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第7話 宿屋でも一波乱

ふぅ、一度投稿前の原稿データが消えてしまいました。

 呆然としてしまいましたが、腹が立って逆に書き上げてしまいました。

八つ当たり気味の投稿ですが、読んで下さると幸いです。

 みなさん書いてる人はデータが消えてショックを受けたことは・・・ありますよね?

 冒険者ギルドを出ると、俺はインディと共に宿屋に向かった。


 途中、幾つかある屋台から肉の焼ける香ばしい香りや、焼きたてのパンの匂い等、美味そうな匂いがしてくると、途端に俺の腹が鳴いた。

 そう言えば、夜から何も食べていなかったな。

 そう思いインディの方を見ると、インディも肉を焼いている屋台に視線が釘付けになっているようだ。


 美味そうな串だな。

 そう思い俺は屋台のオッチャンに声をかける。


「すいません。美味しそうな匂いですね。何のお肉ですか?」


「おぅ、らっしゃい! 今日はビッグボアの肉を焼いてるぜ! 旨味たっぷりの美味い肉で、塩振って焼くだけでも十分美味いが、家の特製のタレを付けた焼き肉は濃厚な味わいでほっぺた落ちちまうぜ! 久しぶりに仕入れることが出来たからな! 今日は稼ぐぜ! がはははは!」


「なるほど、美味しそうだ。じゃぁ、まず1本貰えます?」


「あいよ! 一本銅貨2枚だ!」


そう言って一串差し出してくるので、無限収納から銅貨を2枚取り出して渡し、串を受け取る。


「毎度ー!」

オッチャンは嬉しそうに一声上げる。


 俺は手にした串肉に齧り付くと、肉汁が口の中いっぱいに広がり、何とも言えない旨味を堪能することになった。

 この肉、噛めば噛むほど肉汁がじゅわぁ~っと出てきて、肉汁の程よい甘みとタレが絡み合って美味い。赤味肉で程よい弾力もあって噛み応えがある。

 貪るように一串食べ終わると、オッチャンに追加をお願いする。

「すいません。この肉美味いんで、俺の猟獣にも食べさせたいんですけど。良いでしょうか?」


「おう、猟獣?」

 そう言ってオッチャンは俺の隣に居るインディに視線を合わせると、一瞬硬直したが、

「いいぜ!いいぜ! 猟獣でもなんでも買ってくれるんならお客様よ!」


そう言ってくれた。


「それじゃ、そこの肉の塊と、串肉3本お願いします」

 そう言ってオッチャンの横にある肉塊(20キロ程だろうか)を指差す。


「おぉ?これかい?いいぜ!いいぜ!えーと・・・大銀貨1枚と銅貨6枚か、おし、兄ちゃん。大銀貨1枚に負けるぜ!」


「ありがとうございます。それじゃこれでお願いします」

そう言って大銀貨1枚を手渡す。


「おう、毎度ありー!っと、そいじゃ、こいつはどうする?全部焼くかい?」

 そう言って肉塊を指差すオッチャン。


 俺はインディの方を見てどうする?と問いかけると、インディはノシノシとオッチャンの方へ近付いて行った。


「そのままで良いみたいです。渡してやってください」


「了解! よっと、持てるか?」

 オッチャンはそう言うと、肉塊を持ち上げインディの鼻先に持っていく。

 インディはオッチャンの差し出した肉を嬉しそうにパクッと咥えて俺の方に戻ってくる。


「おし、そいじゃ串肉3本な! ほい、兄ちゃん!」

そう言って串肉を3本俺に渡してくれた。


「ありがとうございます」


 俺とインディはそれぞれの食事を持って屋台の横で美味しそうに、貪る様に食べ始める。


 その光景が呼び水になったのか、オッチャンの屋台に人が集まり出した。


 俺達が食べ終わる頃には行列が出来ていた。


「美味しかったです。ありがとうございました」

 そうオッチャンに声をかけると、オッチャンも

「おう、こっちこそありがとよ! 今後ともご贔屓に!」

そう言って笑顔で返事が返ってきた。





 俺とインディは腹を満たし、いざ!宿屋へ!と気合を入れて歩き始めたが、ものの数分で目的の宿屋に辿り着いてしまった・・・








 『頑固な親父亭』はレンガ造りの3階建の建物だった。 1階は食堂兼居酒屋になっているようで、1階は窓も大きく、開いてる窓からは中の様子が窺い知れる。張り出した外のテラスにも机が乱雑に並んでいるが、椅子はテーブルの上に逆さに乗せてある。

 今日は休みなのかな? そう思ってしまったが、冒険者ギルドでは特に休みの話は聞いていない。

 どういう事だろう?

