第135話 下準備
お待ちいただいた方、お待たせしました。
久しぶりの投稿です。
お時間有りましたらお目汚しかとは思いますが、お読み頂けたらと思います。
と言うことで、よろしくお願いしまーす。
貴族屋敷から離れた俺は取り敢えず出入りを制限している通りへと向かう。
封鎖箇所は複数あり、それぞれを守る衛兵が常駐している筈だが、ただの通りを封鎖しているだけなので只の衛兵では守りきれないだろう。
なのでまずは街の安全を第一に考えて出入り口を『土壁』で塞ぎ、防衛地点を減らしてからミノタウロス狩りをと考えて最初の封鎖箇所へと向かったのだが、前方から「気配察知」で敵性反応と交戦中と思しき反応を見付けたので慌てて駆け出す。
角を曲がりその光景を見た瞬間、俺は咄嗟に天秤棒をぶん投げた。
投げた天秤棒は追い込まれた衛兵に突進を仕掛けていたミノタウロスの片角に見事に命中し、片角を砕いてミノタウロスを吹き飛ばす。
突然の横槍に驚いたミノタウロス達だったが、天秤棒が飛んできた方を見て俺を見付けると一斉に睨みつけ威嚇するように低い声で『ブモォォォ』と雄叫びを上げてきた。
どうやら俺の方に意識が向いたようだ。
俺はミノタウロス達を睨み返しながら大声で衛兵達に逃げる様に言い、向かってくるミノタウロス達に備える。
視界の端で衛兵の何人かが逃げ出すのが見えたが、3人程は通りを背にして決死の覚悟で通りを街を守ろうとしているようだ。
・・・中々に根性の入った馬鹿がいたものだと少し感心するが、今は素直に逃げて欲しかった。
そんな事を考えつつミノタウロス達に意識を向けると、ミノタウロス達は突進の構えを見せ、俺に向かって突進してくるようだ。
ミノタウロス達は力を溜める様に前足で地面を数回蹴り付けると、一斉に俺に向かって突進してくる。
夥しい土煙を上げ殺到するミノタウロス達に対して俺は冷静に見極め、1匹目の突進を躱し、2匹目の突進を左手で逸らす。
そして3匹目の横っ面を殴りつけ、4匹目の突進を軽いステップで躱すと5匹目の突進に合わせて拳を叩き込む。
そして片角の折れたミノタウロスが起き上がると同時にミノタウロス達に殺気を向けると一瞬ビクついた後、ミノタウロス達は一斉に逃げ出した。
俺はその後ろ姿を暫らく眺め、「気配察知」スキルで十分距離が離れた事を確認してから後ろを振り返る。
「大丈夫でしたか?」
そう衛兵達に問いかけると、ようやく事態を把握したのか衛兵達は脱力して座り込んでしまった。
どうしたものかとしばらく様子を見ていると1人の衛兵が声を上げる。
「あ、ありがとう。助かったよ」
心からの感謝と安堵を伴った声色だった。
「どういたしまして、実はですね・・・」
そう言って俺は街にミノタウロスが跋扈するのを阻止する為に一時的にこの通りを封鎖したい旨を伝えると衛兵達は迷わず同意してくれたので手早く『土壁』で通りを封鎖すると次の通りへと向かった。
残った衛兵の表情は暫く呆けていたが、正気に戻ると弾かれた様に俺の後に付いてきた。
「おや、どうしました?」
「道が塞がれてしまったので戻れなくなってしまいまして・・・」
そう言われて失敗したことに気付く。
この人達を向こう側に移動させる前に道を封鎖しちまった。
「申し訳ありません。次の辻までご一緒しましょう」
そういうと衛兵達はホッとした表情になり同意をして次の辻までの道案内をしてくれた。
ちょっとした失敗はあったものの、概ね街の中枢への封鎖は進み、最後の一箇所以外をすべて封鎖できた。
さて、概ね思い通りに封鎖できたし、アホ共を追い詰めるとしますかね。
暗い嗤いを口元に貼り付けている事を自覚しながら、「気配察知」と[地図2]スキルを使い、敵性反応…恐らくはミノタウロスであろう反応に対して鬱憤を晴らすかのように殺気を放ち、とある集団へと誘導した。
「ふふ、ふはははは、必ず、必ず阿呆共に愚かな行動のツケを払わせてやるぞぉー」