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第94話 道中にて

 街道を走り続けていると前方から怒声と金属のぶつかる音が聞こえてきた。


 ・・・またか?


 街道を走り始めて早2時間、盗賊と言うか山賊と言うか、まぁそんな感じの賊に襲われている旅商人や商隊を見付ける事2回。

 「気配察知」で賊は判断できるので走り抜け様にストレス解消として凹っておいたが、流石にこの短時間に3回目となると賊の出現率高すぎだろ?!


 思ったより治安が悪いのか?


 何か原因があるのかもしれない。

 助けるついでに少し事情を聞いてみるか。


「インディ、メル。やるぞ」


「ワウ」

「ガウ」


 声を掛けると2頭のペットは俺の後に続いた。


 俺はペースを上げて戦場へと突っ込んだ。

 一応、賊と間違われないよう前口上を述べようと考え・・・適当に口走る。


「義を見てせざるは勇無きなり!って事で助太刀します」


「た、助かる!」


「なに?!」


 そう言いつつ、最後尾の馬車を襲っている賊の1人に蹴りを入れると勢いよく吹っ飛び近くの木に激突して動かなくなる。


「何?!」


 賊の1人が振り返るが遅い。振り返った顔にワンパン入れて黙らせる。

 そして馬車に侵入しようとしていた賊にはインディに乗っていたメルを投げつけ華麗なるクマキックの餌食にする。


 最後尾から先頭の馬車まで走り抜けつつメルを回収したインディと共に賊を片っ端から叩き伏せる。


 最初投げられたメルは驚いていたが、2回3回と回数を重ねると楽しそうに投げられた勢いを殺さず賊を蹴り倒し、反動でインディの背中に乗ると言う曲芸も披露していた。


 さて、後は反対側を処理するだけか・・・


 そう思いつつ今度は最後尾に向けて賊を叩き始めると賊達が不利を悟って逃げ出し始めたので俺は「無限収納」から石を取り出して賊に投げ付ける。。


 帰路で襲われるのも面倒だから先に叩けるなら叩き潰そうと考えているからだ。


 そうして俺が投げた石によって逃げ出そうとした賊も打ち倒すと、賊を拾い集めて一か所に纏める。



「あ、あのぉ」


 作業を終えると警戒しているのか戦士風の男に控えめに声を掛けられた。


「はい?」


「私はこの商隊の護衛を纏めているサムソンと言います。助けて頂きありがとうございました」


 そう言って男は頭を下げて来る。


「あぁ、いえいえ、こう言う時は助け合いですからね。それと、まだ終わっていないみたいですよ」


 そう言って俺はおもむろに1台の馬車へと向かう。


「え?それはどういう・・・」


「まぁまぁ、少し待っててください」


 俺はサムソンに静かにするように言い含めると馬車の扉をノックする。


「すみません。賊は撃退しましたが、こちらに被害はありませんでしたか?」


 俺が声を掛けると中から女の声で返事が返ってくる。


「え、えぇ、こちらは大丈夫です」


「念のため中を確認させてください。面倒をお掛けしますが襲撃を受けた際は全員の安否の確認を行う決まりになっているのでお願いします」


 そんな決まりがあるかは知らないが中に入る為に俺は嘘を吐く。

 しばらくしても返事が無い。


「開けさせて頂きますがよろしいでしょうか?」


「ま、待って!」


「何かあるのですか?」


「・・・こ、こちらから開けます」


 そう言って扉が開くと俺は少なからず驚いた。

 扉を開けたのはレイラ=カストールだったからだ。


「「?!」」


 一瞬表情が固まってしまったがすぐに俺は頭を切り替える。


「開けて頂きありがとうございます。それでは確認させて頂きますがよろしいでしょうか?」


「え?えぇ、はい」


 未だ信じられない者を見るような表情で固まっているレイラをそっと座らせ返事を聞くと俺は残る2人に視線を向ける。


「そちらの御嬢さんとご婦人も大丈夫でしょうか?」


 そう声を掛けるが少女は微妙に震えて声が出せないでいる。


 奥に居る20代半ば程の女は科を作って答える。


「えぇ、わたくしもこの子も大丈夫ですわ。そうよね?」


 そう言って少女に話を振るが、少女は震えながら首を縦に振るだけで声が出せないようだ。


「大分怯えているようですね」


「えぇ、盗賊に襲われるなんて初めての経験ですからこの子も怯えてますの」


「それは大変でしたね」


「えぇ、?!」


 俺は女が息を吸う瞬間を狙って女の顔面に素早く左拳を叩き付け、それと同時に右手で少女を保護した。


 殴った女の手には案の定ナイフが握られていた。


 多分、他の仲間が倒されるのを見て少女を人質にして逃げようと考えていたんだろう。


