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第14話 楽太郎への依頼

遅くなりましたが、なんとか書きました。



 俺は訓練場から出ると、そのままギルドの外へ向かおうとしたのだが、アロマ氏とクレオ氏に呼び止められた。


「そっちは支部長の部屋ではありませんよ?」


「ええ、帰ろうと思いまして」

 アロマ氏の質問に正直に答える。


「?!」


「ギルマスに来るように言われてるじゃありませんか!」

 クレオ氏が慌てた声をあげる。


「えぇ、ですが、『この後』と言われただけで、『この後』とはどの後かわかりませんからね。 それに直ぐ来てくれとも言われてませんが?」


「・・・」

 屁理屈の様な俺の言い回しに、2人のジト目が俺を射抜くが、俺は気にしない。 面倒を避けれるなら手段は選ばんよ。

 模擬戦の時は自重忘れてたけど。


「私にも用事と言うものがあるんですよ。それじゃ! 失礼しますね」

 そう言ってさっさと帰ろうと訓練場を出ようとするが、やっぱり止められた。


「とても大事な事ですから、お願いします」

 そう言って頭を下げられた。が、


「それほど大事には思えませんね。嫌がる俺を訓練場(こんなとこ)に連れて来て遊ぶ時間があるのに、大事な事って言えるんですか?」


「・・・」

 またしても黙んまりかい。 都合が悪いと言葉が出なくなるのは人間の性かねぇ。


「先程も言いましたが、私にも用事があるんですよ。 時間は有限です。ギルマスとの模擬戦に応じただけでも大分時間を取られているんですから、その辺を察して頂けないでしょうか」


 そう言うと、アロマ氏も無理を言えない状況であることを察したようで、諦めてくれたようだ。

 俺の用事とはレべリングの事なんだけどね。


「無理を言ったようで、申し訳ありませんでした」

 なんとも申し訳なさそうにアロマ氏が頭を下げて謝罪してきた。

 うーん、騙したような所がある所為か、俺の良心が少し痛んだ。


「まぁ、用事が済んだらまた来ますので、お話はその時にでも聞かせて貰いますよ」

 そう言うと、アロマ氏の表情が少し笑顔になる。

 その笑顔を見てホッと胸を撫で下ろすと、そのまま冒険者ギルドを出た。


 俺はもっと強くならんとな、なんか、チート貰った筈なのに低レベルの所為か、無双出来る程は強くない様だ。

 暫らくは地道にRPGよろしくゴブリン殺しまくってレベルアップと行こう。


 そう考え、カーチス防風林へ向かう。





















 王都の街門を抜け、畑を抜けた後、周りが草原となっている辺りに来ると、各々武器を持った冒険者風の男女が6人程見張りをしているような感じで立っていた。


 6人は最初インディに驚いていたが、横に俺が居るのを見ると、騎獣か、猟獣とでも判断したのだろう。警戒を弱めた。

 害意は無さそうなので、俺はそのままカーチス防風林に行こうとしたのだが、呼び止められてしまった。


「ちょっと待ってくれ」


「なんでしょうか?」

俺は余り関わり合いになりたくないので、少し不機嫌そうな雰囲気を醸し出しながら聞き返す。


「ひょっとして、カーチス防風林か、その奥の森に行くつもりか?」


 男は俺の不機嫌そうな雰囲気にも動じず、質問してくる。

 ひょっとして俺の演技が下手なのだろうか?

 そう思うと、ちょっと恥ずかしくなって来たので、演技を辞めた。


「えぇ、ゴブリンでも倒してレベルアップを図ろうかと思いまして」


「すまないが、今カーチス防風林はとても危険な状態にある。冒険者ギルドは今日からは上級冒険者か、中級冒険者のパーティでしか探索できない様に通達しているんだが、知らないか?」


「今日はギルドの掲示板を見ていないので知りませんでした」

 正直に答えると、冒険者の男は説明してくれた。



 彼らは冒険者ギルドからの依頼でこの場所で見張りをしているそうだ。

 万が一、カーチス防風林から魔物が現れた場合、それを知らせるのと、初級冒険者が無謀な探索をしない様に止める事が仕事だそうだ。

 カーチス防風林に入るにはギルドが発行している許可証がいるそうで、それが無いと入れないとのこと。

 他の幾つかの冒険者達もカーチス防風林のゴブリン討伐依頼を受けているそうだ。なんでも討伐依頼が中級に上がったそうで、討伐金額も上がっているそうだ。


 対応が早いな。冒険者ギルド・・・ まさか昨日の今日で対応するとは思わなかった。

 ジェラルド氏は優秀なようだ。 バトルジャンキーっぽいけどな!

