プロローグ2
この先が思いつかないかもしれません。
あれから暫く、神様に出してもらったコーラをぐびぐび飲みながら神様と雑談していると、後ろから男の声が聞こえた。
「帰ったぞー! ったく、手古摺らせやがって、とりあえず、今回の元凶とその他2柱を捕まえてきたぞ!猿田彦ぉー!」
声の方を振り向くと、ちょい悪系の大柄な男がスーツをラフに着こなし、立っていた。
肩に担いでいる大きな麻袋が違和感半端ないけどね・・・あっ!袋が動いた?!
「大人しくしろっての!」
男は悪態を吐きつつ麻袋を肩から落とした。
麻袋から呻き声が聞こえたが、気のせいだろう・・・きっと。
ここでようやく神様が返事をする。
「建御雷、ようやく戻ったんじゃな」
「応!向こうの奴らにはちょいときつめにお仕置きしといたぜ! 元凶と唆した奴はこの通り捕まえてきたぜ!」
「出来した! 楽太郎君、待たせたの。これで魂を半分にする処置を始められるんじゃよ」
そう言って神様がこちらを振り向く。
神様が増えたな。これからは固有名で分けるか。
「猿田彦様。その前にその袋はなんです?微妙に動いてますけど」
その質問には建御雷様が答えてくれた。
「これか? これは今回異世界召喚を向こうの人間に指示したアホ神とそうするよう仕向けた間抜けな神だよ!」
そう言って袋に一蹴り入れてから袋の結び目を解き、逆さにして中身を振り落す。
建御雷の足元に落ちてきたのは亀甲縛りされた3人の美女だった。
「・・・」
あまりにもあんまりな登場だった。3人とも美女であることは間違いないだろうが、3人とも泣いてるし、あちこち怪我したり青痣ができてる。むぐむぐ言ってるが猿轡されてるから何言ってるのかわかんないし、神々しい雰囲気なんて微塵もない。
「・・・神様?」
「なんじゃ?」
猿田彦様が返事をする。
「ああ、いえ、猿田彦様じゃなくて、この人達も神様なんです?それにしては神様らしい雰囲気が微塵もないんですが・・・」
「ふむ、一応向こうの世界の神なんじゃが、儂らからすると神格が低すぎるんじゃろうな。儂らを見た後じゃ、神として霞んで見えるんじゃろう」
格の違いってことかな? うーん、ま、深く考えるのはやめよう。
それよりも猿田彦様と建御雷様が色々と準備をしている。なんか手術台みたいのも運んでるよ。
「あのー、猿田彦様 何してるんです?」
「うん? ああ、おぬしの魂を2つに分ける準備をしておるんじゃよ。善は急げじゃ。あと5分程で準備は終わるから待ってて欲しいんじゃよ。おっとそうじゃ」
猿田彦様は亀甲縛りされた美女達に近づくと、ひょいと持ち上げ手術台の上に仰向けに固定してそれぞれの美女の左乳房を露出させる。
「ちょ、ちょっと神様!なにしてるんです?!」
流石に止めようとすると、猿田彦様は事も無げに説明する。
「準備じゃよ。此奴等からエネルギーを絞り出して君の魂のエネルギーに変換するんじゃよ。儂らも人間と同じで心臓部分が左胸付近にあるのでな、そこから直接吸い出すんじゃよ」
そう言いつつ、それぞれの美女の左胸に機械を当てる。・・・まるで搾乳機みたいだな、見た事ないけど。
それからも暫く猿田彦様はあれこれ準備をしているようだ。
そう言えば、建御雷様はどこ行ったんだろう? そう思って辺りを見回すと、さっき俺が座っていたソファーでコーラを飲んで寛いでいた。
視線に気付いたのか、こちらを向くと声をかけてきた。
「お前もこっち来て飲むか?」
「いいんですか?」
「猿田彦の準備が終わるまで俺に出番は無いからな、お前もこっちでのんびりしてろ」
「分かりました。それじゃ、お邪魔します」
そう言って俺は建御雷様の対面のソファーに座ってコーラを飲む。
黙々とコーラを飲むのもあれなんで聞いてみるか。
「建御雷様、コーラお好きなんですか?」
「急になんだよ、俺がコーラ飲むのは変か?」
「いえ、なんか神様ってお酒を飲んでるイメージが強くて、意外だなぁって思ったんですよ」
「うーん、そう言われるとそうかもしれんな、神話とかでも酒盛りの話とか多いしな。まぁ昔は娯楽が少なかったから酒位しか楽しみがなかったんだよ。今は色々娯楽が増えて楽しいぞ。おれも酒よりこっちの方が好きだしな。酔っぱらうこともないし」