 全く碌でもない奴だな。

 うん?碌でもない奴だから賊なのか・・・


 そんな事を考えていると何かにしがみ付かれた。


「うん?」


 どうやら右手で保護した少女のようだ。


「もう大丈夫ですよ」


 そう言って少女の頭を優しく撫でると、少女は泣き出してしまった。


 うーむ、参ったな。

 一応殴った女はピクピクと痙攣しているので大丈夫だろう。


 そしてもう1人の女性。レイラを見て助けを求める。


「レイラさん。彼女の事を任せても?」


「え?あぁ!はい!」


 そう返事をしてくれたので少女を任せようとしたが離れてくれない。


「「・・・」」


 仕方ないか、彼女が落ち着くまで待つとしよう。俺は諦めて馬車の席に座る。


「レイラさん。外に待たせているサムソンさん呼んで来てもらえます?」


「わかりました」


 そう言ってレイラは馬車を出るとサムソンさんを馬車に連れて来る。


「どうした?」


 そう言って声を掛けてきたサムソンさんが少女を見て驚く。


「ミーネ様!なぜこんな所に?!」


 様付け?!なんか面倒な予感がする。


「あー、どうやらサムソンさんの知り合いのようですし、お任せしますね」


「え?いや、あー・・・わかりました」


 何とか了承して貰えたのでついでに伸びてる女について話す。


「あと、そこで伸びてる女は賊の一味なので拘束するなり処分するなりお任せします」


 俺はそう言ってそそくさと退場しようとするが少女が離れてくれない。


「えー、ミーネさん?私も先を急ぐ旅の途中なのでそろそろ離して貰えないでしょうか?」


 そう言うと少女は涙を流しながらもなんとか離してくれた。


「それでは失礼します」


 そう言って馬車を下りると外ではレイラが待っていた。


「ラクタローさんですよね?」


「・・・え、えぇ」


「よくあの女が賊だってわかりましたね」


「いや、恰好があれだけ違ってれば親しそうな話し方してたって不自然でしょ?それにミーネさんでしたっけ?彼女の怯え方でもわかりますよ」


 本当は「気配察知」で敵1人とそれ以外が2人馬車に乗っているのを知っていたからなんだけどそれっぽい事を言ってごまかす。

 賊の女の格好は一般的な旅装のように見えたが胸元や腰、足首の辺りに武器が隠されていた。

 それに対してミーネの服装は一般的な旅装ではなくドレスなのかな?かなり上等な衣服を着ていた。


 因みにレイラは皮鎧を身に付け、腰の辺りに剣と盾を下げている。


「流石ですね。たったあれだけの時間でそこまで見通すなんて・・・」


「いえいえ、それ程でも・・・と言うか、レイラさんは何をしていたんですか?」


「襲撃を受けた際、私も迎撃に出たんですが彼女が馬車から連れ去られるのを見付けて後を追ったんですが、彼女を人質にされてしまいまして・・・」


「あなたも苦労されたんですねぇ」


「えぇ、本当に。助けて頂き、ありがとうございます」


「いえいえ、こんな時は助け合いですよ。気になさらずに、それでは」と俺は早々にこの場を立ち去ろうと別れの言葉を言い掛けるがレイラに(さえぎ)られる。


「それよりも、こんな所で会えるなんて奇跡だと思いませんか?」


「ま、まぁ、偶然?って奴ですかねぇ」


「いえ、奇跡ですよ!」


 なんだその熱い眼差しは?!

 まだ弟子になろうと思っているのか?


「いやいやいや!単なる偶然って奴ですよ。それに私は急いでいるのでこれで失礼します」


「待ってください!この商隊の方々はあなたに命を救われたのです。せめてお礼を言う機会を与えて頂けませんか?それに商隊のオーナーから謝礼金も出ると思いますよ?」


 それが面倒なんだよ!


「なに、私が通りかかったのは偶然ですよ。賊に襲われると言う不運の中で唯一の救いがあったことを喜べばいいと思いますよ。あとお金は間に合ってるんで結構です。それじゃ失礼します!」


 そう言ってインディとメルを連れて走り出すとレイラも追って来ようとしていたが俺達のスピードに追い付けず完全に引き離せた。






 ふぅ、危ない危ない。

 俺は深呼吸をすると気を取り直して先へと進もうとして気付く。


 あ!賊が多い理由を聞き忘れちまった・・・


 俺は若干肩を落として先へと進んだ。



体調を崩し続けている今日この頃。

遅くなってすみません。m(__)m


つ、続きは・・・


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ホラーが大丈夫な人はこちらの短編もよかったらどうぞ。
ナニかがいる。
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