表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/199

第16話 道草

 勢いで書いています。



 えー、取り敢えず、王都に戻りはしたんだが、中々ギルドに足が向かなかった。

 理由は単純で、オークキングの事。どう伝えよう・・・

 その上手い伝え方が思いつかなかったんだよね。




 どう伝えようかと考えながら街中をフラフラ歩いていると、美味しそうな肉の焼ける匂いが漂ってきた。

 匂いの元を辿ると、屋台で串焼きになってる肉が目に入った。

 う~ん。美味そうな匂いだ。


 そういえば夕食まだだったな・・・

 そう思い屋台に顔を出す。


「すんませーん、おいしそうな匂いに釣られて来ました」


「おぅ、らっしゃい! って、こないだの兄ちゃんじゃねぇか!」


 あれ?知ってる人だっけ?

 うーん。・・・ あ!初日に食べた屋台のオッチャンか!


「あぁ! こないだのビッグボアの屋台のオッチャン!」


「おう!当たりだ兄ちゃん!」


「今日は何の肉なんです?」


「おう! 良く聞いてくれた! 今日は少し高いんだが(・・・・・・・)、滅多に出回らねぇ絶品のホロホロ鳥だ! 煮て善し!焼いて善し!なんでも御座れだ!」


「美味そうですね!」


「おう! 今日は俺特製のタレで焼いた串焼きだぜ! ほっぺた落ちちまうぜ! 少し高い(・・・・)けどな!」


 おぅ、少し高いをやけに強調するな。


「1本お幾らですか?」


「おう! 1本銅貨4枚だ!」

 ふむ、前より倍の値段か。

 しかし、まぁ美味いのだろう。


「それじゃ、試しに1本お願いします」


「おう! 毎度~!」


 そう言って1串差し出してくるので、無限収納から銅貨を4枚取り出して渡し、串を受け取る。

 うむ、良い匂いだ。 涎出てきた。

 俺はそのまま一口頬張る。


 程よい肉汁と肉そのものの弾力にタレの味がマッチしたとても美味しい1串だ。

 これなら銅貨4枚でも問題ないな! だって美味いんだもの。


 俺は追加で串肉を5本注文し、『無限収納』にしまう。

 夕食は宿で取るから、夜食に食べるためだ。

 あとはインディにも食べて貰うか。


 俺は以前と同じようにインディ用に解体後の肉を3羽分売ってもらう。

 1羽 銀貨4枚で合計大銀貨1枚と銀貨2枚をオッチャンに支払う。


 オッチャンはインディに鳥肉を銜えさせると、満面の笑顔になってお礼を言ってきた。


「ありがとよ兄ちゃん! これで明日も商売できるぜ!」

 うん?どういう事だろう。


「そんなに商売きついんですか?」


「おっと、口が滑っちまったな! すまん。 お客に言う事じゃないんだがな。最近 肉の値段が上がってるんだよ」


「そうなんですか?」


「おう! なんでも冒険者ギルドから卸されてる肉の量が段々と減って来てるそうなんだよ」

 ふむ、カーチス防風林絡みの事で狩猟が上手く行ってないのかね。


「そうなんですか」


「ああ、何でもカーチス防風林とその近辺の森に強力な魔物が出没するらしくてな、中々狩りが出来ないらしい。って、そういや兄ちゃんも冒険者なんだっけな?」


「ええ。そうですけど?」


「実際どうなんだ?あの辺りは?」


「うーん、今の状況だと、初級冒険者は無理ですね。ゴブリンに瞬殺されるでしょうね」


「なんだって!?」

 おっと、しまった。口が滑った!

 俺は慌ててオッチャンの口を塞ぐ。


「おっと、今の内緒にしといてくださいよ? 一般にはまだ具体的な内容は流せないんですよ。 私もギルマスに怒られるの嫌なんで」

 そう言うとオッチャンは首を縦に振ってくれた。

 良かった良かった。

 俺はオッチャンの口から手を放す。


「まぁ、そんな感じで今はギルドでは立ち入りを制限してるんですよ」


「な、なるほどな。はぁ、しかし、そうなると暫らくは肉の値段が上がったままか・・・ 参ったな」

 肩を落とすオッチャン。

 うーむ、なんか、助けてあげたいな。こんな美味い串焼き焼けるんだし、なんとか・・・って、あ、そか。


「オッチャン。肉の仕入れに困ってるんでしたら、なんとかならなくもないですよ?」


「ん? どういうことでぇ? 兄ちゃん」


「オークの肉で良ければ、私が融通しますよ」


「?! ほ、本当か? オークっていやぁ結構な高級肉だぞ!」


「そうなんですか?」


「おう! 討伐レベルが中級冒険者以上だからな! その分ビッグボアなんかより格段に高い! 串焼きに使うには贅沢すぎるぜ!」

 なんか、高級肉らしい・・・


「そうなると、オッチャンじゃ使い辛いってことですか?」


「ま、まぁ、そうだな。 串焼きで使うにゃ勿体ない。が、他のメニューで出せば良いだけだぜ!」

 そう言う事か。


「因みに相場って幾ら位なんです?」


「そうだな、最近の相場だと、1体で金貨3枚と大銀貨5枚だな」

 オークって、狩猟としてはかなり美味しい魔物なんだな・・・

 取り敢えず3体分位は出しても良いだろう。


「オッチャン。今なら3体分ありますよ。 纏めて引き取ってもらえるなら、全部で大金貨1枚に負けますけど、どうします?」


「3体もか! 兄ちゃん。見た目に由らず強いんだな」

 そう言ってオッチャンは視線を俺の上から下に動かす。

 なんて失礼な! いくら俺が・・・でも、そう見られがちでも傷つくわ!


