第34話 楽太郎 スキルを試すとアクシデント・・・
中々書けませんでした。
申し訳ないです。
翌朝、準備運動を終え、食堂で朝食を摂りつつ、取得した地図を起動する。
視界の左下に半透明のカーナビが付いたような感じだ。この感覚に慣れる為に今日1日は地図を起動し続けよう。
あ、そうだ。序でに他のスキルも使い続けるか。 そう考え、「隠密」を起動。次に「追跡」を起動・・・って、誰を追跡すればいいんだ?
暫らく考えたが、100メートル以内に居そうなラディッツ氏を対象にして「追跡」を起動する。
起動すると、なんとなくラディッツ氏のだろう気配が自分の左斜め後ろ2メートルほど先に感じられた。「地図」ではどうなんだと思い、確認すると「地図」に赤い光点が付き、それと同時に何となく感じていたラディッツ氏の気配が消えた。どうやら「地図」と連動させると、「追跡」単体で感じる気配はなくなるようだな。
よし、次行くか。
100メートル以内に居ない相手を指定するとどうなるんだろう?
そう思い、ジェラルド氏を対象にする。
「地図」に付いた赤い光点の下に「ラディッツ」と名前が表示されただけで、他はそのまま何の反応も現れなかった。
あれ? どういう事だ、ラディッツ氏の名前が出たが、光点はそのまま付いている。
試しに今度はインディを対象にする。人間以外でも追跡できるかを兼ねた実験だ。
試すとラディッツ氏の光点から少し離れた納屋の位置に新しく名前付きの光点が現れ、ラディッツ氏の光点は消えなかった。
複数の追跡が可能なのか。 上限は幾つかな? うーん、試してみたいが名前が・・・って、「鑑定」使って冒険者ギルドで試せばいいか。「地図」は他の人には見えないらしいからな。
そう考えながら「地図」を弄っているが、周りからは特に不審に思われることは・・・ってラディッツ氏がこっち見てるよ。
「何か用ですか?」
「いや、用って程のもんじゃねぇが、飯食いながら変な顔してるから気になってよ。何か悩みごとか?」
そう言われると、確かにマップを弄りながらあれこれ考えてたからな、少々不審に思われたか。
「すみません。悩みじゃなくて、今日の行動予定を考えてたんですよ。ご心配かけました」
誤解を解くとラディッツ氏は「それならいいんだ」と言って仕事に戻って行った。
ふむ、「地図」を見る時はあまり表情を出さない方が良さそうだな。
って・・・あれ?「隠密」起動してたのに見破られたのか?
見破られたのに何のエフェクトも無かったって事は、見破られたかどうかがスキル使用者には分からないのか。
中々厄介なスキルだな。それにラディッツ氏はどうやら俺よりレベルが高いようだ。その内「鑑定」しようかとも思うが、なんか怖いからやめとこう。
その後は食事に集中し、食べ終わると俺は冒険者ギルドへ向かった。
ギルドの100メートル圏内に入ると、ジェラルド氏の光点が名前付きで現れた。
どうやら指定時に「地図」の範囲外に居ても、「地図」の範囲内に入れば「追跡」で指定した対象は光点で表示される様だ。中々便利そうだ。色々使えそう。
そんなこと考えながら冒険者ギルドに入り、ロビーにある角のテーブル席を1つ占拠する。
さて、それじゃ早速同時に「追跡」出来る限界を確認しますかね。一息つくと、近くにいる冒険者を片っ端から「鑑定」して「追跡」の対象にとっていった。
・・・
結果から言うと、同時に追跡できるのは5体というか、5個までだった。
6体目を対象にとっても「地図」に光点は現れず、「追跡」出来ず、数回試したができなかった。 追跡中の対象を外せば新たに対象を取ることはできたので、上限は5と言う事だろう。スキルが強化されればもっと増えるかも知れないけどね。
さて、これで「隠密」「追跡」「地図」の確認は粗方おわったかな?
そろそろギルドからお暇しよう。長居するとここ、碌な事ないからな・・・
そう思って腰を浮かしかけると、声を掛けられた。
「すまないが、少々時間を貰っても構わないだろうか?」
声の方に振り返ると、そこには全身鎧を着込んだ女性が立っていた。女性だと分かったのは兜を脱いでいたからだ。兜のままなら性別なんぞ分からなかっただろう。
ファンタジーっぽく、セミロングの赤い髪に整った顔立ち。可愛いと言うよりは美人と言う言葉が良く似合う人だね。スタイルは鎧で良くわからんけど・・・
こんな美人さんが俺に何の用だろう。
「失礼ですが、初対面ですよね? 私に何の用でしょう? 」
「ああ、すまない。私の名前はレイラ=カストールという。実は、私は今日冒険者になったばかりなのだが、仲間が居なくてな、できればその・・・パーティを組んで貰いたいんだ」
・・・どっかで見たことある名前だな。 レイラ、レイラ、レイラ・・・っと、あ! 確か王城に居た近衛騎士だ。 そういや俺この人殺しかけたんだっけ。 そう思うと少々 気不味いなぁ・・って、俺とパーティを組みたいだと?
