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キセキが起きるその場所へ  作者: あかり
第六章:未来への道標
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Ep.13

万が一にでも待っていてくださった方が居ましたら、スライディング土下座をしながら言いたい。「お待たせいたしました」



 ルイさんは酷い人だ。

 乙女の唇を、本人の同意もなく奪った。

 わたしも、抵抗しなかったけど、あれは不可抗力と思ってほしい。

 

 ルイさんのキスは、花火が終わるまでずっと続いた。


 キスされるなんて初めてで、さらに、ルイさんがあまりにもうまいものだから、すっかり翻弄されてしまった。そのせいで毒気を抜かれてしまったわたしは、こうして翌日になって、ルイさんの行動を批判しているわけ。


 まともなキスさえしたことのないわたしに、あのディープキスはいくらなんでも早すぎだ。


 普通はちゃんと順序を踏んでだね・・・。

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

「・・・・べ、別に、なんでも」

「恐い顔、してるよ?」


 思わず顔に手を当てた。

 サンジュ父さんは、移動車の整備でもう居ない。バーントさんも最後の調整かなにかですでに外に出ている。 


 昨日のあれこれで、夜あまり寝付けなかったわたしは、結局すごく寝坊してしまったのだ。


 早く荷物をまとめて下に下りないと。

 二―ルくんを安心させるように、もう一度なんでもないと言い直して、わたしは荷物をまとめた。


 寝間着も着替えて、鞄を持って、忘れ物がないことを確認すると、ドアを閉めた。


「マツリさん、大丈夫ですか?」

「あ、コウヤさん」


 扉のカギを閉めて少し歩いた所で、コウヤさんに会った。どうやら、わたし達を呼びにきたらしい。もう、移動車は出発準備が整っているとのこと。


「・・・・」

 移動車に行く事が、こんなに辛いことになるとは、思わなかった。


 一体どんな顔をしてルイさんに会えばいんだろう。


 昨日の、濃厚なキスを思い出して、わたしは一人赤面する。


 いや、ちょっと待って、なんで赤面する必要がある?わたしはルイさんの思いには答えられないと言った。でもルイさんは諦めないと言った。そしてキスをされた・・・・。 

 とっても深い、忘れられない、キス、を・・・。


「!!」

「マツリ、さん?」

「お姉ちゃん?」


 真っ赤になって頭を抱えたわたしを、コウヤさんと二―ルくんが訝しげに見てくる。セピアもそうだ。じっとこちらを見つめてくる。

 でも、こっちはそんな事に構っている余裕なんてないんだ。


 ルイさんの舌の動きとか、色々な事を思い出すと、もう、何がなんだか分からなくなりそうで。

「うわぁ・・・・」

 思わず蹲りそうになるのを必死に堪えて、わたしはようやく移動車まで辿り着いた。


「マツリ」

「!」

「昨日は、大丈夫だったかい?」

「・・・・う、うん」


 ルイさんは、もう何も感じさせない白い笑みでわたしを出迎えてくれた。


 誰のせいだと・・・・誰のせいだと!!


「マツリ、餞別さ」

「姐さん」


 いつものように見送りに来てくれた姐さんは、いつものように贈り物をくれた。中に入っていたのはおいしそうな果物だった。


「肌に良い新鮮なものばかりだ。旅の途中で、リファと一緒に食べるといい」

「ありがとう!」

「ありがとうございます」

 いつの間にか来ていたらしいリファも、隣で頭を下げていた。


「二人共、元気にやるんだよ」

「「はい!」」


 姐さんの笑顔に元気に返事をした。

 けれどやっぱり、相手はあの姐さんだ。

 去り際に、耳打ちをされた。


『ルイのこと、しっかりやんな。そう簡単にすべてを委ねるのはやめておくんだよ』

「!!」


 引き攣り笑いを浮かべたわたしを乗せたまま、移動車はゆっくりと出発する。


「マリンデ―ルさん、とても良い人でしたね」

「そうでしょ?」 

「とても、お姉さんのような人でした」

「うん」


 他人が慌てている所を面白がるという、少し厄介な癖があるけれど、最終的には相談にのってくれる良い人なのだ。


「そうだ。今度はリファの故郷に向かうんだよね」

「はい。ラズルという村です」

「その前に少し遠回りをして、ソリテアという街に行くが、いいか?」


 ソファーに腰掛け、資料に目を通していたバーントさんがリファに尋ねた。

 彼女は一瞬表情を強張らせたようだったけれど、次に見た時にはいつものかわいらしい笑顔で頷いていた。


「ソリテア?」

 聞いた事のない街の名前にわたしは説明を求めた。

「この国ではそれなりに名の通った街だ。戦争があってからはかなり衰退してはいるが、それなりに規模は大きい」

「へぇ」

「・・・けれど、今は、昔のような華やかさはないと思います」


 リファの言葉の真意を知ったのは、街に着いてすぐのことだった。

 



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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんは! ものすっごくすっごーーーーーーーーーーく 更新待っていた一人です!!!!!! ありがとうございますマジ感謝ですうれしいです!!!!! 今後の展開も楽しみにしてます(^_-)-☆…
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