 暫らく繁々と見られるので、俺が軽く咳払いをすると、オッチャンは謝罪してきた。

 うむ、常識あるオッチャンで良かった。


「おっと、すまねぇ。 負けて貰えるんならもちろん3体とも纏めて引き取るぜ!」


「了解です。それでは、何処に持って行けばいいんですかね?」


「おう! それじゃ今日はちと早いが店閉めるからちょっと待っててくれ!」

 そう言って屋台をたたみ始めるオッチャン。

 慣れた手つきで手早く屋台を片付け、5分ほどで移動可能な形にしていく。


「おう!待たせたな! そんじゃ、知り合いの肉屋に行くから付いて来てくれ!」


 そう言って歩き始めるので、俺はインディと一緒にオッチャンの後を付いて行った。


 暫らくすると、1軒の精肉店。『肉屋 マーク』の前でオッチャンは足を止めると、中に入り、店主を呼び始めた。


「おーい! マーク! 来てくれ!」


 暫らくすると、奥からだみ声と一緒に厳ついオッサンが出てきた。

「うるせーぞ! ルッツ! 何の用だ!」


 手には血塗れで大き目の肉切り包丁(ブッチャーナイフ)が握られている。

 長く伸びた口髭にも血がべっとりと付いている。

 身に着けたエプロンにも、もちろん返り血がたっぷり付いている。


 なんてホラーな出で立ちだ・・・ 俺は余りの光景に一歩引いてしまっていた。


「すまんな、マーク。 実はオークを解体するんで、場所を借りたいんだ」


「なに?俺を解体するだと?!」

 厳ついオッサンの顔が険しさを含み始める。

 心なしか肉切り包丁(ブッチャーナイフ)が震えているように見えるが、気のせいだよな・・・


「違うって! オークだよ! オーク!」


「なんでぇ、オークか。って、お前が仕入れたのか?」

 驚いた顔をする厳ついオッサン。・・・まぁ、マークでいいか。


「これから仕入れるんだよ!」


「誰からだ?!」


「この兄ちゃんからだよ!」


「ほぉう・・・」


 そう言ってマークは俺の体をジロジロと眺めてきた。

 くそ!見た目がひ弱そうに見えるというのか・・・、全く、失礼な奴らだ!


「この兄ちゃん。化け物だな。ルッツ! この兄ちゃん怒らせるんじゃねーぞ!」

 ?! 俺の強さに気付いたのか? このオッサン!


