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第154話 ミーネの試練 ⑤

「そうですか、キュルケ教もウェイガン教も了承して頂けましたか」


 俺はボコポの報告に笑顔を浮かべる。


「あぁ、モニカもバージェスも乗り気でな、しっかりと悪魔のダンジョンとその後の王家の不遜な対応。

 そして何が起こっているのかを滾々と説いてくれるらしい」


「そうですか、この件に関しては任せても大丈夫そうですね」


「あぁ、あいつ等にしてみれば王家の者は背信者そのものと言えるからなぁ」


「確かにそうですね。神の恩恵を受けておきながら神の試練を放棄したんですから、どんだけ面の皮が厚いんだか・・・」

「「はぁ・・・」」


 思わず溜息が重なると、何とも言えない笑いが込み上げる。


「まぁ、宗教関係者から真実をミーネに伝えて貰えればどれだけこの国が危機的状況にあるのかを理解するはずです。

 そうなればダンジョンの穴を塞ぐ事も出来るようになるでしょう。

 それでもミーネが駄々を捏ねるようなら、その場でキュルケさんにでも神託降ろしてもらうか、神罰でもお願いしてみますかねぇ・・・これこそ正に信賞必ば・・・つ?」


 どうにもならない問題に怨嗟を込めた軽口で返そうかと適当に言葉にしてふと思い付いてしまった。


 これ、キュルケやウェイガンにダンジョンの穴塞ぐのに反対する王族や貴族に『人類の敵』とか『神々の敵対者』とか付けて為政者として失格の烙印を見える化して貰えば解決じゃね?


 そもそも神々を裏切って来たのがゴルディー王家で、それを諫めなかったのが貴族だ。


 先に挙げた称号は無理でも『背信者』とか付いたら為政者として即退場(アウト)なんじゃないか?


 そんな話をボコポにもしてみるが、神とやり取りをした王様自体は全力で取り組んだ結果、ダンジョンで亡くなっている。その上、子孫である現王家も消極的ではあるが罪人を送り込むことで攻略に取り組んでいると言えなくもない微妙な状況なので恐らく無理ではないかと言う結論になった。


 何とも小賢しいやり口で閉口してしまう。


「まぁ、セコイ時間稼ぎしかしねぇ王様にゃぁ罰当たっても良いと思うけどよ、そんなに酷いのが当たっちまったら国も終わっちまうぜ」


 そう言って苦笑いするボコポ。


「はぁ、手っ取り早いと思ったんですけどねぇ。

 王家は無理でも悪魔のダンジョン攻略に反対している貴族くらいならワンチャンないですかね・・・」


「ワンチャ? まぁ、悪魔のダンジョン攻略に反対する貴族か・・・

 それくらいなら『背信者』にはできそうな気がするなぁ」


 そう言って髭を撫でつつ思案顔で呟くボコポ。


「おぉ?本当ですか?」


「あぁ、悪魔のダンジョン攻略は当時の王様が神に誓約を立てている。

 つまり、この国として神に約束をしているんだ。

 その約束の見返りが神のダンジョンと言う恩恵なんだが、どうにも今の王様や貴族は神のダンジョンがあって当たり前だと思っている節がある。

 現状として、この国は神の恩恵のみを享受している状態で神へと誓った『悪魔のダンジョンを攻略する』と言う誓いを破り続けている状態にある。

 つまり誓約を破り続けているこの国はキュルケ神に『神のダンジョン』をいつ取り上げられても文句が言えない状況にあるんだが、そんな状況が300年も続いちまった。

 300年も続いちまえばその状態が当たり前になっちまう。

 攻略出来ないのが当たり前にな。

 けば、『諦めてももういいだろう』なんて馬鹿な事を考える阿呆が出てくるだろうが、その考えはありえない。あってはならない考えだ。

 だが、もし、もし万が一、実際、そこでダンジョン攻略から手を引いた場合、神に立てた誓約も完全に破る事になる。

 そうなればこの国は神を欺いた事になる。

 そうなった場合、この国の人間全員がラクが言ったような『人類の敵』とか『神々の敵対者』と言われてもおかしくない。

 楽に指摘されて茶化してたが、洒落になんねぇな・・・」


 自分で話しながら事の重大さに途中で言葉を失うボコポ。


「えーっと、つまり悪魔のダンジョン攻略に反対する貴族は既にキュルケ神への背信行為を唆している立場だから既に背信行為をしている。だから『背信者』の称号を与えられても問題ない。と言うより実際、他者を背信者へと引きずり込もうと行動している為、『背信者にしなければならない』と?」


「あ、あぁ、自覚の有無は関係ねぇな。その行為自体が背信行為であると見せしめねぇとこの国が終わっちまう」


 なんだか、くだらない思い付きからヤバい核心を突いてしまった・・・


「ま、まぁ、それは明日キュルケ教とウェイガン教の人達に任せてしまいましょう。神々の事は宗教関係者へお任せです」

「そ、そうだな。俺は所詮職人なんだ。難しいこたぁあいつ等に任せときゃ良いだろう」


 そう言って俺達は問題から目を逸らした・・・




「そう言えばボコポさん、朝お願いした武具の件なんですが・・・」


「うん?あぁ、第3王女様用の武器を作るって話か?」


「えぇ、その話です」


「確か1つか2つってぇ話だったな?」


「えぇ、その内の1つなんですが、鈍器でお願いします」


「?!ど、鈍器だぁ?」


「えぇ、実は今ミーネさんに刃物の扱いを教えているのですが、少々不器用でして直には無理そうなのでまずは刃を立てなくてもそれなり以上の威力が出る鈍器を持たせようと思いまして・・・」


「まぁ、威力は確かにあるが、重ぇぞ?」


「それは考えてます。1本だとバランスが難しくなるので左右に1本ずつ持たせてバランス取れるようにする予定です」


「ふむ、なるほど、それなら少々小振りにした方が良いか?」


「いえ、握りを子供用に多少細くして頂くだけで大丈夫です。

 パワーは既にそこらの駆け出し冒険者なんて目じゃない程度には付けていますので」


 俺のその言葉にボコポが何とも複雑な表情になる。


「お前ぇの手に掛かると幼女も化け物に早変わり・・・か。

 まぁ、強くなるのは良い事・・・良い事なんだ・・・うん。

 武器の件は了解した。明日キュルケ教の神殿に連れて行くんだろう?」


「えぇ、そのように手配しています」


「じゃぁ、そこで第3王女様のサイズ確認するぜ」


「よろしくお願いします」


と、まぁ、そんな感じで次々と予定を消化して行き、夜も更けて行く。













 そして気が付くと何故か例の酒場に居た。




「ラウンディング・ボディープレス!!」






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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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