と言ってコーラの入ったコップを此方に見せてくる。
「そうなんですか、実は私もコーラ好きなんですよ。コーラにはコック派とかペシリ派がいるんですが、私はどちらも好きなんでどちらの派閥にも入ってないんですよ」
「そうなのか、俺はどちらかというとコック派かな。ペシリは昔薬臭い味がしてたからな」
「なるほど、確かに昔はそうでしたね、今は製法を変えたのか、おいしくなりましたもんね」
「最近はナッツコーラも出てるんだが、どうなんだ?まだ味見してないんだが。特保だと不味そうなイメージがあってなぁ」
「あれは少し癖がありますね、コーラはコーラなんですが、飲むと微妙に違和感があるというか、後味が微妙に渋い感じがしますね」
「なるほど、お前さん中々コーラに詳しいな。向こうに行っちまうのが惜しいな」
「ありがとうございます。でも猿田彦様にも言われましたが、地球には2度と戻れないそうなので、仕方ないですよ」
「ふむ、可哀想になぁ、向こうにはコーラはおろか炭酸飲料自体が無いからな。ここで飲むのが最後のコーラになるのか」
「・・・こ、こ、こ、こ、コーラがナイィィィィィ?!」
俺は悲鳴を上げた。
建御雷は淡々と答えた
「無いぞ」
「ま、ま、ま、マジでぇぇぇぇぇ?!」
「マジだ」
俺は倒れた・・・
気が付くと、俺はベッドので寝ていた。
起きようと体を動かすが、力が入らない。
体がだるい、頭が重い・・・ぼーっとする。
「う、うぅ~ん?」
「目が覚めたかね、楽太郎君。君が急に倒れたので、都合がいいのでそのまま魂を2つに分けたんじゃよ。その所為で今君は体がうまく動かせないはずじゃ、今からエネルギーを注入するから力を抜いてリラックスするんじゃ」
神様の声? うーん、もう一寝入りしろってことか? 頭がぼーっとするし、寝よう。
そんなことを考え、体の力を抜いて寝る態勢に入ると、神様の声が聞こえた。
「そうそう、そうじゃ、そのままじゃよ。今からエネルギーを入れるからのぉ。ほいっと」
そう言いながら
そんな声を聞いたとおもった瞬間、くぐもった悲鳴のようなものが複数聞こえた気がして、そちらを向こうとすると、下腹部から何かが入ってくる感覚に捉われた。
「うぐぅ、な、なんだこれ・・・く、くるし・・・や、やめ・・・」
俺は必死に動かない手足で足掻くが、手足はほとんど動いてくれない。
「もう少し辛抱するんじゃ、一応限界までエネルギーを入れるからのぉ、それがおぬしの為でもあるんじゃよ」
猿田彦様が励ましてくれるが、それどころじゃない。まるで内臓を鷲掴みにされているような、焼かれているような痛みと気持ち悪さが全身を襲う。
・・・どれだけ続いたのだろう。実際は5分もかかっていないのかもしれないが、俺の主観じゃ何時間にも感じられた、終わりの見えない痛みと気持ち悪さの中、意識が遠のいていくのを感じた・・・
「よし、ここまでじゃ!よく頑張ったの、楽太郎君。そのまま休んでおくんじゃぞ」
猿田彦はそう言って楽太郎を見るが、既に気を失っていたようだ。
「これで終わったか、猿田彦。後は地球に残すこいつの肉体を作るだけだな。媒体の髪の毛一本はすでに採取しといたぞ」
「了解じゃ、それじゃ早速作るかのぉ、あっちの3馬鹿娘も伸びとるようじゃが、ほかっとくかのぉ」
「それでいいんじゃねぇの?あの馬鹿共は悪神に落とされなかっただけでも感謝してもらわんとな。なんならあいつに隷属させるか?面白いかもしれんぞ?」
「それはやめておく方が良いじゃろ、楽太郎君にあの3馬鹿娘のお守りを押し付ける事になるからのぉ」
「違いねぇな。必要のない苦労を背負わせることもないか」
そんな会話をして苦笑しつつ、2柱の神は次の作業へと移るのであった。
気が付くと俺は、また同じベッドで目を覚ました。
前回と違うのは、体が動くことだ。多少違和感があるが、体が起こせた。
体の随所を確かめるように動かし。体を解す。頭もすっきりした感じがする。
一通り体が動くことを確認した後。ベットから降りると、横のベットに固定された亀甲縛りの美女3人がいた。
「「「「・・・」」」」
目が合ってしまった・・・どうしよう?
