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第162話 ミーネの試練 ⑦-1

すみません。長くなってしまっているので途中で切っています。



 ミーネが起きたと知らせを聞いた俺はリビングへと向かった。


 そしてそこにいたミーネに声を掛ける。


「すまない、今時間を貰いたいんだけど問題ないかな?」


「え?・・・はい」


 俺を見て驚いた声を出したが、時間は貰えたようだ。


「ありがとう」


 そう声を掛けるとミーネは少し困惑した表情を浮かべる。

 俺は深呼吸を一つすると床に正座をして手も床に付けて頭を下げる。

 所謂土下座の姿勢で謝罪する。



「先程はあなたの心中を図らずもかき乱し傷付けた事、誠に申し訳ありませんでしたー!」



 リビングに俺の声が響く。

 思いの外大きな声が出たようだ。



 ・



 ・・



 ・・・




 リビングにはミーネとその世話をしていたエリー、そして俺と一緒にリビングに来たエロイーズが居た筈だが、誰も何も発言しない。と言うより身動ぎすらしない。


 そんな中どれくらい経っただろう、最初にエロイーズが「はっ!」と気付き、ミーネの元に移動するとミーネに何かを耳打ちする。

 それにミーネが「え?」と声を上げたがその後は何やらお互いゴニョゴニョと小声で話し合っていた。


「あ、頭をお上げください。

 あなた、の、謝罪を受け入れます」


 その言葉を受け、俺は頭を上げ、立ち上がる。

 ミーネを見るとこちらを恐々と窺うように見て来る視線が、これまでの俺の対応の悪さを表しているように見える。


「あー、ありがとう。本当に申し訳なかった」


 改めてそう言って手を合わせたが、上手く通じなかったようだ。

 ジェスチャーは通じないらしい。


 そんな俺の行動にミーネはよくわかっていないと言った表情で「い、いえ、大丈夫です」と小さく答えた。

 その後もチラチラこちらを見て来るので何か言いたいことがあるのかと促すと「仮面はしなくていいんですか?」と聞かれた。


 その際エリーが軽く吹いたのであまり似合ってはいなかったのだろう。

 『後で覚えてろ』と念じて視線を送ると目が合った瞬間逸らされた。

 ま、まぁ、確かに、多少、ほんの少しは自覚があっただけに悶えそうになるが、何とか堪える。



「あぁ、仮面はもういいんだ。

 これも一つのケジメと言う奴か」


 そう思い、俺は片膝をついて目線をミーネに合わせる。


「改めて自己紹介をしよう。

 私は山並 楽太郎と言います。

 山並が名字で楽太郎が名前だ。

 私を呼ぶ時は楽太郎と呼んでくれればいい」


 そう言うとミーネは「ラくタロ?」と聞き返してきたので頭を撫でて「よくできました」と褒めておいた。


 ミーネは目を見開いていたが俺は気付かない振りをして先に進める。


「さて、立ち話もなんですから、まずは座って食事にしましょう。

 エリー、すみませんがキャシーとエマを読んでください。

 それとランドに食事を6人分用意してもらってください。

 食事に参加するのは私、ミーネ、キャシーにエマ、それとエロイーズとエリーです」


「え?私もですか?」


「えぇ、あなたも巻き込みます」


 そう言うとエリーは何故か少し嬉しそうな顔をした。

 解せぬ。


「旦那様?」


「エロイーズ、大事なお客人の前だ。

 余程の事なんだろうね?」


 何か言い含めようとしたエロイーズの機先を制して睨みを利かせる。


 エロイーズが依然言っていた通りに、主人として決めたことを押し通す。


「い、いえ、なんでもありません」


 そう言って頭を下げて下を向く。


「そうですか、では早速移動しましょう」


 そうして俺達は食堂へと向かった。











