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第19話 トレイン

なんとか書けました。

 俺達は街門を出て、辺りに人がいないのを確認すると、走り始めた。

 歩くと片道2時間掛かるので、歩いていたら着いてすぐ引き返す羽目になる。


 そう思ってインディと走っていると、インディが一声吠えて俺の動きを止めさせた。


 不審に思うと、インディはもう一度吠え、今度は唸りだした。


 俺は何かあると直感し、慌てて「気配察知」を使い周囲を確認する。


 果して結果は・・・ こっちに向かってくる気配が3つあった。


 3つ共こちらに向かって走っているような速度だが、2つは固まって、もう1つはそれを追いかける様に走っている様だ。


 この街道を移動する気配は初めてだ。 しかも走ってるようだし、何かありそうだな。


 俺は用心の為、「無限収納」から十文字槍を取り出し、周りを警戒する。


 スキルが絶対とは限らないからな。


 取り敢えず、今いる位置は畑と草原エリアのちょうど境目のような所だ。

 槍を構えつつ、ゆっくりと進んでいくと、冒険者風の男2人組が必死の表情で走ってきた。


 俺は警戒を強め、男2人に槍を突き付け質問する。


「何があった」


「ヒィッ!」


 いきなり突きつけられた槍に驚いている様だ。

 焦っているようで、挙動がおかしい。


 俺はゆっくりと、噛んで含める様に、もう一度

「この先で、何があった」


 槍を持って警戒する俺に恐れたのか、声を出そうとしているが、震えるだけで、言葉は出てこなかった。


 警戒を緩めず、もう一度問い質そうとすると、2人の後ろから3人目の影が見えた。


 次第に近づいて来ると、先日見張りをしていた冒険者達の中の1人のようだ。見覚えがある。

 そちらは女性だったが、やはり必死の表情で走って来た。 良く見ると、左腕を負傷している様だ。


 男2人は彼女を見ると、驚き逃げ出そうとするが、槍を突き付け、動きを制する。


「何があったんです?」


 男達に槍を突き付けたまま女性に近付き、質問する。

 すると彼女は怒りの表情で男達を見て、怒鳴った。


「そこの馬鹿2人がカーチス防風林からモンスターを引っ張ってきたのよ!」


 ・・・トレインかよ。 聞いた瞬間、苛ッとした。


 感情の赴くまま半眼で男2人を睨みつけると、慌てて逃げ出そうとするので、槍の石突で小突いて昏倒させた。


 それを見た女性は一瞬呆然としたが、俺の台詞で我に返る。


「モンスターの種類と数は分かりますか?」


「え、えぇ、ゴブリンが20~30匹位よ」

 ふむ、それ位なら何とか殲滅できるな。


「それなら倒せますね」


「それが、最近はゴブリンが強くなってて、あれだけの数が居たら私達でも歯が立たない! だから王都で応援を呼ぶ為に私が先行して走ってるのよ!! 貴方も早く逃げなさい!」


 そう言って走り出そうとするが、俺が質問を重ねると、足を止めて答えてくれる。


「お仲間さんは?」


「ゴブリンの足を少しでも遅らせるために、足止めに残ったわ・・・ 一応撤退しつつ防戦してる筈よ。 もう、良いからあなたも逃げなさい!」


 言葉の後半が弱々しくなっている。

 心配なのだろう。

 そんな状況でも俺の事を気遣ってくれるとは、冒険者にしては良い人だな。


 そんなことを考えていると、敵性気配が5つ程近付いてきた。


「お仲間さん、全ては防げなかったようですね」


 そう言って槍を構えると、草原から飛び出してきたゴブリンに槍を突き込む。


 突き刺したゴブリンの左右から新しくゴブリンが飛び掛かって来たので、突き刺したゴブリンの喉を左右に引き裂くように槍を振って、槍の横手で2匹のゴブリンの首を刺す。


 その後ろから更に2匹が飛び掛かってきたが、タイミングを合わせて横に一閃。

 2匹の首が転がった。



 その戦いを見ていた女性冒険者は、またも呆然としていた。


「どうしました? 早く王都に行かないと応援が呼べませんよ?」


 そう言うと、我に返ったようだ。


「あなた、強いのね」


「えぇ、ゴブリンに後れを取らない程度には戦えますよ」

 戯けたつもりだが、皮肉にも取れるかな?

 ちょっと心配したが、そんなことは杞憂だったようだ。


「それなら、私の仲間を助けてくれない?」

 切羽詰っているのだろう。真剣な表情で頼み込んできた。


「えぇ、良いですよ。ただ、討ち漏らしがあると不味いので、畑で働いてる農夫の方々を避難させて、警備隊にも連絡するよう伝えて貰えませんか?」


「ありがとう。恩に着るわ。 私はベルタって言うの。 貴方は?」


「楽太郎と言います」

 時間がないので短く答える。


「それじゃ、ラクタロー。私の仲間をお願いね。報酬は帰ってからって事でいいかしら」


「ええ。それで構いませんよ」


 俺の返答を聞くと、ベルタは畑の方へ走って行った。


 さて、俺も先を急ぐか。

 近くに敵性気配がない事を確認し、全速力でカーチス防風林の方へ向かう。




 全力で1分ほど走ると、怒声や咆哮に交じって、時折金属音が響いてくる。

 「気配察知」は使いっぱなしなのだが、ちょっと不味い事になってる。中央に人の気配が5つあり、それを囲むように敵性気配があるんだが、 数が45あるんだよ。

 聞いていた数とあまりにも違うんだが、仕方ない。今はそれどころじゃない!