 そう思いながらも宿屋の扉を開けると、

 目に入ってきたのはこじんまりとしたカウンターだ。その右側にはスウィングドアがあり、食堂への入り口になっている。


 カウンターの上には呼び鈴もなく、宿の人もいない。

 仕方ないので声をかける。


「すいませーん。どなたかいらっしゃいませんかー!」


 はたして、呼び掛けに少し遅れて返事があった。


「はーい。少々お待ち下さーい」


 そう言ってパタパタと廊下の奥から現れたのは、18歳ほどの少女だった。


「はーい。お待たせしました。何かご用でしょうか?」


「すいません、暫らく泊まりたいんですけど、部屋は空いてますか?」


「あら、お客さんでしたか・・・、えーと、部屋は空いてるんですけどねぇ、今はちょっと・・・」


 何とも歯切れの悪い答えだな。


「泊まれないんですか?」

そう質問すると、


「いえ、泊まれることは泊まれるんですが、今ちょっとお食事の用意が出来ないんですよ。素泊まりで宜しければ、ご提供出来るんですけどね」

 ん?食堂と居酒屋もやってるのに食事提供ができないって、何かあったのかな?

 そう思っていると、彼女は小声でこちらにギリギリ聞こえるか聞こえないかの絶妙な声で「はぁ、困ったわ。どうしよう」

 とか「誰か助けてくれないかしら」と言ってこちらをじろじろと見てくる。


 ・・・話を聞いて欲しそうな雰囲気全開じゃねーか・・・


「あのー、何かあったんですか?」

 そう俺が聞くと、待ってました! とばかりに彼女は話し始めた。


「実はですね・・・」



 女性の話は長いので要約しますね。




 ここ『頑固な親父亭』は店の主人であるラディッツ氏と娘のリンスさんの親子2人で切り盛りしていたそうだ。

 先日、夜の居酒屋で主人のラディッツ氏は酒豪の常連から飲み比べの勝負を挑まれたそうだ。ラディッツ氏もかなりの酒豪で、その常連とは良く飲み比べをして勝負をしていたそうだ。

 その日も又かと思いつつ。勝負を受け、ギリギリでラディッツ氏が飲み勝ったそうだ。

 勝負に勝ち大好きなお酒を目一杯飲み、おまけに酒代は常連持ちと、ラディッツ氏の気分も高揚して上機嫌だったそうな。

 その後居酒屋も閉めて、3階にある自室に戻った後も、気分よく酒を飲んで寝たそうだが、それがいけなかった。ラディッツ氏は次の日の朝食の仕込みを忘れていたそうで、朝飛び起きて階段を降りようとしたが、夜飲んで空にした酒瓶に蹴躓いてそのまま階段落ち。右腕と左足を骨折してしまったのが昨日の朝。

 その日のお客には事情を説明し、宿泊代を返却することで事なきを得たが、昼の食堂も夜の居酒屋も開けることが出来ず、宿としても素泊まりしかできない始末で、二進も三進も行かない状況なんだとか。


