第110話 訓練終了
お久しぶりです。
去年の年末から年始にかけて緊急入院していた笹の葉です。
娑婆の空気は美味い。
ちょっとテンションおかしいですが、更新したので読んで頂けると幸いです。
唐揚げを作り終えた俺は酒場を離れると暇潰しに街を散策することにした。
悪魔のダンジョン付近は封鎖されたまま、町の活気は多少落ちているようだが、それでも人通りはそれなりにあり、また露天商や屋台などの出店も多い。
露天商のアクセサリーや、よくわからない魔道具を見たり、いくつか屋台で買い食いをして気に入ったものをまとめ買いして「無限収納」へとしまい込む。
そんな感じで一通り散策を楽しむ。
そろそろ一休みでも、と思い、辺りを見回すと良さげなカフェテラスを見つけた。
ここにしよう。
そう決めると俺は店に入る。
店内は薄暗いが何処か落ち着いた雰囲気があり、休むのに丁度良さそうだ。
俺はウェイトレスさんに案内され席に着くと甘い果物のジュースを注文する。
店内は人の話し声で少しざわついている感じもするがファミレスにいると思えば静かなもんだ。
俺は深く息を吐くと体の力を抜く。
ぼーっと気を抜いているとウェイトレスさんがジュースを持って来てくれたのでお礼を言って受け取ると早速口をつけた。
1口口に含むとヨーグルトの様な酸味の中に甘さが広がる。
中々に美味しい。
当たりだな。そう思ってのんびりしていると、店の入り口に8番とルインの姿が見えた。
突然の事で俺は慌てて身を縮めて隠れた。
思わず隠れてしまったが、よく考えたら隠れる必要は無かったかな?と思うがルインと係わると碌な事になっていない事実も見過ごせないので複雑な思いで隠れる。
2人を注視していると2人は特に辺りを気にした風もなく俺の後ろの席に案内されていた。
後ろ向きならバレないだろう。
俺は2人に背を向ける位置に座り直し再度ジュースに口を付けると、後ろから2人の会話が聞こえてきた。
「ルイン、キュルケ神殿で聞いたんだけど、山並のお師匠様に無礼を働いたそうね?」
「ブフゥッ?!」
「「え?」」
2人が立ち上がって周りを見回す。
や、やばい。バレる。
俺はそのまま咽続けている振りをすると、2人が据わりなおす気配がした。
ふぅ、ビックリした。
しかし『山並のお師匠様』ってなんだよ?!
ちょっと勘弁して欲しい。
ひょっとしてあいつ等、陰では『山並のお師匠様』なんて呼んでるのか?
なんか急に恥ずかしくなって来たぞ。
そんな事を考えている内に2人の会話は再開されたようだ。
「どうなの?黙ってないで答えなさい」
口を中々開こうとしないルインに口調は優しいが有無を言わせない圧力をかけて8番が再度問い質す。
「はい・・・してしまいました」
そう言って下を向くルインに無礼を働いた経緯を詳しく聞き出そうと8番が詰問する。
暫らく説明を拒否していたルインだったが、姉の8番が俺の弟子をしている事を前面に押し出すと観念した様にルインが俺とのいざこざを話し始めた。
その説明について俺としては幾つか相違点があり、ルインに都合が良い改変点が幾つかあったが、内容は大体合っていた。
それを聞いている8番はの顔は赤くなったり青くなったりしていた。あと、何故か決闘の話ではなんか羨ましそうな顔してたので戦闘狂なのかもしれない。
まぁ、そんな感じで8番の表情は色々変わって行ったが最終的には困った顔で落ち着いた。
「ルイン。なんとか謝罪をしなければなりません」
「はい」
気落ちした声でルインが返事をするが俺からすれば8番もやらかしてるのでどっちもどっちに思える。
「ルイン。寝下座はどうですか?」
「既に行いましたが、更に不興を買ってしまいました」
「な、なんですって?!なぜ?」
「私のやり方が悪かったんです。相手のことを考えず、ただ自分が許されることしか考えていないとお叱りを受けました」
「な、なんて羨ま・・いえ、なんてことでしょう。それではどう謝罪すれば良いのかしら?」
8番が謝罪方法を考えようとすると、ルインがそれを遮る。
「ま、待って下さいノイン姉さん!これは私の問題です。私が考えなければ私の誠意が伝わりません!」
「ですが、私は既にあの方の徒弟なのです。身内の働いた無礼は私の責任でもあるのです」
「いえ、これはあくまで私個人の失態です。私が償わなければならないのです。きっとラクタローさんもそう言われるでしょう」