少しすると、むぐむぐと何か言い始めたが、猿轡の所為で何を言っているのか分からなかった。
こうして眺めていると、段々いけない気分になってくる。一人はセミロング?の銀髪に碧眼のかわいらしい顔立ちに透き通るような白い肌で此方を見る目は少し怯えている様にも見える。普段なら見惚れそうになりそうだが、今は左目にある青痣と亀甲縛りの所為でSMもののAVみたいな感じだ。 嫌いではないけどね、SMもののAV・・・ほんと。
他の2人も似たような感じで 一人はロングの金髪に翠色の瞳、健康的な小麦色の肌で年上のお姉さん?のような感じで、此方に懇願するような視線を向けてむぐむぐ言っている。
最後の一人は赤いミディアム?だっけ?肩口くらいの長さの髪に紅い瞳で白磁のようなすべすべしたような肌をしている。男勝りといった感じで、此方を怒ったように睨んでむぐむぐ言っている。
何を言っているのかわからないが、おそらく「猿轡を外せ」とか「拘束を解け」とか言っているのだろう。
この3人の所為で異世界片道切符にさっきの苦痛を味わう羽目になったかと思うと腹が立つ。
こいつらの要望聞くのは嫌だし、むしろ乳でも揉んでやろうかと思ってしまう。・・・やらないけどね。・・・ホントだよ?
だって、確かに美人だけど、涙の痕や鼻水、猿轡の所為で胸元まで涎でドロドロになってるんだもの。汚いよね。性欲なんて湧かないよ。 俺は特殊性癖なんて持ってないんだから。
・・・っと、そう言えば猿田彦様たちはどこだろ? っと周りを見渡せば扉があった。あの先にいるのかな? そちらに向かいかけると、大きい3つの悲鳴があがる。
俺はそちらを振り向き嫌味を一言。
「あなた達は神様らしいけど、俺の人生台無しにした誘拐犯の神様だし、信用できないのでこのまま放置させてもらいます」
俺の言葉がよっぽど効いたのか、美女3人は愕然とした表情になり、沈黙してしまった。
なんだろう?ま、いっか。猿田彦様か建御雷様探さないと、今どういう状況なのか把握できないしね。
そう考えながら楽太郎はそのまま部屋を出て行った。
その部屋の陰から1柱の神が現れる。
項垂れる3女神に対し、諭すように話しかける。
「人間の子に言われてようやく気付いたようじゃの? おぬしらのやったことは罪なのじゃよ。次元の裂け目に落ちて転移したり、予定外の死で転生したり、事故で異世界に行くことは人間の子にしてみれば不幸以外の何物でもないのじゃよ。親兄弟や友人、会社の同僚等とは2度と会えぬし、果ては常識まで違う世界に突然行かされるんじゃ。儂ら神はそんな不幸な人間の子を守るためにその世界に合ったスキルやステータスを優遇することはあっても、態々そんな不幸を与えることは決して行ってはいけないことなんじゃ。それに勇者となった多くの転移・転生者は早死にするが、その原因は分かっておるのかの?」
指を鳴らし、3女神の猿轡を外すと、質問の答えを促す。
「それは、勇者の力を恐れた為政者が暗殺することが多いのと、その世界の常識に適合できず、精神を病むことが多いからです」
1柱の女神が答える。
「その通りじゃ、儂らの地球のように文明が発達しておるとな、人間の子は一生の内で身の危険を感じるような獣に遭遇することはまず無いんじゃよ。じゃが、おぬしらの世界ではそういった危険が日常茶飯事じゃ。特に転移者の場合、冒険者になるものは多い。その中で知り合う人々は友が死ぬのにも慣れているし、覚悟もある。じゃが、転移者であれば、自分は死なずとも、友があっけなく死ぬことに慣れておらん。その所為で精神の均衡を崩すものが多いのじゃ。 為政者からの暗殺なんてものは元々一般人であった勇者からすれば、最悪の裏切り行為でしかない。そんな最後を迎える人生を不幸と言わずになんという?」
「「「・・・」」」
3柱の女神は何も言い返せなかった・・・
人々をより善く導くはずの神が人々に不幸を撒き散らしていたのだ。
何も言い訳ができない。
人間の子は言った。誘拐犯の神様であると。
俯き、悔恨の表情を浮かべる3柱の女神達を背に、1柱の神は部屋を出て行った。
「猿田彦様ぁ~!建御雷様ぁ~!どこですかぁ~?」
部屋を出た後、色々探し回ってみたが、神様達は見付からなかった。
色々考えた末、大声を出して呼び出すことにしたのだが、中々出てきてくれない。
「どこ行ったんだろう?」
ため息を吐いて座り込むと、コツコツと床を叩く足音が聞こえてきた。
「ようやく目が覚めたか、楽太郎。体の調子はどうだい?」
「建御雷様。よかった~、体の方は多少違和感がある感じですが、動きますよ」
「やはり違和感があるか・・・よし、それじゃちょっと運動して体を慣らそう」
「え?」
「リハビリってやつだよ。魂の施術を受けたんだ。違和感が無くなるようリハビリするんだよ」
そう言って建御雷が踵で床を軽く叩くと、そこは柔道場のような畳の敷かれた広い部屋になっていた。
「それじゃちょいと着替えるか、あ、お前の分はこれな」
そう言って緑のジャージを渡された。