「なんだって?マーク。化け物ってどういうことだ?」


「言葉の通りだよ。おっそろしく強いぞ。この兄ちゃん」

 そう言ってこっちを見てくる厳ついオッサン。


「良くわかりましたね。普通、私を見ると、皆さん弱そうだと思われるんですが、どうしてわかったんですか?」


「俺にゃぁ「観察」ってスキルがあるのよ。そのスキルで大体わかるんでぇ」

 なんと、「鑑定」によく似たスキルだな。ってことは、似た様な性能なのだろうか。


「なるほど。それで合点がいきました」


「おめぇも悪い奴じゃなさそうだな」


「ありがとうございます」


「なるほど、兄ちゃん。やっぱ強かったんだな! っとそう言やぁ、名前言ってなかったな。俺はルッツって言うんだ。そっちの厳ついのはマークだ!」


「私も名乗っていませんでしたね。 私は山並 楽太郎と申します。 以後お見知りおきください」


「ヤマナミ?」


「あぁ、そっちは名字で、っと所謂家名でして。名前は『楽太郎』です」


「ラクタローか。分かったぜ!っと、おい、マーク! 裏借りるぞ!」


「あぁ、好きに使いな!」

 そう言うと、マークは奥に引っ込んでいった。


「ありがとよ!」

 オッチャンはそう言うと、こっちを振り返った。


「そいじゃ、ラクタロー。オーク持ってきてくれ」


「ここに出せば良いんですか? 血で汚れますけど、良いですか?」


「うん? どういうことでぇ?」

 ルッツは訳が分からないといった顔をしたが、


「まぁ、解体場所まで連れて行ってください。そうしたら分かりますよ」

 そう言って俺は解体場所に行くよう促す。


「ふむ、ま、そう言うならいいか。そいじゃついて来てくれ」

そう言ってマークが戻って行った奥へと歩き出す。




 店の奥に入ると、大きな扉があり、そこを開けると、肌寒く感じる空間に出た。

 中に入ると、血生臭い匂いが漂ってくる。 なんか、吐きそう・・・

 それに加え、鳥や豚っぽいのや、なんかよくわからんワニのようなのが皮を剥がれた状態でフックに吊られている。

 なんてグロいんだ・・・ ホントに吐きそう。


「ここが解体場所だ」

 ルッツは平気な顔して言ってくる。


「ここ、匂いも景色もきついですね」


「うん?あぁ、そうだな! こういうのが初めてなら吐くかもしれんな」

 笑顔でそう言ってきた。

 なんか、意地でも吐きたくない。


 俺は辺りを見回して、手術台の様なテーブルを指差し、確認する。

「ここにオークを出せば良いですか?」


「おう!そこに持ってきてくれ」


「分かりました」

 そう言って俺は「無限収納」から首のないオークをまず1体出す。


 それを見たルッツは納得顔をしていた。


「おめぇさん。アイテムボックス持ちだったんだな」

 ふむ、それが一般的なスキル名なのかな?


「えぇ、そうですけど? 珍しいですか?」


「まぁ、珍しいっちゃ珍しいが、そのスキル持ってるのは殆んどが商人だったりするから、ちと驚いただけだよ」


「それじゃ、残り2体はどこに出しましょう?」


「おう!その辺に適当に出してくれ!」

 そう言って1体目の状態を確認していくルッツ。


「分かりました。 それじゃ、この辺に出しときますね。あ、そうだ。まだ魔石取り出してないんで、解体の際に魔石だけ回収させてもらいますね」

 そう言って適当に首のないオークを2体出しておく。


「分かったぜ! って、魔石も回収してない状態で持ち帰ってくるとは、こりゃかなり状態が良いぜ!」


 そう言ってオークの状態を確認つつ、嬉しそうにオークの血抜きをして、魔石も取り出していく。

 余程状態が良かったのか。 ホントに嬉しそうだ。




 3体とも血抜きを始め、魔石を取り出すと、俺の方に魔石を渡してきた。


「ラクタロー。これなら大金貨1枚と金貨3枚は出せるぜ。状態は最高だ!」

 そう言って満足そうにオークを眺めるルッツ。


 ありがたい申し出だったが、俺は最初の金額で取引する事にした。

 だって、後から金額変えるのって、申し訳ない気がするんだよね。


 そんなこんなをしていると、マークが奥からやってきた。


「おう、ホントにオーク3体あるじゃねーか! すげぇな」

 そう言ってマークは肉質を確かめる様にオークを観察する。


「へへへ、いいだろぉ! まるで絞めたての様な状態だったからな。血抜きも上手く出来るし、最高の肉だぜ!」


「うむ、俺なら1体金貨4枚と大銀貨5枚出してもいいくらいだ」

 ルッツとほぼ同じ額だな。なるほど。それ位出しても良い程、状態が良いようだ。


「それじゃラクタロー! 少し待っててくれ。 金取ってくるぜ!」

 そう言って解体所から出て行くルッツ。


 俺も店の方に移ろうと、解体所を出ようとしたが、マークに止められた。


「おう!ラクタロー! すまんが、次オークが手に入ったら。俺にも売ってくれねぇか?」

 なる、肉屋の親父らしく、商売っ気たっぷりだ。


「良いですよ。 またオークを狩れたら持ってきますね」


「おう!頼むぜ。 オーク以外にも買い取れそうな物があれば持ってきてくれ!」

 そう言うと、ニッカリ笑う。

 服装が血塗れじゃなきゃ、いい笑顔なんだがな。


「分かりました」

 そう言って俺は店の方に戻った。


 解体所から出ると、空気が新鮮だった。


 暫らく店の方で待っていると、ルッツが戻って来た。


「おう! 待たせたな! これが約束の大金貨1枚だ!」

 そう言って大金貨1枚を俺に差し出してきた。


「確かに。受け取りました」

 俺は確認すると、大金貨を「無限収納」に仕舞った。


「ありがとよ! ラクタロー! これで暫らく商売ができるぜ!」


「こちらこそ良い取引が出来ました。 それでは失礼します」


「おう!また頼むぜ!」


 そう言って俺は店を出て行く。


 結構いい稼ぎになったな。

 さて、日も暮れたし。宿屋に戻るか。

 何か忘れてる気がするが、まぁ、思い出せないんじゃ、大した事じゃ無いだろう。




 俺は宿屋に戻ると、ホクホク顔で夕食を食べた。

 今日の夕食も美味しかったが、夜食に残しておいた串焼きはまた絶品だった。


 余談だが、串焼きを食べてるところをリンスさんに見付かり、1串取られたのは痛かった。

 その後もリンスさんにどこで買ったのかしつこく聞かれた。 余程美味かったのだろう。

 一応ルッツさんの屋台だと答えたが、場所が説明できなかったので今度連れて行く羽目になった。・・・面倒な事にならなきゃいいけど。







 さて、明日に備えて今日は寝ますかね。そう考えベットに横になるが、やっぱり何か忘れてるな・・・


 うーん・・・あ、ギルド行くの忘れてた。






 素人作品なので、ご指摘等あれば、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


小説家になろう 勝手にランキング
ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