 食事も終わりに近付き、ミーネもエリーとエロイーズのお陰か少しだけ表情が和らいだ頃合いを見計らい俺は意を決してミーネに本題を切り出す。


「あー、ミーネ。

 今日は神殿の人や会議の場で色々な話を聞いたと思うが、理解できたか?」


 俺の質問にミーネの表情は一瞬にして固まる。


「申し訳ないが、この話はミーネにとっては嫌な事だとは思う。

 だがミーネ、お前の家族はその渦中にあり、お前の家族が選択した結果なんだ。

 家族であるお前自身はどうしても、どうやってもこの件に無関係ではいられない。

 それに時が経てば経つ程状況は悪化する。

 早急に対応しないとミーネ、今お前が想像し得る最悪な状況よりももっと酷い結果に成り兼ねない。

 だから、その状況をお前が理解しているかを確認したいんだ」


 真剣な表情でミーネを見詰めると、ミーネはポツポツと話し始めた。


「私は最初にキュルケ教の神殿長モニカ様とウェイガン教の神殿長バージェス様のお二人からお話を聞きました」


「そうですか、ではミーネにはおさらいになりますが、他の方の為にも再度簡単に説明しましょう。

 それとわからない事があれば随時聞いて下さい。

 そうですね、声を上げるのがあれなら手を上げてください」


「「はい、お願いします」」

「お、お願いします」


 こうして俺は語り出す。


「まず最初に神のダンジョンと悪魔のダンジョンの成り立ちからですね。


 成り立ちですが、今から約300年前、正確には303年前と言う事なんですが、当時のゴルディ王国の国王であったゴドフリールがキュルケ神へ救国を祈願したことに始まります。


 何故一国の王が神頼みなんていう不確かな手段に縋らなければならなかったのか?と言う事から説明しますね。


 ゴドフリール王が即位して10年程でウェルズにあった鉱山が枯渇してしまいました。

 当時の測量による予測ではウェルズの鉱山が枯渇するのは50年程先の予定だったそうです。

 その為、国の方針を大きく変える必要があり、50年の間に何とかしようと計画をしていたそうですが、実際には予想に反して10年と言う短い期間で枯渇してしまったのです。


 まぁ、これには当然とも言える理由がありました。

 当時のゴルディ王国ではウェルズ以外にも幾つか細々とした鉱山があったのですが、その殆どがタイミングを計ったかのように次々と枯渇してしまい閉山してしまったそうです。

 閉山したと言っても取引を中止にすることは出来ません。

 何故なら取引を中止すると言う事は食料も手に入らなくなると言うことを意味したからです。

 結局、その皺寄せがウェルズの鉱山へと向けられ、ウェルズの採掘量が一気に増えてしまいました。

 これがウェルズの鉱山が予想以上に早く枯渇した原因だったのです。


 まぁ、大変だったとは思いますが、未だにその方針が切り替えられた様子がない所を見るに、その後の王達は一体何を考えているのでしょう・・・っと、話が逸れましたね。

 まぁ、そんな状況であった為、自国の食料自給率はかなり低い状態でした」


 話し始めるとミーネが手を上げたので俺はミーネに話すよう促す。


「あの、食料、自給率とは何ですか?」


「食料自給率と言うのはですね、自分の国で生産した食べ物だけでどれだけの国民を養えるかと言う割合のことです。

 具体的に今のゴルディ王国で言うと、食料自給率は2割を切っています。

 つまり、外国から食料が買えなくなるとゴルディ王国の民は2割弱しかご飯を食べられません。

 つまり残りの8割強は死んでしまいます。

 まぁ、実際には無駄に争いが起こってそれ以上の死人が出ると思いますが・・・」


 そう説明していると話を聞いていた3人の顔色が悪くなって行く。

 中でもミーネは衝撃だったようで「そ、そんな・・・」と呟いていた。


 大体こんな説明であってるよな?