 リンスさんも参ってたんだろうな。ガス抜きするように俺に面白おかしく話してくれた。


「と、言うことで今に至るんですよ。ホント、参っちゃいますよね」


 うーん、俺には気功術の「活法」があるから治せるんだが、どうするかね。

 本当に困ってるみたいだし、話も聞いちゃったから、助けますか。

 そう思い、声をかける。


「あのー、ラディッツさんの怪我ですけど、私治せると思いますよ?」


「え? 回復魔法が使えるんですか?」



「いえ、回復魔法とはちょっと違うんですが、似た様な事が出来るんで、治せると思いますよ」


「ホントですか?!」


「えぇ」



「でも、治療代がお高いんでしょう?」


「うーん、治療費か、あぁ、そうだ。今晩の美味しい夕食でどうです?」


「え? それだけでいいんですか?」


「えぇ、それに治らなかったらお代は結構ですので、試すだけ試してみませんか?」


「本当にお願いしてもよろしいんでしょうか?」


「ええ、良いですよ」

 そう言うとリンスさんはニッコリ笑って

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 と頭を下げた。





 リンスさんはラディッツ氏の扉の前でノックをする。


「おう、誰だ!」


「私よお父さん!」


「何か用か?」


「治療師さん連れて来たから診て貰って!」


「バカ野郎! 高い金取るくせに治せもしねぇ治療師なんか連れてくんじゃねぇ!」


「お父さん! お金は必要ないから!」


「それじゃ何がいるんだ!」


「お父さんが作る今晩の美味しい夕食だそうよ!」


「リンス!お前は騙されてるんだ!そんなアホみたいな条件で骨折治す馬鹿がどこに居るんだ!」


「だから連れて来たって言ってるじゃない!」


「リンス、お前はしっかりした娘に育ってくれたと思っていたが、俺が怪我したことがよっぽどショックだったと見える。そんな甘い言葉に騙されちゃいかん!」


「だから私の話を聞いてよ!お父さん!」


 なんて親子の会話が30分程続き、俺は部屋の前で待たされることになった。



 漸く親子の会話が終わり、俺が部屋に入りラディッツ氏に挨拶する。

 ラディッツ氏は髭面の強面親父で、体型はドワーフみたいな樽体型だ。


「こんにちわラディッツさん。私は山並 楽太郎と言います」


「おう、よろしく頼むぜ、治療師さんよ!」


「えーと、私は冒険者なんですが・・・」


「おい! リンス!やっぱり騙されてるじゃねーか!こいつ治療師じゃなく冒険者だぞ!」


「もう、騙されてなんかいません!とにかく治療を受けてよ!お父さん!」



 更に15分程親子の会話が続きました。

 親子の会話って良いものですね。 待たされる側じゃなければね・・・



「おう、すまねぇな、ラクタローさんとやら」


「楽太郎でいいですよ」


「それじゃ、治療を頼むが、失敗しやがったら只じゃおかねぇからな!覚悟しろよ!」

 髭面のオッサンに睨まれた。


「もう、お父さん!威嚇しないの!」


「・・・」

 ラディッツ氏はムスッとした顔になる。


 俺はさっさと終わらせようと、作業に取り掛かる。


「ラディッツさん。楽にしてくださいね」


 そう言って俺はラディッツさんの腕を取り、包帯を外すと、腫れて紫色になったラディッツさんの腕が現れる。

 俺は気を練り始めると、徐々に外気を取り込み、昇華させていく。

 ラディッツ氏が目を剥いてこちらを凝視してくるが、集中している俺は完全に無視した。

 俺はそっとラディッツ氏の右腕に手を置き、「活法」と一言呟く。

 俺の掌が青白い光を放つと、ラディッツ氏の腕の腫れが徐々に引いていき、肌の色も次第に元の肌色に戻る。


 それを見ていたリンスさんが「すごい・・・」と呟くが、俺は治療に集中しているので無視する。


 俺はラディッツ氏の手の感触を確かめ、気を送るのを中断する。

「よし、これでどうです? 腕は動きますか?」


 そう言うと、ラディッツ氏は右腕を数回握ったり開いたりした後、腕を曲げ伸ばす。

「問題なく動くな。痛みもない。 本当に治ったようだ」


「よし、それじゃ、次は足の治療をしますね」


 そう言って今度は足の治療を進めるが、ラディッツ氏親子はその間何も言わずただ黙って治療を受けていた。



・・・



治療が終わると、ラディッツ氏は立ち上がり屈伸したり開脚したりして感触を確かめ、痛みなく治っている事を俺に伝えた。


「ありがとうよ。ラクタロー、どこも痛くねぇし、問題なく動く。 疑って悪かった」

 心なしかしょんぼりした感じで謝罪するラディッツ氏。


「いえいえ、どういたしまして。これで今晩は美味しい御飯が食べれるわけですね。只で!」


「おう、それは任せとけ!腕に縒りを掛けてご馳走を作るぜ!」


「ああ、そうだ。ラディッツさん。今晩はしっかりと寝てくださいね。一応病み上がりなので油断しないようにね」


「おう!分かったぜラクタロー」


「お父さん良かったね! ラクタローさんもありがとう!」


 ラディッツ親子は嬉しそうにお礼を言ってきた。

 感謝されるのも悪くないね。うん。


「それじゃリンスさん。今日の宿をお願いしますね」


「分かりました。お客様1名様ご案内します」


「そう言えば、宿代って一晩幾らです?」


「朝・夕食付で1泊銀貨2枚です」


「それじゃ先に五日分出しときますね」

 そう言って大銀貨1枚をリンスさんに渡す。


「ありがとうございます。それではお部屋に案内いたしますね」


「あ、猟獣がいるんだけど、そっちはどうすればいいですかね?」


「それなら裏の納屋に入って貰ってもいいですか?」


「わかりました」

そう言ってインディを裏の納屋へと連れて行き、ここで休むよう伝える。


因みに、夕方、インディに餌を持っていこうとして、一緒について来たリンスさんがインディを見てモフモフやっていたのは見なかったことにした。


俺は2階の部屋へと案内され、ベットに倒れる様に横になると、ゆっくりと休んだ。


因みに夕食はとても美味しかった。






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ナニかがいる。
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