どういうことだ? 理解が追い付かないんだが・・・
「すみませんが、順を追って話していただけますか? 何故私とパーティを組みたいんです?」
俺は驚きの表情のまま質問した。
「ああ、そうか。すまない。不審に思うのも無理ないな。実は受付のエミリー女史にパーティを組みたいが伝手がない事を相談したら、あなたと組むことを勧められたんだ」
エミリーさん。余計な仕事振るんじゃないよ。ほんとに・・・
「申し訳ありませんが、私はソロでの活動が性に合っているんで、パーティを組む気はないんですよ。申し訳ありませんが、他の方をあたってください」
俺は即行で丁寧にお断りをする。これでお相手終了。お終いお終い、さっさとここ出よう。・・・と思ったんだけどね。彼女は引き下がらなかった。
「初対面で厚かましいのは重々承知なのだが、どうしても組んで頂きたいのだ」
額をテーブルに擦り付けんばかりに頭を下げられる。
・・・正直、どうして良いかわからない。初対面の相手にそこまでする理由がわからんのよ。
困った。
「すみませんが、頭を下げられてもパーティを組むのは無理です。顔を上げてください」
「承知して頂けるまで顔を上げる事はできん!」
何か、必死な声で叫ばれた。 周りを見ると、心なしかこちらを窺う視線があちこちから・・・視線が痛いよ。
席から抜け出そうとしたが、出口を塞がれてる形なので抜け出せない。 その場で立って抜けようにも自分のお腹が・・・憎らしい。
参ったな。単純に敵対されるなら対処は簡単だが、頭を下げられ、お願いをされると断りにくい。それに事情を聴いたらそれこそ泥沼に嵌るが如く、済し崩し的にパーティ組まされてお終いだろう。
現状は詰む一歩手前。起死回生の一手はどうすれば・・・
俺が考えてる間もレイラは頭を下げたままの姿勢を崩さず微動だにしない。
時間が経つにつれて、周りの視線が非常に痛い。 どうしてこうなった。
「一つ聞きたいのですが、どうして私なのですか?」
「・・・」
なぜか沈黙された。
「頭を下げてまで私とパーティを組みたい理由を教えて頂きたいのですが?」
言葉を重ねると、何故か震えだした。
「こ、ここで答えるのか?」
ふむ、人に聞かれるのは不味いのか? 俺とパーティ組む理由聞いてるだけなんだがな。しかし、良い切り口になりそうだ。
「人に聞かれて不味い理由なんですか? 私とパーティを組みたい理由は?」
「・・・」
案の定、言葉が返ってこない。 おし、一押しすれば断れるかもしれんな。
「人に聞かれて困る様な理由であれば、裏がありそうですね。そうなると益々あなたとパーティを組む気にはなれません。申し訳ありませんが、他をあたってください。私も暇ではないので退いて貰えます?ここから出れないんですよ」
あくまでも丁寧に、だが、『こちらは全く興味ありません!』と言う姿勢を崩すことなくそう言うと、レイラは更に震えていたが、意を決した様に顔を真っ赤にして言葉を発する。
「せ、説明はし辛いんだが、エミリー女史に助言を貰ってあなたを直接見た瞬間。魂が揺さぶられたというか。人を見ただけでこれほどの衝撃を受けたのは初めてだったんだ。これは私にとって運命の出会いであると確信している」
青臭い10代の頃だったら愛の告白と勘違いしていたかもしれん。 しかし、30超えたおっさんは夢を見ない! つまり勘違いなんてしないんだよ。
レイラの言葉をじっくり吟味し、考えた結果、レイラの勘違いだという結論に至った。
おそらく本当の初対面の時に殺されかけた事が本能に刻み込まれたのだろう。そして同一人物である俺に再会した結果。本能が危険信号を発したのではないかな? それがレイラ曰くの『魂が揺さぶられた』と言う事なのだろう・・・きっと。
自信ないけど。
さて、どうしたものか。勘違いだと告げても多分納得しないし、納得できる情報を与えることも出来ない。 一番は俺の安全だしね。
頭を下げたままのレイラを見詰めつつ、思案した結果。『実力差で諦めて貰おう』こういう内容で行く事にした。
一応無駄だとは思うが、「勘違いだろう」発言はしとくか。
「初対面で受けた衝撃って言うのはおそらく勘違いだと・・・「断じて勘違いなどではない!」」
やっぱり説得は無理そうだ。言葉の途中で否定されちゃったよ。
「仕方ない。穏便に済まそうと思いましたが、正直に答えます」
前置きをするが、レイラ動じない。
「私とあなたでは実力が違いすぎるんですよ。なので一緒にパーティは組めません」
キッパリと断ったぞ。 さぁ、次の反応はほぼテンプレだろうが、心の準備は出来ている。
案の定、レイラは顔を上げると、真剣な眼差しでこちらを見据えて言った。
「では私の実力を直接確かめて欲しい。その結果、大きく実力が違うのであれば、私も諦めよう」
やっぱりテンプレだった。まぁ、俺も同じテンプレで返すんだけどね。
「具体的には?」
「模擬戦で勝負願いたい!」
「よろしい」
そう言ってレイラは立ち上がり、受付カウンターに歩いて行く。
・・・俺? 俺も勢いに乗って立とうとしたんだが、お腹がテーブルに閊えて直に立てなかったんだよ・・・くそっ! 恥ずかしぃぃぃぃ!
俺はレイラが去るのを見送りながら、テーブル席を横移動しつつ、コソコソとレイラの後をゆっくりと歩いて行った。
一瞬出口に行こうとも考えたが、2日後にまた来るわけだし、その時に余計な時間を取られるのも困るのでやめた。
決して周りの視線や雰囲気が痛くてできなかったわけではない!