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第171話 解放と粛清 ③

「な、なぁ、俺達、助かるんじゃないか?」


 ミーネ達がミノタウロス達を次々と屠る姿を見て屋敷に囚われている男は相棒に聞くともなく呟く。


「言うな、せっかくのいい夢が醒めちまうだろ」


 相棒も信じられない光景を目にして呆然とするも、それでも希望を中々持てずに困惑している。


「夢じゃねぇよ、ほれ」


 そう言って相棒の尻をつねって捩じる。


「痛ぇッ?! 何しやがる!」


 そう言って歯をむき出しに怒る相棒に窓の外を指さす。


「あぁ?!」


「あれが見えるだろ?」


「見えるからなんだ!」


「夢じゃねぇだろ?」


 そう言われて改めて見直すが、ミノタウロス達が倒れ、今もなお小さな人影に倒されている。


「た、確かに夢じゃねぇ・・・夢じゃ、夢じゃなかった?」


「俺達、助かるんじゃねぇか?」


 その言葉に相棒は唐突に涙を流す。


「俺、助かったら騎士団辞める・・・」


「はぁ?!本気か?」


「あぁ、こんな不条理なお偉いさんの命令で命掛けなきゃならねぇなんて、もうやってらんねぇよ。

 騎士団なら食いっぱぐれねぇって思ってたんだけどよぉ、こんなん命が幾つあっても足りねぇって、

 漸くわかったんだ。それに、俺にゃもう戦えねぇ・・・戦いたくねぇ・・・

 マルコ、お前も一緒に辞めねぇか?」


 涙を流して沁み沁みと語る相方を見て、マルコも納得する。


「あぁ、生き残ったら、俺も騎士団辞めるよ」


 2人のやり取りを聞いていた者達も生き残った先を見詰め直す。


 こうしてミーネの雄姿を見詰め、助かる事を一心に願い、祈り、運命の時を待つ。


 そして、遂に部屋の扉が開かれ、運命の時が訪れた。


「あ、ありがとうございます」


 万感の思いを込めてそう言おうとした瞬間、スパァァァァァンと言う音と共に扉の前にいた男が頽れる。


「な、何を?!」


 その一言を発するのがやっとだった。


お仕置きである(騎士団アウトォ)!大人しく叩かれろ!」


 驚きに硬直している間に黒鎧の男に叩かれる。


「「なんでだよ?!」」


 理不尽を叫ぶ声を無視して楽太郎はハリセンでその場にいる者達の意識を刈り取って行った。





















「ほら、そこもっと引っ張って、そうそう、良い具合ですよ」


「はい!」


 そう言うと楽太郎はミーネに伸した騎士達を縛り上げて行く。


「な、なんで股下通したりそんな蜘蛛の巣みたいに編むんですか?」


「あー、この縛り方はですね、元々は荷物を運びやすくするための縛り方なんですけど、私がいた所では昔は犯罪者を拘束するのにも使っていたんですよ。

 抜け出し難く取り押さえ易い」


 そう言って縛り上げた縄を持ち上げると、後ろ手に拘束された男がぐったりとしたまま引き摺られる。

 それを見せられてリディアーヌの顔が引き攣る。


「今では金属の手錠で拘束するのが普通なんですが、この国にはないでしょう?

 なので逃がさない様に縛り上げてるんですよ」


 そう説明しながら次々とミーネに説明もしていく。


「では、やってみなさい」


 そう言ってミーネに指示を出すと、ミーネは元気よく返事をして騎士達を縛り上げて行く。


 その様子を見ながら楽太郎は内心で考えを巡らせる。


 一通り倒した騎士達を鑑定してみたが、称号が微妙だ。


 称号には軒並み『背信者』が付いていたが、『人類の敵』と言う称号は付いていなかった。


 俺はてっきりこいつ等は王命に従っているから軒並み『背信者』と『人類の敵』と言う称号が付いていると思ったが、蓋を開けてみれば『背信者』のみだった。


 何故だ?


 まず、背信者が付いている理由を考える。


 これは簡単だ。


 神はこの国を救うために、もっと言うとこの街を救うために『神のダンジョン』と言う恩恵を与えた。

 そして神は『悪魔のダンジョン』攻略を為せと、契約を守れと言い続けている。


 そしてこの騎士達は3つ、明確に神の意に背いたのだ。


 1つ目は悪魔のダンジョン攻略を邪魔したこと。

 ※ 地下の穴を塞ぐ事を止めた事で街の防衛にキュルケ教徒やウェイガン教徒が当たる事になり悪魔のダンジョン攻略が中断されている。


 2つ目はこの街にダンジョンの魔物を解き放ったこと。

 ※ 実力もないのに要らぬ藪を突いてウェルズの街に魔物を解き放った上、自分達で収集が付けられなかった。


 3つ目は自分達が助かる為にこの街を犠牲にしようとしたこと。

 ※ 隔離していた魔物を街に解き放ち自分達だけ逃げようとした。


 神の意を酌む者達の足を止め、神が救うと決めた街に被害を齎し、命惜しさに数百倍の国民の命を危険に晒した。

 これだけやらかせば『背信者』が付くのも納得だろう。


 次いで『人類の敵」について考える。


 確かウェイガンが称号に付いてなんで付けたのか聞いた時、なんて言っていたかを思い出す。



『そんなの単純な理由だよ。悪魔のダンジョン攻略を加速させたいからだよ。


 停滞されるのも困りものだけど、攻略そのものを中止しようなんて不遜極まりない暴挙には断固とした態度をとらないと』



 その後、俺が『王命で進められている今の間違ったダンジョン攻略の方を後押しされても困る』と言った。



『大丈夫。そっちの方を推進しようとしている奴等にも同じく称号を付けておいたから!』



 確かこうだったな。

 つまり、このどちらかと判定されれば『背信者』と『人類の敵』が付く。


 騎士達は攻略中止に関わっていないが、本来の攻略の邪魔をして停滞させた。

 だから神の意に反するものとして『背信者』が付いた。


 だが、間違った攻略を進めている。

 

 それなのに『人類の敵』が付いていない。


 どうして?


 納得がいかない。


 ウェイガンの言葉を思い出す。

 わからない。


 ウェイガンの言葉を文字に起こす。


 『そっちの方を推進しようと(・・・・・・)している奴等』


 意志の有無が関係しているのか?

 ここに居る騎士達は王命だから、仕事だから、本当は嫌だけど立場上仕方なく、従っただけ、だから。


 つまり、自主的に行ったと判断できないから付かなかっただけなのでは?


 確かめる必要があるが、もしそうなら・・・



 恐らく、俺は今物凄くいい笑顔になっていると思う。


 だって、ミーネとリディアーヌの表情が恐怖に彩られているから。











「さて、ミーネ、終わりましたか?」


「はい先生! 全員しっかりと縛りました!」


「その先生と言うのは止めませんか?」


「先生は先生です!

 私が敬うべき存在であるからこそ先生が私を呼び捨てにする口実となります!」


「誰の入れ知恵ですか?」


「入れ知恵?」


「誰に教えてもらいましたか?」


「キャシーさんとエマさんとエロイーズさんです」


「ミーネは素直でいい子だ」


 そう言って頭を撫でつつミーネの口から出た3人に内心悪態を付いた。


 まぁ、お仕置きは帰ってからだ。


 ここは気持ちを切り替えて残りをしばき倒に行かねば・・・



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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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