Ep.13 ?視点
これにて第三章完結です。
*?目線。
「おや、帰ってきたようだね。・・・彼女が」
従者の報告を聞いた男は、小さな笑みをその口元に浮かべた。
その笑みは、ある者が見たなら、きっと歪んでいると評したに違いないほどに狂気じみたもの。けれど、今この場に、そんような事を言う人間など一人も居ない。
なぜなら、この狂気に溢れた男こそが、この場を支配している者なのだから。
「これで、魂の場所がはっきりした。やはり、父上の予想は外れていなかったね」
男は優雅な動作で椅子を動かし、後ろに居た二人の男達を振り返った。
一人は、真っ黒な衣装をその身に纏い、同じく黒い髪をした者。
もう一人は、白い白衣を身に付けた眼鏡の男。
二人共、表情らしきものを浮かべる事なく、目の前の椅子に腰掛ける男をただ黙って凝視し続ける。
その瞳に宿るものは、一体なんなのか。
「そんなに怖い顔をするんじゃない」
背凭れに背中を倒して、楽な姿勢をとった男は、楽しげに笑いながら二人を見た。
あえて、深く触れないのは、彼自身が他者の侵入を拒むが故。
しばらく楽しげに笑っていた男は、一度笑みを止め、どこか遠くを見るように目を細めた。
だが、それも一瞬の事で、すぐに口元に笑みを宿す。
これが、彼の習慣なのだ。常に笑っている事が。
周りには、何が面白いのかわからないかもしれない。
だが、彼には見えるのだ。彼にしか見えない、愉快な未来が、いつも。
「ワタシ達は同士だ」
男が言った。
部屋はシンッと静まり返っていて、三人しか人の気配はしない。
だからこそ、男は話を続けた。
「愚かで可愛い弟を持つ、同士」
その言葉に、眼鏡を掛けている男の瞳が強い色を宿した。それはまるで、男の言葉に反発するように。
けれど、椅子に座って居る男は大した興味を示すことなく言葉を続ける。
「さぁ、見物しようじゃないか。いくら逃げようとも、奴はワタシ達から逃げる事などできない。・・・・・お前の弟も、鎖に繋がれていては、自由に動く事も出来まい」
それは眼鏡の男に向けられたもの。
しかし男は飽きたように椅子を回転させて、等身大の窓の向こうに顔を向けた。
そこにあるのは、一つの大きな月。
「・・・・・あの少女が、ワタシ達の元にくるのも、時間の問題だ。その時がくれば、この世界のすべてが変わる。だろう?・・・・シンユウ、・・・・そして、ラシュアス・ロンザルオ殿」