「ま、まぁそんな感じの指標となる割合のことです。

 わかりましたか?」


「は、はい・・・」


 俺はふわっとした感じで理解してもらえたことに内心安堵しつつ追加の質問をされない内に先へと進める。


「では続けますね。

 えーっと、まぁ、簡単に言うと、他国に売るものがなくなってしまったゴルディ王国は深刻な食糧難に陥ります。

 鉱物が取れなくなったからと言って直ぐに『農業を!』と言ってもそもそもの話、農地がありません。

 なので開墾から始めなければならず、農地を開墾出来たとしても十分な農業経験者を集める事も出来ない。

 かと言って他国から農民を貸せと言っても貸すような国はありません」


 そう言うと今度はエロイーズが手を上げる。


「あのぉ、何故貸して頂けないのでしょうか?」


「それはですね、税が取れなくなるからです」


「税が取れない?」


「はい、基本的に領地を持つ貴族は税を穀物等で受け取ります。

 そして税を払う側は主に穀物を育てている農民です。

 その農民が減ると言う事はそれだけ収入が減ると言う事です。

 収入が減ってしまえば自身の生活の水準を下げるのは勿論、自領を守ったり発展させることも出来なくなります。

 勿論領主ともなれば貴族ですから、対外的なお付き合いのレベルは中々下げられないので普段の生活にはダイレクトに影響します。

 そんな苦労を自身と何の関わりもない他国の為に勧んで実行しようと思いますか?」


 そう聞くとエロイーズも納得したように頷いた。


「ありがとうございます」


「では先に進めますが・・・あー、もっとザックリにしよう。

 もっと大雑把に説明します」


「「「え?」」」


 何度も止められるのは面倒だ。


「はいはい!始めます!」


 俺は手を叩いて強引に話を進める。


「とりあえずそんな感じでどうにもならなくなったゴドフリール王は藁にも縋る思いでウェルズの街にあるキュルケ教の本山でキュルケさん・・・キュルケ神に助けを求めました。


 その結果、キュルケ神は条件付きで神のダンジョンと言う恩恵を授ける事になります。


 ただ、この時授けられたのは恩恵だけではありませんでした。

 悪魔のダンジョンと言う試練もまた同時に授かることになります。


 そしてキュルケ神がゴドフリール王に付けた条件が悪魔のダンジョンの攻略です。


 その際にキュルケ神が伝えた言葉があります。




----------------------------------------------------------------------------


 真摯な願いを受け、汝らに試練を課す。


 我らが手を差し伸べる時、悪魔も又、汝らに災厄を招く。


 これより10日の後、ウェルズの鉱山に神のダンジョンを授ける。


 神のダンジョンにて死する時、強者なれば(レベル)は落ち、入口にてその身は再生されるであろう。


 弱者なればその身は帰らぬ。全てはダンジョンの藻屑と帰すだろう。


 心して掛かれ。




 これより10日の後、ウェルズの鉱山に悪魔のダンジョンが出現する。


 速やかに最奥にあるコアを破壊し、消し去れ。


 悪魔のダンジョン内で死する時、その身は帰らぬ。全てはダンジョンの藻屑と帰すだろう。


 心して掛かれ。




 ダンジョンは成長する。


 どちらのダンジョンも放置せし時、ダンジョンは暴走し、汝らに牙を剥くだろう。


 努々(ゆめゆめ)忘れる事なかれ。


----------------------------------------------------------------------------




 と言った言葉です。


 これに対し、ゴドフリール王は応えます。


『必ずや悪魔のダンジョンを攻略して見せます!

