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第113話 悪魔のダンジョン攻略 3

誤字報告機能って便利ですね。

修正が楽になりました。

 21階層以降はトレントの奇襲を受けなければ比較的楽な階層だ。

 出てくる魔物もレベルが10前後に上がったゴブリンや賢猿(クレバーモンキー)狂猿(クレイジーモンキー)にラッシュボアにブルーグリズリー程度だ。


 それぞれの魔物は連携する事は殆んどない。


 猿系は群れで攻撃してくるが乗っている木を倒して地上に落とせば攻撃の的にしかならない。

 なので適当な小石を投げ付けて撃破した後は「無限収納」に素早くしまうだけの作業にしかならない。

 それに真面に相手をしなくても殺気を辺りに撒き散らせば近寄って来ない。


 お蔭で建材集めに集中出来ていたんだが、28階層で作業に集中していると突然悲鳴が聞こえた。


 うん?

 どうしよう。


 ここまで散々避けられてたからな。

 助けに行くのも躊躇ってしまう。


 しかし、見殺しにするのも寝覚めが悪い。

 結局、助けに行く事にした。


 声の聞こえた方向に向かい気配察知で数を確認しつつ接近すると、倒れている女性が1人、それに跨って布をビリビリ破いている男が1人。

 その女性の手を抑えている男が一人、そして逃げようとしている女性の手を掴んでいる男が1人にその女性の背後に忍び寄る男が一人。


 ・・・事案はっせ、いや、既に事件発生!?


 俺は思考が停止しかかったが、それも一瞬。

 次の瞬間には女性に跨っている男を蹴り飛ばし、手を掴んでいた男とぶつけてダブルノックアウト。


 女性には目もくれず忍び寄ろうとしていた男に正拳を見舞ってノックアウト。

 手を掴んでいた男が何が起きたか理解する前に顎を蹴りぬいてノックアウト。


 と言う事で全員ノックアウトした。


 そして立っていた女性は目の前で起こった事に頭が付いて来なかったのか暫し呆然としていたが、俺が倒れている女性に近付くと声を荒げ、女性と俺の間に身体を滑り込ませて女性を守るように立ちはだかる。


「な、何する気?!」


 切羽詰った声に俺は呆れ混じりに答える。


「襲われてた女性の状態を確認するんですよ。

 生きていれば治療が必要ですから」


 そう答えると立っていた女性は「助けてくれるの?」と、間の抜けた声を出すので「ええ」と答える。

 すると立ちはだかった女性は申し訳なさそうな声で謝罪する。


「ごめんなさい。ちょっと誤解したかも知れないわ」


 まぁ、男に襲われた直後だから動転していても仕方ないだろう。


「気にしないでください」


 そう言うと倒れている女性を見る。


 顔には殴られた痕があり、腫れている。

 そして首には無骨な黒い輪っか。

 首輪が嵌められていた。


 服は剥ぎ取られた後で裸体を晒しているが裸身を隠そうともしていない。

 いや、グッタリと脱力しているので力が入らず隠せないのか。


 良く見ると手足には刃物の刺し傷や切り傷が幾つかあり、左足は折れているようで関節以外の場所で曲がっていて変色している。

 それなのに顔や胴体には痣があるだけで切り傷はない。

 正直、直視するにはキツい光景だ。


 抵抗できないように手足を斬った後に嬲ったのか・・・

 これは酷いな。

 悪辣な所業に怒りと吐き気が込み上げてくる。


 そんな事を考えていると倒れている女性から呻き声が聞こえ、我に返る。


「あぁ、申し訳ありません。

 今治しますので少し我慢してください」


 俺はそう言うと折れているだろう足を元の位置に戻そうとすると女性が悲鳴を上げる。


「ちょ、ちょっと!痛がってるじゃないの!」


「こうした方が治りが早くなるんですよ」


「そ、そうなの?・・・ごめんなさい」


 素直な謝罪を受けると俺は素早く「ハイヒール」を唱える。

 手足の傷が癒え、身体の痣も消えて、顔の腫れも引いて行くと安心したのか女性は気を失ったようだ。

 そして腫れが完全に引くと綺麗な顔が現れた。

 少しつり目で生真面目そうな顔が今は穏やかな表情をしている。

 ふむ、中々の美人だ。


 傷や痣が消えた身体を観察する。

 女性らしい凹凸がハッキリとしており、均整のとれた身体も美しい。


 肝心の女性が気絶してしまったので念の為、触診しようと女性に手を振れると後ろから抗議の声が上がる。


「ちょっと!なんでエマに触るのよ!」


「本当に治っているか確かめる為に確認する必要があるんですよ。

 決して疚しい気持ちからではありませんが、どうしても駄目と言われるのならあなたが代わりになさって頂けますか?」


 一応紳士としてそう持ち掛けると、女性は難しい顔をした後、「私じゃわからないから・・・お願いします。でも、見張ってますからね」と言った。


 余程心配なのだろう。

 まぁ、友達なら当たり前か。


 そんな感じで触診し、女性が気を失っているので引っ繰り返して後ろも確認する。

 しばらく掛かったが、特に問題は無さそうだ。


 再度仰向けに寝かせた後、俺は鞄から出すフリをして「無限収納」から適当な布を取り出して女性、エマだったかな?に掛ける。

 そしてもう一人の女性に向き直ると、声を掛ける。


「さて、遅れましたが自己紹介をしましょう。

 私は山並 楽太郎と申します。

 友人に頼まれてこの悪魔のダンジョンを攻略に来ました。

 以後お見知りおきください」


 そう言って一礼すると、女性も自己紹介してくれた。


「事情があり、本名は名乗れない事をお許しください。

 仮の名前ではありますが、現在私はキャシーと名乗っています。

 そして見てお分りの様に戦闘奴隷に身を(やつ)しております。

 助けて頂いたのに無礼を働いてしまった私を許して頂けないでしょうか?」


 そう言って優雅に一礼するキャシー。

 先程の口調や態度とは全く違う立ち居振る舞いに軽く驚く。

 本名が名乗れないって事は以前はどこぞの貴族令嬢でもしていたのだろうか?