しばらくの沈黙の後、8番が口を開く。
「わかりました。この件は任せます」
「ノイン姉さん!」
ルインの声が弾む。
「でもね、あなたは私のかわいい妹で、山並のお師匠様も私の敬愛する方なのです。
その2人の間に立って橋渡しが出来るのは私だけだと思うの。
だから、1人でどうにもできなくなった時は私にも手伝わせてね」
「ありがとうノイン姉さん」
そんな感じの話が終わると後は何気ない会話が続いた。
また何やらルインがアクションを起こす気になっている様だが俺としては「放っといて欲しい」ってのが本音だ。
なんか、面倒事になりそうだし関わらないようにしよう。
俺は2人の話に耳を傾けるのをやめてジュースを飲み干すと代金を支払いそそくさと店から出た。
その後も街を適当に散策すると、日が暮れ始めたので宿に足を向ける。
さて、また明日から冒険者達を扱く作業が始まる。
奴等をサクッと育てて早くダンジョン攻略をしよう。
それが終わったらサムソンや貴族達にお仕置きと言う名の地獄を見せてやる。
そう決意し伸びをすると、俺は宿へと向かった。
そして次の日からはまた冒険者たちを鍛え、奴等の目が死んできたら休みを挟む。
そんなことを3回繰り返すと冒険者たちのLvが100近くなり、ミノタウロスのソロ撃破も出来るようになったので訓練を終える事にした。
「さて、本日で訓練は終わりですが、最後に皆さんに1つお願いがあります」
そう前置きをしてから冒険者達に俺が悪魔のダンジョン攻略に向かうことを伝え、その間に俺の屋敷からミノタウロスが出てきた場合は撃破するように警護のお願いをした。
まぁ、見張りや巡回は神殿関係者が行っているので万が一の保険だ。
そして期間なのだが情報収集したところ悪魔のダンジョンも10階毎にポータルが存在するらしいので全体の期間は半年とし、それ以外にも30日の間に俺がダンジョンから戻って来なかった場合はそこで期間終了とした。
「引き受けて貰えますかね?」
そう言うとPT毎に相談が始まる。
まぁ、嫌だとは言わないだろう。
と言うか言えないように調きょ・・教育したしね。
そうして少しすると結論が出たのか1番と6番が前に出る。
「俺達1番~5番はその依頼、引き受けます!」
「俺達6番~10番もその依頼、引き受けます!」
「ありがとうございます」
予定通りで良かった。
「それとですね、皆さんはなんとか我が流派『建御雷流』を名乗る最低限の実力は身に付いたと言えるでしょう。
なので皆さんを番号で呼ぶのはお終いです」
そう言うと冒険者達は表情を引き締めて頷いた。
「そして最後に餞別として渡すものがあります」
そう言った後、俺はボコポを呼ぶと、彼は弟子数人と一緒に木箱を幾つか持って来る。
「では呼ばれた者から取りに来てください」
そうして彼らに黒鉄や魔銀で出来た武具を渡して行った。
1番ライナには黒鉄製の盾を
2番リイナには黒鉄製の小剣を
3番リサには黒鉄と魔銀で出来たワンドを
4番マッシュには黒鉄製のバスタードソードを
5番ロブルには黒鉄と魔銀で出来た錫杖を
6番ケイブリスには黒鉄製の小剣2本を
7番エリアルには魔銀製の胸当てを
8番ノインには黒鉄と魔銀で出来たハルバートを
9番エアロには黒鉄と魔銀で出来た小剣を
10番ジョエルには黒鉄と魔銀で出来た杖を
10人それぞれに武具を渡すと俺はこう締め括る。
「これらは我が流派である証ともなる品です。
それぞれの武具に同じ紋章が刻まれています。
くれぐれも無くさない様に注意してください」
武具には雷を意匠化した紋章が刻まれている。
それを確認するように各々が受け取った武具を確認する。
「さて、訓練はこれで終わりですが皆さんは我が流派の最低限の実力を手に入れたに過ぎません。
今後も精進するようにお願いします。
それと私からのお願いについて詳しい内容はそこのボコポ氏が説明してくれます。
ボコポ氏、後はよろしくお願いします」
「ちょ?!丸投げかよ?!」
「よろしくお願いしますね」
俺はそう言うとその場をさっさと後にした。
後ろからは「ありがとうございました」と言う叫びの後、複数人の歓喜の声が聞こえてきた。
さて、明日からは悪魔のダンジョン攻略だ。
入院する前に短編1つ書いたのでそちらも読んで頂けると幸いです。
今年は体を大事にしようと思います。
皆さんもお気を付けください。