 しかしそうなると・・・。くそ、ギルドに戻らにゃならんのか、面倒くさいな。

 俺はその男に礼を言うと、また王都に出戻る事になった。





















 と言うことで、ギルドに戻り、受付に居たアロマ氏に声を掛けると、ジェラルド氏の執務室である支部長室に案内してくれた。

 用事の件を聞かれたが、曖昧に言葉を濁して答えた。

 出戻ったことへの気恥ずかしさでまともに返事ができなかった。


 そんな会話をしていたら、支部長室に着いたようだ。

 アロマ氏がノックして入室許可を取っていた。


 ジェラルド氏の了解が得られたようで、扉が開いた。


 中から声がかかる。


「いらっしゃい、ラクタロー君。 君に大事なお願いがあるんだ」

 いい笑顔をしてらっしゃるね。ジェラルド氏。


「嫌な予感しかしないんですが?」


「まぁ、そう言わずに話を聞くだけでも頼むよ」


 俺は仕方なしと言った感じで了承する。


「実は今、カーチス防風林とその奥にある森なんだが、異変が起きているようなんだ」


 そう言って今回の問題を説明してくれた。


 要点を纏めると、最近カーチス防風林で魔物の出現率が高くなっているそうで、何か異変があるのでは? と、中級冒険者用の依頼にカーチス防風林と森の中の調査を出したそうだ。


 最初は軽い気持ちで何か分かれば良し、何もわからなくても仕方ないと考えていたそうだが、その依頼を受けた3組の冒険者達は誰も戻って来なかったそうだ。

 その時点で、何か危険が迫っていると考え、依頼内容を改め、森は取り敢えず置いておいて、手前のカーチス防風林のみの調査に切り替えたそうだ。


 それでもその依頼を受けた4組の冒険者の内、2組は戻って来なかったそうだが、戻って来た1組はゴブリン3匹と遭遇し、交戦。辛くも勝利したが、負傷者が出た為、そこで調査を中断したそうだ。ゴブリン3匹に対し、中級冒険者6人で戦ってギリギリだったそうだ。


 もう1組は2人組の冒険者で、最初はやはり3匹のゴブリンと遭遇。3対2で負けそうだったが、そこに乱入者が現れ、助けられたそうだ。

 覆面をしていたそうで、だれかは分からなかったが、その後も調査を続け、ゴブリン達が組織的な行動を取っている事を突き止めてくれた。との事。

 2人組の方はシェリルちゃん達の方だろう。

 情報を正しく伝えてくれたようだ。


「以上の事を踏まえて考えると、恐らくゴブリンキングが誕生しているだろう」

 おぉ? そうなるのか?

 と思って疑問をぶつけると。


 基本的にゴブリンは頭が悪いので組織的な行動はできないそうだ。

 本体を囲むように斥候を出し、しかも割り振りが3匹づつ均等になるよう出している点も加味すると、普段のゴブリン達にはあり得ないことだそうだ。

 ゴブリン・・・ 可哀想に、相当馬鹿にされてるよ。 でも、まぁ、仕方ないかね。 所詮ゴブリンだし。


 話を戻すが、ゴブリンキングが誕生すると、どういう訳か、他のゴブリン達も軒並み強くなるそうだ。

 それに加え、頭も良くなるそうで、中には人の言葉を理解する個体も出たことがあったそうだ。


「まぁ、そんな訳で今日の朝カーチス防風林への立ち入りを制限したのだが、初級冒険者やソロの中級冒険者達が不満を言って来たのでね、テストを兼ねて私と模擬戦をして貰ったのだよ」


 それで朝の惨状が生まれたと。なるほどね。良くわかりました。

 恐らくあの怪我人の山は、無茶してカーチス防風林へ行こうとする馬鹿を物理的に止めたのだろう。

 怪我してるのに命の危険を冒してまで金稼ぎするような奴は居ないだろう。

 居たら本物の馬鹿だ。そんな奴は救う価値もないだろう。


「と言う事で、ラクタロー君! 君への大事な依頼なのだが、カーチス防風林の奥にある森の調査をお願いしたい!」


「・・・」

 何となくわかってましたよ。そんな依頼が来ることはね。

 どうせレべリングでカーチス防風林へは行く心算だったしな。受けるのは良いが、幾つか条件を出すか。


「受けるのは良いのですが、条件を出しても良いですか?」


「どんな条件だい?」


「1つ、森の探索は日帰りで行える範囲にしてください」

 やっぱ森の中で野宿は嫌だ!

 都会っ子の俺には無理だ!・・・ 一応やれば出来るけど、ヤバそうなところで寝るのは嫌だ。


「わかった。その点は了解だ。 無理をしない範囲で探索してくれたまえ」


「1つ、私は単独で探索します。もし他の冒険者に後を付けられたり、そう言った行動を見付けた場合、森の中であっても容赦なく対応します。よろしいですか?」

 この条件にジェラルド氏は苦い顔をした。

 やっぱり陰から観察するつもりだったな!


「わ、わかった」


「ところで、依頼料は如何程ですか?」


「そうだな、1日金貨1枚でどうだろう?」

 おぉ、こりゃ実入りが良さそうだ。


「ちょっと待ってください!ジェラルドさん! 高すぎです!」

 そこにアロマ氏の待ったの声が上がった。

 しかし、ジェラルド氏は慌てることなく説明する。


「高いとは思わないがねアロマ君。 中級冒険者のパーティが3組も帰って来なかった場所に行くのだよ? それに模擬戦で実力を見せて貰ったが、戦闘技術は私の遥か上を行っているし、総合的な戦力としても、どう少なく見積もってもランクBはある。 そんな冒険者への報酬としては、むしろ破格じゃないかね?」


 そう言われると、アロマ氏も納得したのか、

「差し出がましい真似をしてしまいました。申し訳ありません」

 と言って下がってくれた。


「これで契約成立だね。探索を日帰りで行うのであれば、探索前にギルドに顔を出してくれたまえ、あと、出来たら探索から戻って来た時もお願いしよう。良いかな?」


「分かりました。了解です」


 細々とした内容を詰めた後は、ジェラルド氏から許可証を受け取り、冒険者ギルドを後にした。


 うっし! 稼ぐぞ!



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ナニかがいる。
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