 全速力のまま俺はその集団に突っ込み、槍を当たるに任せて振り回す。


 槍に当たったゴブリンが切れたり吹っ飛んでいくが、勢いは落とさずにそのまま突っ込むと、大声で声を掛ける。


「ベルタの頼みで助太刀に来た! 生きているなら返事をしろ!」

 そう問いかけると、返事があった。


「今のところは全員生きている! だが、防戦一方でどうにもできない!」

 なる、そいじゃ、そのまま持ち堪えて貰いますか。


「分かった! それならそのまま防いでいろ! 決して無理な攻撃はするな! 俺が何とかする!」


「了解だ! 感謝する!」


 おし、これで暫らく持つだろう。

 あとはこいつらを殲滅するだけだ。


 俺は槍を握り直し、ゴブリン達と対峙した。



 ゴブリン達は包囲の輪を緩めず、俺に10匹ほど向かわせたが、俺はそいつらをほぼ無視して、冒険者達を包囲しているゴブリン達の背中を突き刺しながら、ぐるっと回る様に走り抜けた。

 何匹かはこちらを振り返ったが、防御行動を取る前に絶命していた。


 俺を追っていたゴブリン達は俺の走りに付いて来れないどころか、俺が奴等の最後尾に追いつき、序でに背中を突き刺して回ったくらいだ。

 途中で気付かれたようだが、その頃には大半を始末し終わっていたので、残りもサックリ止めを刺した。


 その頃になると、冒険者達も助かったことが分かったのだろう。

 安堵の息を吐こうとしていたが、俺が叱咤し、警戒を緩めさせなかった。


 残りは5匹か。 そう思い、残りのゴブリンを見ると、既に逃走に移ろうとしていた。が、インディが行く手を阻む様に飛び出し、残りを始末した。


 俺は「気配察知」で敵性気配がない事を確認すると、ホッと一息つき、殲滅したことを冒険者達に告げた。



 冒険者達は俺の台詞を聞くと、地面に倒れ込んだ。

 限界だったのだろう。

 何となく、建御雷様との運動を思い出す。


 うむ、あれは正しく地獄だった・・・


 っと、そんな事より、彼等が大丈夫か鑑定で確かめよう。

 そう思い全員を鑑定するが、幸い全員が軽傷で済んでいる様だ。これなら回復魔法も要らんよね。


 そんなことをやっていると、息が整ったのか、リーダーのミロが声を掛けてきた。


「ありがとう。あなたのお蔭で何とか生き残れたよ」


「お礼ならベルタさんに言ってください。彼女が俺に助けを求めなければ、俺はここまで急いで来ることはなかったんですから」



「そうか、後で礼を言っておくよ」

 と、ミロは嬉しそうに笑った。


 ふむ、イケメンスマイルだな。

 俺に使っても効果はないぞ!


 まぁ、それはさておき、


「いったい何があったんです?」

 と事の顛末を聞いてみた。



「俺達も良くは分からないんだ。ただ、2人組の冒険者がゴブリンから逃げる様に走って来て巻き込まれたんだ。俺達も逃げたかったんだが、ゴブリン達が王都に向かって真っ直ぐ逃げる2人組を追いかけるんでな、王都を守るために、仕方なく俺達が攻撃して方向を変えようとしたんだが、包囲されてしまってね。後はそのままズルズルと防戦を強いられていたんだ」


 ふむ、先程の馬鹿2人がトレインして王都に被害が出そうになったので、ミロたちはそれを阻止しようと動いたって事か、無謀だが、良い人たちだな。ホント。


 おっと、そうだった。 さっきの2人を確保しないと。

 恐らく今回の首謀者だ。


「すいません。その冒険者2人を確保したいんで、一旦戻りますね」


「え?! どういうことだい?」


「先を急ぐんで後でぇぇぇぇぇー」


 そう言ってミロ達を置き去りにして、先程の場所へ走り去る。













 先程の場所に戻ると、冒険者2人が起き上がろうとしているところだった。


 俺は問答無用でもう一度小突くと、昏倒した2人の足を引っ張ってミロ達の元へ戻る。


 冒険者2人を引き摺る事になるが気にしない。 自業自得だ。













 ミロ達の元に戻ると、どうやら全員ある程度 回復したようだ。


「すいません。何か縛るものありません?」


「一応ロープがあるけど、どうするんだ?」

 そう言ってロープを渡してくるミロ。


「この馬鹿共を縛り上げるんですよ。逃げられると困るんで」


 そう言いながら手早く縛り上げる。

 ミロはその間も何も言わなかった、どうやら俺の答えに納得したようだ。


 その後俺はゴブリンの魔石をインディに回収してもらい。

 俺は頭部の残ったゴブリンを「無限収納」に仕舞っていく。


 作業が終わると、俺はミロに声を掛けた。


「それじゃ、王都に戻りましょう。 こいつ等をギルマスに渡して尋問しないとね」


 そう言って軽く冒険者2人を小突く。


「ああ、俺達ももう疲労困憊でまともに動けそうにないからな。今日は早く休みたい」


 そう言って他の面子を促し、一緒に王都に帰る事になった。




 途中女性2人が動けなくなったので、俺が2人を背負うことになった。


 縛った冒険者2人はインディにロープを咥えさせ、引き摺らせている。


 むさ苦しい男を引き摺るより、まだ女性を背負った方がマシだからな。



 そんなこんなで、草原地帯を後にした。




ご指摘等あればよろしくお願いします。


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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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