 我が代で成らずとも我が国が続く限り、国の総力をもってキュルケ様の御意思に従い、必ずや攻略して見せます!』


 そう高らかに宣言し、誓約を交わしました。


 こうして神のダンジョンと悪魔のダンジョンがこの国に授けられたのです。


 ここまでは問題ないですか?」


 そう聞くと3人が頷く。


「まぁ、こうして2つのダンジョンが現れたわけです。

 ゴドフリール王は神のダンジョンの出現に感謝し、民もまたキュルケ神への感謝と信仰を向けました。

 そしてゴドフリール王は誓約通りに悪魔のダンジョン攻略に全力を尽くしましたが、残念ながら志半ばで倒れます。




 さて、ここからが問題なのですが、まず、ゴドフリール王の後を継ぎ国王となった息子のザブリール。



 こいつが全ての悪しき元凶と言えるでしょう。



 彼は悪魔のダンジョンを攻略すること自体を断念しました。

 それどころか臭いものに蓋をするように悪魔のダンジョンについての話題そのものを禁止してしまいました。


 その為王宮内は勿論、貴族同士でも悪魔のダンジョンの話題は禁句(タブー)とされる風潮が生まれてしまったのです。


 勿論当時のキュルケ教やウェイガン教からは猛抗議がありましたが、全て無視。

 その挙句、見せしめに高位神官数名を処刑すると言う暴挙に出ました」



 話を聞いていた3人の息を呑む音が聞こえ、信じられないと言った表情で双眸が見開かれる。

 そんな様子を眺めながらも、俺は続きを話し続ける。



「まぁ、そんな悪行が神に見逃される訳もなく、正真正銘の天罰が下りました。

 天からの(いかずち)に打たれ愚かなザブリール王は亡くなられました。


 天罰ですが、勿論ザブリール王の悪行に賛同した貴族達全てに下っています。

 簡単に言うと血族に連綿と続く不幸の呪いのようなものですね。

 彼等はこれにより決して栄える事無く没落の一途を辿り続けました。


 幸いな事と言えばいいのか、残念な事と言えば良いのか、ザブリール王に子はいませんでした。


 その為、次の王位はザブリール王の弟であるガブリールが継ぎました。


 ガブリール王は継承後は悪魔のダンジョンについて何も語りません。

 キュルケ教とウェイガン教の神官や神殿長が訪れ悪魔のダンジョン攻略を訴えてものらりくらりと躱され、真面な話し合いを避けるだけ。


 こうして約100年程、王家はキュルケ神との約束を破り続けました。

 それどころかゴドフリール王が神にお願いをしたと言う事実すら隠してしまいました。


 そうしてゴルディ王国の王侯貴族は神を裏切り続けたのです。


 こうして王家の裏切り行為により、やがて真実を知る者が殆ど居なくなった頃。


 悪魔のダンジョンが誕生してから丁度100年後、ダンジョンから魔物が溢れて来る魔物の暴走(スタンピード)が発生しました。


 その猛威は凄まじく、たった7日でゴルディ王国の約4割の国民が犠牲となりました。


 そんな大規模の魔物の暴走(スタンピード)にゴルディ王国だけでは対応しきる事は出来ませんでした。


 結果として魔物の暴走(スタンピード)は周辺国にまで及び甚大な被害を出しながら魔物の暴走をなんとか抑え込みました。


 ゴルディ王国は勿論ですが周辺国も甚大な被害が出ています。


 まぁ、事態が収束した後に魔物の暴走(スタンピード)の原因調査が行われるのですが、それまでキュルケ教やウェイガン教が悪魔のダンジョンの危険性について散々訴えたり、神との約束を反故にしたゴルディ王家の行いを色々な所で吹聴していたこともあり、周辺国からゴルディ王国への非難は相当なものがあったらしいですよ。


 中にはゴルディ王国を潰して分割統治をしては?なんて意見も出たそうですが、では悪魔のダンジョンをどの国が攻略するのか?と言う話が出て分割統治の話は立ち消えとなったそうです。


 誰しも他人の尻拭いなんてしたくないだろうし、神のダンジョンと言う恩恵も悪魔のダンジョンが引き起こした悲劇の前では全く魅力的には映らなかったそうです。


 また、周辺国も少なくない被害を被っているので、自国の復興が最優先だったのでしょう。

 元々農地が少なく更に魔物の暴走(スタンピード)で荒れ果てた土地なんていらなかったのでしょう。


 こうして運が良いのか悪いのかゴルディ王国は対外的には一応の存続が認められました。


 その後も色々あったそうですが、最終的には周辺国からも悪魔のダンジョン攻略をゴルディ王国にさせる為に条約まで締結されています。


 その条約も時が経ち現在では失効されていますが、内政干渉が罷り通る程に当時はゴルディ王国の立場が低くなったようです。


 それと余談ですがこの魔物の暴走(スタンピード)が起きた際に1人の冒険者が目覚ましい活躍をしたそうで、後に勇者と呼ばれたらしいです。


 さて、これだけ追い詰められたゴルディ王国ですが、周辺国からの非難は賠償と悪魔のダンジョン攻略に対する条約でなんとか凌ぎました。


 しかし国内は全く治まりませんでした。


 国内の2大宗教からは厳しく弾圧され、真実を市井に広められたことで国民も国に責任を追及し暴動を起こしたのです。

 一旦暴動がおこると野火が広がるが如くに次々と各地で暴動が起きました。

 魔物の暴走(スタンピード)を静め、疲弊しきった国軍には彼等を止めるだけの力はもはや残されていません。


 その為、この暴動を治める為に王は先祖から続けた過ちの数々を認め、自身の首を差し出す事態となりました。

 また、その事実を知っていながら王に加担した貴族の首も少なくない数が物理的に飛びました。


 そのお陰もあってか、なんとか暴動も治まり王家は辛うじて存続することが出来ました。


 さて、これだけやらかしたのですから、流石にゴルディ王家も心を入れ替え本腰を入れて悪魔のダンジョン攻略を行うかと思われましたが、そうではありませんでした。



 正直、ここまで腐ってると笑えてきますね。



 結局、即位したての新王が行った悪魔のダンジョン攻略は奴隷を使ったものでした。


 ダンジョンに奴隷を定期的に送り込み対外的には『ダンジョン攻略をしている』と言うポーズをとっただけだったのです。


 当然こんな御座なりな対応に国内の2大宗教から叱責が飛びましたが、新王は『今は国内の復興を最優先にしなければならない。今の王国ではこれが精一杯なのだ』と逆に開き直ったらしい。