 それが戦闘奴隷なんてよっぽど・・・と、興味は尽きないが詮索はしない方が良いだろう。


「あ、あぁ、先程も言いましたが気にしないでください。

 それよりあなたも怪我をしているようですね、治しましょうか?」


 そう言うとキャシーは恥ずかしそうに「お願いします」と一言答える。

 俺は了解を得たので「ハイヒール」を掛けて痛みや違和感が無いか確認し、ついでに疲れているようだったので2人に「リフレッシュ」もかけた。


 キャシーはリフレッシュの爽快感が気持ち良かったのか嬉しそうにお礼を言われた。

 そうして少し雑談をしているとエマと呼ばれた女性が目を覚ました。


 彼女に最初に声を掛けたのはキャシーだ。


「エマ!目が覚めたのね」


「は、はい・・・えーっと、ここは・・え?!」


 キャシーの声に返事をした後、自分が裸である事に気付き、動揺する。

 そして気絶する前の事を思い出したのか顔がみるみる青褪めて行く。


「そ、そんな・・・私、あんな野蛮な男達に・・」


 悲しそうな顔をするエマにキャシーが更に声を掛ける。


「エマ!危なかったけど、そこのラクタローさんが助けてくれたの。

 怪我も治してくれたから大丈夫よ。安心して!」


「で、でも、わ、私のじゅ、純潔が・・」


「そっちも大丈夫だから!」


 その言葉にエマは縋るような視線を向ける。


「ほ、本当に?」


「ホントホント。ラクタローさんがいなかったら本当に散ってたと思うけどね」


 キャシーがそう言うと今度は俺の方に向き直る。


「あ、ありがとうございました。

 わ、私の純潔を守って頂き、何とお礼を言ったらいいのか・・・」


 いや、こっちとしてはそんな純潔純潔言われるとちょっと居た堪れない。

 それに彼女は気付いていないかもしれないが彼女は掛けてあった布を跳ね除けて立ち上がったので全裸のままで純潔を連呼してそのまま裸でお礼を言っているのだ。

 後でどんな格好で何を口走ったか彼女が理解したら間違いなく黒歴史となるだろう。

 俺は鞄から取り出すフリをして「無限収納」から予備の服を取り出す。


「いや、お礼はもういいので、そのぉ、この服でも来て頂けませんかね?

 目のやり場に困ってしまいます」


「へ?」


 そう言うと、エマは下を向き自身の格好を確認する。


 理解すると同時に悲鳴と平手が飛んできた。

 俺は甘んじて平手を受け入れた。

 決してドMだからではない。

 彼女の名誉を重んじての事だ。

 これも様式美という奴だろう。

 それに目の保養にもなったしな。


 そしてエマがキャシーの後ろに隠れて着替える間に俺は下種い男共を縛り上げた。

 1人はケツが割れ、2人は顎が割れ、残り1人は顎とアバラが粉砕されていたが回復は掛けない。

 下種に与える慈悲は無い。


「さて、こいつ等についてはお2人にお任せするとして、

 少しお聞きしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」


 そう前置きすると2人はこちらの意を酌んでくれたのか真剣な表情になり頷く。


「ありがとうございます。

 えーっと、実はですね・・・」


 そう言いつつ、ちょっとドキドキする。

 本当に俺が臭かったらどうしよう。

 いや、既に浄化したはずだ・・・

 大丈夫。オッサンは臭くない。

 いや、今は若いから違うか・・・

 いやいやいや、ショックを受ける事を前提で聞けば大丈夫なはずだ。

 しばしの葛藤の後、覚悟を決めて俺は質問する。


「少ぉーし、訊き難い事なんですけど、

 私がこのダンジョンに入ってから他の探索者の方に避けられているような気がするんですよ。

 理由や原因に思い当たる事が無いので不思議で仕方ないんですけど、どういう事かわかりますかね?」


 そう言いつつ2人の表情をじっと観察すると、2人は少し眉間に皺を寄せて微妙な顔をする。

 そしてアイコンタクトをすると「き、きっと気の所為だと思いますよ?」と目を泳がせながらキャシーが言う。


「いえ、気の所為ではないと思います。

 何回かは悲鳴を上げて逃げられましたから・・・」


「出会い頭で魔物と間違われたのでは?」


 エマが辛辣な意見を言う。

 おぉう、俺に裸を見られた事を根に持っているのか?

 まだ少し顔が赤いぞ。

 だが、一言言っておこう。

 見せたのはあなた(・・・)だ!

 だがそんな事を堂々と言える度胸は無いので胸の内にしまっておくがな!

 まぁ、そんな感じで内心でエマを弄って誤魔化しているが、正直、美人さんに言われると非常に心が痛い。


「その意見は結構傷付きますね。

 ただ、悲鳴を上げられた時は顔の判別が出来る位の距離だったのでその可能性は低いかと・・・」


 そう答えると2人共視線が泳ぐ。

 ・・・何か知っているな?


「何か知っているようですね?」


 そう聞くと2人の表情が険しくなり、お互いの顔を見合わせる。

 そんな事してたら隠し事があるって言っているようなものだぞ。


「他言無用という事でしたら、決して他言はしませんよ。それにその事を悪用することもありません。なので教えてもらえませんか?」


 これでもかと真剣な表情でお願いすると、キャシーとエマは顔を見合わせて頷くと「わかりました。他言無用でお願いします」と言って教えてくれた。






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ナニかがいる。
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