃねぇか! 丁度オーク肉が売り切れたとこだったんだ。全部買い取るぜ!」


 マークさんの嬉しそうな返事を聞いて、俺はオークを4体取り出すと、マークさんがすかさず状態確認をし始める。


「いつも思うが、仕留め方が上手い。 ラクタロー、やっぱおめぇ化け物だな。前と同じ金額で買い取るぜ」


 マークさんは呆れた様な声でそう言うと、オークを吊るして血抜きを始める。


 人の事を化け物扱いしてますが、マークさん。あなたも2メートルオーバーのオークを片手で持ち上げてる時点で化け物じゃないですか。顔なんてまんま鬼じゃないかと・・・


 反論しかけた言葉をぐっと飲み込み、俺はもう一つの要件をお願いする。


「後、もう一つお願いがありまして、明日から少々遠出をする予定なので、1週間分の食料を確保したいんですが、干し肉等、旅路の保存食などはありますか?」


「干し肉はあるが、旅の食料か、それならアンガスの雑貨屋で一通り揃うぞ。って場所知らねえよな?」


「すみません。分かりません」


 そう答えると、店の場所を教えてくれた。


 その後は表の店に戻り、オークの代金大金貨1枚と金貨8枚を貰い、干し肉を7ブロック程買って[無限収納]へと仕舞う。


 店を出ようとした時、マークさんに「アンガスの雑貨屋に行くんなら俺からの紹介だって伝えろ」と言われた。俺はお礼を言って雑貨屋に行く事にした。


















 日も暮れ、夜の帳が下りる頃、少し道に迷ったが、アンガスの雑貨屋に辿り着いた。


 丁度店仕舞いをしようと店員が出て来た所のようだったので、慌てて声を掛ける。


「すいません。ここはアンガスの雑貨屋さんですよね?」


 そう質問すると、何処か優男っぽい雰囲気の男が返事をする。


「ええ、そうですよ。何か御用でもありましたか?」


 ギリギリセーフっぽいな。間に合ってよかった。 そう胸を撫で下ろし、返事をする。


「はい。実は明日から1週間程旅をすることになりまして、食料を買い出しに来たんです」


「なるほど、そうだったんですか。でも、それにしては遅い買い出しですね」


「すみません。急に決まったもので、伝手を辿ってこちらを紹介してもらったんですよ」


「へぇ、因みに誰からの紹介です?」


「肉屋のマークさんです」


「マークさんですか。それはそれは、いつもお世話になっていますからね、勉強させて頂きますよ」


 マークさんの名前を出した途端、態度が急に畏まった感じになったな、マークさん。やっぱただの肉屋じゃないな。


「ありがとうございます」


「いえいえ、立ち話も何ですので、中に入りましょう。あっと、自己紹介が遅れました。私はこの雑貨屋を経営しているアンガスJrと申します」


「あ、すみません。私の方こそ自己紹介が遅れました。私は山並 楽太郎と申します。山並は家名なので、楽太郎と呼んでください」


「分かりました。ラクタローさんでは、どうぞ」


 そう言って店の中へと促される。


 店内は者が雑然と並んでいたり、場所によっては積み上げられていて、圧迫感を覚えるが、不思議と何があるかが見て取れるように物が並べられている。ディスプレイが凝っているのか適当に並べたのが偶々そう見えるのか、判断に苦しむ並べ方だな。


 そんな事を考えているとアンガスさんも店に入ってきて、一声「それじゃ、旅の食料1週間分取ってきますね」と言って店の奥に行ってしまった。


 うーん、初対面の客を一人で置いて行くって、不用心じゃないかな?店の物を盗まれるとか考えないのかな? とも思ったが、知り合いの紹介で来た人物が盗みを働くとか考えにくいか。そんな礼儀知らずはまず紹介して貰えないだろう。そう考えると、まぁ、一人残して奥に引っ込んでもおかしくないか。


 そんな事を考えながら、店の商品を見て回る。


 箒や椅子、鞄やランタン、杖や壺等、色々と揃っている。


 その中でも目に付いたのが、フライパンや鍋、包丁等の調理器具やお皿やナイフ・フォーク・スプーン等の食器類だ。


 それらを見た時、出来立ての料理を[無限収納]に仕舞えば、保存食いらなくない? と思い付いてしまった。


 ・・・頼んだ手前、断るのは何か悪い気がするし、なんか、恥ずかしい・・・


 俺は考えた末に、保存食も買って、調理器具一式と食器を12セット、それとは別に深皿を30枚、それに水筒を3つに大きな水瓶を5つ買うことにした。


 暫らくするとアンガスさんが戻って来たので、追加注文をお願いすると、驚かれはしたが、嬉しそうに追加の商品を持ってきてくれた。


「それで、どうやって持って帰るんです?1人じゃ持てないでしょう?」


「いえ、アイテムボックスがあるので大丈夫ですよ」


「それなら安心ですね」


「ええ」


 そう言って代金を支払い、俺は買ったものを[無限収納]へと仕舞うと、礼を言って店を出る。


 後はラディッツ氏に30食分料理を作ってもらうだけだな・・・


 ちょっと無茶かもしれないが、材料は前にマークさんに解体してもらったオーク肉があるし、ラディッツ氏なら大丈夫だろう。


 そんな事を考えつつ、足早に宿屋へ戻ることにした。




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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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