 まぁ、そんな事があり、キュルケ教は国に頼らず自らの力で悪魔のダンジョン攻略に乗り出し始め、ウェイガン教はそれを支える為の武具の生産に力を入れるようになったそうです。


 そして王家はそんな2大宗教の武力増大に危機感を募らせることになったそうですが、それを止める正当な理由も無い為、止めることも出来ず、国内に新たな不安要素を抱える事になりました。


 因みに奴隷の投入については魔物の暴走(スタンピード)から200年間続けられ、それ以外の対応はこれまで一切していません。


 勿論この200年の間に何度もキュルケ教とウェイガン教から早急に悪魔のダンジョン攻略を進めるよう要請されていたそうですが、その都度適当な言い訳で躱し続け、真面に取り合いませんでした。


 これがゴルディ王国の現国王のやらかし以前に積もり積もった王侯貴族の罪なのですが、大体わかりましたか?」


 そう告げるとエロイーズとエリーは納得顔だが、ミーネは今一つと言った表情をしている。


「ミーネ、何かわからない事がありましたか?」


 そう尋ねるとミーネは考えながら言葉を紡ぐ。


「あの、約束をしたのは最初のゴドフリール王、ですよね?」


「そうですね」


「それなら、ゴドフリール王が死んだ時点で誓約もなくなるんじゃないの?」


「ゴドフリール王は『我が国が続く限り、国の総力をもって~』と言う誓約を誓ったのです。

 これはゴドフリール王がゴルディ王国の代表として神に誓った誓約なのでゴドフリール王個人の制約ではなく、ゴルディ王国として神に誓った誓約なのです。

 つまり、ゴルディ王国が続く限り、その国民は誓約を果たす為に悪魔のダンジョンを攻略しなければならないのです。

 因みに国名を変える等の小細工を弄して悪魔のダンジョン攻略を中止すればどうなるかわかりますよね?」


「え? えーっと、・・・天罰が下る?」


「正解です。

 因みにこのままミーネも何もしないとザブリール王が受けたものと同じかそれ以上の天罰が下るでしょう」


 そう言って首に手を当てて横に引くことで首を切られるジェスチャーをすると同時に舌を出して白目を剥いてお道化てみせるとミーネの表情が激変した。


「ひっひっひっ」


「待ったぁぁぁぁぁぁ!

 冗談だから!ちょっとした冗談だから!

 まだミーネに天罰は下らないから!まだ大丈夫だから!」


 ミーネが泣き始める予兆を見て取った俺は慌てて声を掛ける。


「ま、まだ?」


「あぁ、多分天罰は落ちない。

 ただこのまま何もしなければ多分お前の親や兄弟と同じように人類の敵認定される可能性はかなり高い」


「じゃぁ、私も死んじゃうんだ・・・うぅ、うわむぐぅ」


 咄嗟に事実を思わずミーネの口を塞いでしまった。


「旦那様?

 流石にそれは・・・」


「いや、今言った事は事実だし、これから伝えることでもあったから・・・」


 エリーの呆れとも蔑みとも取れる視線を向けられ、困ってエロイーズに助けを求める。


「すまん、エロイーズ、何とか宥めてもらえませんか」


「旦那様、流石に言葉にはお気を付けください。

 相手は子供なんですから、もっと優しく話してあげてください」


 エロイーズも呆れた顔はしていたが、仕方がないと言った感じで何とか了承してくれた。


「すみません」


 俺はミーネをエロイーズに渡すとミーネはエロイーズに抱き着いて震えていた。


「話しの途中だったのですが、少し休憩にしましょう。

 このまま続けるのも難しそうですから」


 エリーがそう締め括り、暫しの休憩となった。







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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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