Ep.2
久々に村を訪問した。
今回も例外なく大歓迎の嵐にあったわけだが、わたしも例外なく男装紛いの事をしていたので、若い娘さん達にお色気攻撃を受けていた。
彼女からしてみれば、わたしは童顔の華奢な男の子に見えるらしい。
そうだよね。
旅のみんなはどちらかといえば男らしい人が多い。中性的な人は居るけれど、それでもやっぱり大人な男の雰囲気を持っているわけだ。
「あの、大丈夫ですか?怪我、してるみたいですけど・・・」
歳は対して変わらないような少女がわたしに話しかけてきた。
「あ、これ?うん、全然平気だよ。少し怪我しただけ」
「・・・よかった」
「・・・・・・・・」
少女は熱を持った瞳でわたしを見上げてくる。
彼女、結構小さいから結構な身長差が生まれているのだ。そんな彼女はなんとかわたしの気を引こうとしているようで。
さて、いかにこの状況を回避したものか。
今までに何度かこういう状況は体験したけれど、みんなお姉さん達ばかりだから、どうにかしてかわしてこれた。けれど今回は純粋無垢という言葉が似合いそうな女の子。
下手な嘘をついて、傷つけたくはないな。
困ったままどうにか突破口を探していると、いきなり後ろから肩を掴まれた。
「わっ」
「マツリ、サボってないで働いてくれないかな?」
「ルイさん」
「すまないね。私達今少し忙しくて」
「え、あ、」
「行くよ」
ちょいとルイさんや、あまりに密着しすぎと違いますか?
腰に手を回され、そのまま拉致された。
その際、女の子が瞳に涙を浮かべてた。彼女の瞳に浮かび上がる熱っぽい色はわたしとルイさんに向けられていて。さっきまでと少し意味合いが異なるようでもあり・・・・・・・・・待って、ちょっと、あれ?
・・・・・・・・もしかしなくても、変な誤解された?
「・・る、ルイさん」
「ん?」
歩きながらルイさんを見上げる。
「なんか、あの子、変な誤解したみたいだけど・・・・」
この状況を、あなたはどう考えますか。
「いいじゃないか」
実に爽やかな笑顔を浮かべて彼はさらりと言った。
さいですか。
「君を男だと思っているのは彼女の勝手だしね」
「いや、でも誤解は・・・」
「君は嫌なのかい?誤解されるのが。・・・それとも誤解されることで困る事でも?」
「え」
何故話がそちらにいく。
わたしはただ、ルイさんが困るだろうなと思って言ったのに。
失礼な。
「いいです。わたし、サンジュ父さん達の手伝いしてきます」
ルイさんの手を払いのけ、劇の準備をしているサンジュ父さん達のところに向かおうとした。すると、逆に引き寄せられた。
「うわ!」
「私から逃げられるとでも?」
建物の影に押さえ込まれて身動きが取れなくなった。
「る、ルイさん!冗談もいい加減に・・・」
「私が冗談で、君にこんな事をするような男だと思う?」
「・・・・」
ルイさんがおかしい。ものすごくおかしい。
今まで、時々思い出したかのように変なことはしてくるけど、こんな事言った事なかった。
「私はね、もう、我慢するのは止めたんだ」
ルイさんの顔が近づいてきて、額にやさしいキスをされた。
「・・・っ」
「鈍い君でも、さすがにわかるよね。この意味くらい」
そう言い残し、ルイさんは私から離れて歩いていってしまった。
「・・・」
残されたわたしは唖然とするしかない。
「・・・え?」
押さえ込まれた時に、冗談でこんな事はしないと笑われた。そして、もう我慢はしないと額にキスをされた。これらが意味する事とは。
「えー!?」
まさか、あのルイさんが、わたしの事を・・・・?
● ● ● ● ● ● ●
「マツリさん、どうかされました?」
「こ、コウヤさん・・・・」
劇を終えたらしいコウヤさんが移動車の中に戻ってきた。
着替えようとしているようで、劇中の衣装のままだった。
半泣きになりながらコウヤさんに助けを求める。もう、一体何がどうなったのかわからない。実をいうと、さっきから頭の中をルイさんの黒い笑顔がグルグル回っているのだ。
コウヤさんが着替え終えるのを移動車の前で待って、それから彼が出てきたのを合図に、二人で散歩にでも出掛けようという事になった。
「なるほど、ルイが」
「ねぇ、やっぱりわたしの考えすぎかなぁ?だってルイさんがこんなわたしのこと・・・その・・・」
「好きになるはずがないと?」
「う」
やっぱり人選間違ったかな。
コウヤさんが一番頼りになるから、彼にこうやって相談してみているけれど、やっぱりここは姐さんとかに聞いた方がよかったのだろうか。
だって、コウヤさんが恋の相談に乗ってくれるなんて天地が間逆になっても起こらないと思っていたから。ついこの間まで。
というか似合わない。
うん、やっぱり、私は人選を間違った。きっと、それくらい気が動転していたんだろうな。
とりあえず、冷静になる事が出来た。けれど、それも、コウヤさんの放った言葉のせいで粉々に打ち砕かれる。
「ルイはあなたに惹かれています。だいぶ前から」
「え!?」
「気づいていなかったのは、あなただけのようでしたが」
「・・・・うそ・・」
衝撃告白に、一瞬頭の中が真っ白になった。
あの魔王だけど他に比べようがないほど綺麗なルイさんが、わたしのことを好きで。しかもそれはかなり前からで、仲間のみんな(わたしを除く)はみんなそのことに気づいていたと。
「今更ルイの気持ちを知ったところで、マツリさんが心配することなどないでしょう。あなたはいつものように彼に接すればいい。・・・ルイがもう我慢をしないと宣言したとなれば、少しは状況が変わってくるかもしれませんが」
「・・・・うぅ」
「そういえば、カシギにも同じような事を言われていましたね」
「!」
「やはり、マツリさんには他人を惹き付ける何かがあるのでしょう」
「・・・・っ」
やっぱり人選間違っちゃってたよぉ!!
コウヤさんとの会話は、わたしを底なし沼に突き落とすには十分の威力を持っていた。




