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第121話 忘れていたモノ

 ボコポの工房を出るとインディ達と共に宿へ戻り暫し休むことにした。


 宿の主人に追加の料金を払い滞在延長を伝え、部屋へ入ると俺はベッドに倒れるように横になり睡眠を貪る。






 陽が傾きかけた頃、ようやく目を覚ますとそれを待っていたようにスマホが鳴った。


 取り出すとウェイガンからのようだ。


 ウェイガン・・・あ!


 そういや、ドリンクサーバーの事忘れてた。


 貴族屋敷(いえ)を買ってウェルズを出る時に連絡してこっちの都合に合わせて貰うから連絡するまで待ってもらうって事にしてたっけ。


 しまったな・・・もう2か月ほど経ってる。


 俺は慌てて電話に出た。



「もしもし?」


「あぁ、申し訳ない。

 ウェイガンだ。

 今、時間は大丈夫かな?」


「えぇ、大丈夫です」


「そうか、ありがとう。

 早速用件の方なんだが、君からの要望で作ったドリンクサーバーの引き渡しについてなんだが、暫らく連絡がなかったからどうなったのかと思ってね」


「あぁ、すいません。ここのところ悪魔のダンジョン関連で忙しかったもので、中々連絡も取れなかったんですよ」


「実は知ってる。

 君が攻略に乗り出してくれたので内心喜んでいたんだ。

 だから極力邪魔をしないようにと思っていたんだが、流石にそろそろと思ってね」


 ・・・こいつ、俺をストーキング、いや、覗き(ピーピング)してたのか?

 内心戦慄が走る。

 俺がスマホ越しに無言になると慌てたようにウェイガンが声を発する。


「いやいやいや、偶々だよ?

 偶々悪魔のダンジョンを見ていたら君が入って行くのが見えたんだ。

 それで知ってただけだから!」


 なんでウェイガンが悪魔のダンジョンを見てたんだ?

 その事を指摘する。


「いや、悪魔のダンジョンは危険なんだ。

 放置すると魔物の群れが中から溢れ出して人間が住めない過酷な環境になってしまう。

 それに悪魔のダンジョンは大地の力を吸い上げ続けるんだ。

 そうなると大地の自浄作用が無くなりやがて大地が枯れてしまう。

 そんな事になればキュルケがまた苦しむことになる。いや、下手をすると死んでしまうかも知れない。

 それは私にとって何にも耐えがたい苦痛であり、受け入れられない事なんだ。

 だから時間を見付けては悪魔のダンジョンを監視してるんだよ」


 ふむ、つまり俺が無意識的に起こしそうだった環境破壊を悪魔のダンジョンは意図的に行おうとしているって事か。

 それによって山の神であるキュルケがダメージを受ける。と言う事か。

 だからウェイガンは監視をしていたと・・・筋は通っている。なるほど。


「そうでしたか、下種な詮索をして申し訳ありませんでした」


 俺は素直に謝罪した。


「いや、わかって貰えたならいいよ。

 それよりも、話が逸れてしまったが、ドリンクサーバーの受け渡しはどうする?」


「そうですね、今すぐにでも頂きたいとは思いますが、そもそもどうすれば受け取れるんですか?」


「うーん。受け取りなんだが、この街の私の神殿に『神託の間』と言う場所があるんだ。

 そこに来てもらえれば神託台と言う机があってね、そこに直接ドリンクサーバーを転送できるんだ。

 と言う事で私の神殿まで来てもらえれば受け取れるよ」


 神殿に行くのか。

 少し躊躇ってしまう。


「あー、その、だねぇ。

 どうしても嫌と言う事であれば他の方法が無いわけではないんだけど?」


 なに?!


「どんな方法です?」


「実はね、君に鍛えられたお蔭でノイン君が私の巫女としての能力を十分に備える事が出来たんだ。

 だから君の方に問題がなければ私の巫女として神託を授けてドリンクサーバーを君に届けて貰う事も出来るんだけど・・・」


「な、なんと・・・」


 確か8番の事だったよな。

 ルインの姉とか言ってたが、巫女に昇格か・・・

 確かにそれが一番手っ取り早いし俺が神殿に行かなくていい点も素晴らしい。


「どうかな?」


「ぜひそっちの案でお願いします!」


 俺は即答した。


「それなら受け渡しは何時頃が良いかな?」


 ふむ、今日の夜は例の酒場で明日は奴隷商か、それなら酒場に持って来てもらえばいいか。


「それでしたら、ドワーフが集まる酒場があるんですが、今夜そこに持って来て頂けると助かるんですが・・・」


「ふむ、了解だ。

 店の名前を教えてくれ」


「み、店の名前ですか?」


「あぁ」


「・・・」


 しまったな・・・店の名前が・・わからない。

 暫し言葉に詰まるが解決策が見当たらない。

 いや、ノインの仲間なら乱闘場で暴れてるから聞けば・・・

 そう考えてやめる。

 ノインから俺が出張る事がバレると逃げるかも知れない。

 その程度は察知できるよう扱いたつもりだ。


 うーむ、どうしたら・・・

 そう考えてルインを思い出す。

 あぁ、奴から聞かせればいいか


「すみません。

 実は店の名前がわからないんです」


「なに?それだとどうやって持って行かせるんだ?

 流石にドワーフが集まる酒場と言ってもすぐに辿り着けるとは思えないが?」


「場所はノインの妹のルインが知っていますので、『ルインに乱闘場のある酒場を聞け』と言って貰えれば伝わると思います」


「乱闘場・・・あぁ、あの少し変わった酒場の事か!」


「変わった・・・まぁ、確かに変わっていますね」


 喧嘩する為のリング・・いや、乱闘場がある酒場なんてあそこしかないだろうしな。


「確かにあそこの酒場の名前がわからんな。

 看板もないし誰も酒場の名前を呼んでいない。

 と言う事は名前が無いのかもしれないな。

 まぁ、なくても困らないのだろう」


 ウェイガンが呟いているが、神様も名前がわからないと言う事は無いのかもしれない。

 そう言う事なのだろうと聞き流す。


「それではノインに届けてもらうと言う事で宜しいでしょうか?」


「あぁ、了解した。

 それでは早速神託を下すとしよう

 それでは失礼する」


 そう言って電話が切れた。


 ふぅ、なんか今夜の楽しみが出来た。


 さて、早速酒場に・・・と思ったがまだ早いだろう。

 ボコポの工房に寄ってから行くか。

 今日はインディとメルも連れて行くか、久しぶりだしな。


 思い付くままにインディとメルを連れ、足取り軽く宿を出た。




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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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